LO西村龍馬[トヨタヴェルブリッツ]、BR東京戦で先発。「今のいい流れを止めないように」
「ずっと出てなかったんで、(このまま)シーズン終わるのかなと。残り2試合というところでチャンスをもらえました」
4月16日に秩父宮ラグビー場で行われる第15節・対リコーブラックラムズ東京(BR東京)戦に4番で先発する西村龍馬は、言葉に力を込める。
2月18日、NECグリーンロケッツ東葛(GR東葛)戦以来の先発だ。
「先週(7日)、ミライマッチのホンダ戦が、GR東葛戦以来の試合だったんですが、調子がよくて」
ほぼ2か月ぶりの実戦で力を出したら、チャンスが舞い込んだ。
「チームはいい流れで来ているので、崩さないようにやりたい」
チームはシーズン中盤まで結果が伴わない、苦しい時間が続いた。いま改めて、「チームファースト」の意味を噛みしめる。
「チームファーストで個人技で行くのはいいんですが、最初から自分で行こうとすると、うまくいかない。チームファーストは大事ですね」
黙々と身体を張り、重量感あるタックルを繰り出すリアルLOである。休部したコカ・コーラレッドスパークスから移籍して、この春で3シーズン目を迎えた。休部の知らせは寝耳に水だった。
「シーズンが終わって、来年も頑張ろうというときに、全員集められて」
会社の人から、ラグビー部がなくなると聞かされた。そのときのキャプテンが西村だった。
宮崎・高鍋高で楕円球を手にして専大へ。コーラに入社後、力をつけ、プロ選手として頑張ろうと決断した矢先の出来事だった。
移籍先を探し、トヨタから声がかかった。
「まさか、トヨタでプレーできるとは思わなかったです。自分がディビジョン1でプレーできるなんて。でも実際にやってみたら、通用する部分もあった」
移籍して最初のコンタクト練習、思い切り仲間のFWにタックルに行くと相手が吹っ飛び、周囲から驚嘆の声があがった。
渾身の一撃だった。
実家は宮崎でイチゴを栽培している。高鍋高でラグビーを始めたときは「当たることが苦手だったので、ランパスが一番好きな」体重70㌔台のやせっぽちの少年。
だが、次第に「このままではいけない」と思い始め、懸命に身体を作った。
それまで間食の習慣はなかったが、学校におにぎりを持っていって授業の合間に食べるように。
「体重が増えだしたら、身長も伸び始めました」
現在は190㌢105㌔。文字どおり、押しも押されもせぬLOに成長した。
今季は、加入したジョー・ローンチブリーから多くを学んだ。
「練習でモールディフェンスをやると、彼がいるといないとでは全然違います。ギリギリのところがうまい」
仲間のイングランドFWの凄さも実感する。ローンチブリーの体重は125㌔。ラインアウトで持ち上げるのも、同じLOの仕事だ。
「相当、上げないといけないのでかなり重い。彼を高く持ち上げるイングランドの選手は、すごいなと」
そして、彼の心情に寄り添うことのできる人間でもある。
「クラブが突然なくなる気持ちはよくわかる。向こうは何十年もいたクラブ(ワスプス)だから、より大変だったはず」
16日に対戦するBR東京は、第3節に対戦して25−29で敗れた相手。西村も試合に出ていた。
「あのときは、エリアどりがよくなかった。今度はきちんとエリアを取っていければ。あとはラインアウト。相手もラインアウトが強いので、そこをどう潰せるか」
父は高知出身。龍馬の名付け親は、もちろん高知の祖父だ。
日曜日、悔しさを自ら晴らせるチャンスに腕をぶす。