日本代表 2022.07.24

5年ぶりの国内テストマッチを勝利で飾る。サクラフィフティーン、まずは釜石で出し切る。

[ 編集部 ]
5年ぶりの国内テストマッチを勝利で飾る。サクラフィフティーン、まずは釜石で出し切る。
PR南早紀主将(左)と前回W杯時の主将だったFL齊藤聖奈。(撮影/松本かおり)
ブランビーズでも活躍し、力を伸ばしたCTB古田真菜。(撮影/松本かおり)
ベリック・バーンズ リソースコーチの指導も好評。(撮影/松本かおり)



 5年ぶりに国内のファンの目の前でプレーできる。
 サクラフィフティーン(女子日本代表)の選手たちが、7月24日の南アフリカ戦(釜石・鵜住居)を前に高鳴る胸の内を言葉にした。

 試合前日の午後、チームは雨上がりのスタジアムでトレーニングに臨んだ。
 ユニットプレーやコンビネーションの確認を1時間強に渡っておこなった。

「4戦(対南アフリカ2戦、対アイルランド2戦)ある中の初戦。国内で試合ができる貴重な機会です。チームは釜石に入り、リラックスできています。いい緊張感を持って試合に臨みたいですね。いつも応援してくださっている皆さんに見てもらえるのが嬉しい」と語るのは南早紀主将だ。
 1番を背負い、最前列でぐいぐい前に出る。

 5月のオーストラリア遠征ではフィジー、オーストラリアの各代表から勝利を挙げ、ワールドカップ(以下、W杯)への準備を進めるチームは自信と勢いを得た。
 しかし、南主将は足を止めない。

「チームは成長段階。W杯の最後まで成長し続けます。オーストラリア遠征で『勝ち切る』という目標を立て、実現できましたが、(今回のテストシリーズでは)内容にもこだわっていきたいと思います」

 5月の遠征で取り組んだ、キックでエリアを取り、スペースにボールを運ぶスタイルを継続し、さらに精度を高めたいと話す。
「ディフェンスではプレッシャーをかけ続けてボールを取り戻します」

 南アフリカ代表に関しては、「フィジカルの強いチーム。アグレッシブで、カウンター攻撃では個人技で前に出て来ると思います」と分析する。
「キックを使った後のトランジションが起こるところでも防御ラインを崩さずに上がり続け、スペースを与えないようにしたいと思います」

 前日の会見でレスリー・マッケンジー ヘッドコーチ(以下、W杯)は南主将について、「早紀は私に意見を言ってきてくれる」と話した。
 キャプテンは、スクラムのやりとりに関して「譲れないところがあった」という。

「オーストラリア遠征でセットプレーには課題が残りました。その修正に関してレスリーHCからの指示も出た。私も譲れないところがあったので、どんどん前に出たい気持ちを伝えました。意見はぶつかり合いましたが、HCの意図も(より明確になって)理解できて、いいディスカッションになったと思います」
 自慢のプッシュ同様、いつもまっすぐだ。キャプテンは勝利へ向け、チームの成長へ、最短距離を走る。

 そんな南主将を「熱い女」と評するのが齊藤聖奈だ。
 2017年W杯時にはキャプテンを務めていた。現在のチームではベテランとして、一人のプレーヤー以上の存在感を発揮してチームを支える。

 前回W杯時の自分を振り返り、「前回は人間的にも選手的にも未熟で、いっぱい、いっぱいでした。そこから(5年経って)両面とも成長して、余裕ができた気がします」
 当時はHOで、いまFL。30歳になっても元気なままでいられるのは、その変化も無縁ではないはずだ。

 レスリーHCに、「フロントローとしては大きくない。走れるからバックローへ」と転向を促され、「HOが好きだったので、最初は戸惑った」というが、いまは変わった。
「だいぶフィットできてきて、いまは『自分のポジションはFL』と言えるところまできました」

 バックローは層が厚い。その中で、「若い選手からも学んでいます」と成長を止めない。
「リーダーシップのある選手が多いチーム」と言う中で、自分自身も自然体で南主将をサポートする。

 BKの真ん中に立ち、周囲を引っ張る気持ちに溢れるのは13番の古田真菜だ。
 今季はブランビーズに加わり、オーストラリアの女子スーパーラグビー、スーパーWで戦った。そこで得た力を、チームのオーストラリア遠征の中で発揮した。

 しかし本人は、自分のパフォーマンスに満足していない。「周囲の選手の活躍にのっただけ。もっと自分が勢いづけるプレーをしないといけない」と決意表明した。

 W杯へ向け、BKは全員がキックのオプションを持てるように準備している。ジャレッド・クラウチ、ベリック・バーンズ(元ワイルドナイツ)らリソースコーチの指導を受け、スキルは高まる。
「蹴った後のチェイス、カウンターへの対応も準備しています」

 オーストラリアからの帰国後は、所属する東京山九フェニックスのセブンズ活動をサポートした。
「試合メンバーの相手としてのディフェンスのとき、スピードあるプレーに何度も抜かれました。それへの対応を考え、(太陽生命ウィメンズセブンズシリーズの年間王者に輝いた)仲間の頑張りに刺激を受け、いい時間になりました」
 自身もテストマッチで好パフォーマンスを見せたい。

 南アフリカとの第1テストは、7月24日の14時45分キックオフ。
 釜石は前日までの雨も上がり、好天に恵まれている。
 戦いの舞台となる釜石鵜住居復興スタジアムでサクラのジャージーが躍動すれば、美しい景色が、さらに彩られる。
 いつものように、全員がひたむきにプレーすることだけは約束されている。

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