国内 2022.03.31

サニックス経営環境変化で苦渋の決断。ブルース活動休止。「残りはファンに恩返しのつもりで」

[ 編集部 ]
サニックス経営環境変化で苦渋の決断。ブルース活動休止。「残りはファンに恩返しのつもりで」
試合前に円陣を組む宗像サニックスブルース(撮影:Hiroaki.UENO)


 福岡県宗像市を拠点とするラグビーチーム、宗像サニックスブルースが、今シーズン(2022年5月末日)をもって活動を休止することが決まった。3月30日の午前中に株式会社サニックスの取締役会が開催され、決定。その後、選手たちにはクラブハウスで宗政寛・代表取締役社長から伝えられた。

 2月中旬には廃部を検討しているという一部報道もあり、選手たちはチームの厳しい状況を知っていたが、活動休止決定の通知に、ショックを受けた様子だったという。同社のスポーツ・文化振興事業部長でラグビー部長でもある渡邊敏行氏によれば、「とうとう来たか、という感じに見えました」。ファンらがチーム存続を求める署名活動をおこない、選手たちも試合会場で来場者に署名を呼びかけたりしていたが、願いは届かなかった。

 会社としては、ラグビー部のこれまでの貢献には大きな価値があると考え、チームの活動継続に向けて最大限の努力をしてきたが、現下の経営環境を総合的に判断した結果、これまでと同様の体制でのチームの強化・継続は困難であると、苦渋の決断をした。

 同日、オンライン会見に臨んだ執行役員の曽我拓・企画本部経営企画部長は次のように語った。
「当社、サニックスという会社は、他社に比べて事業規模も非常に小さいなかで、限られた利益のなかでラグビー活動をやらせていただいてきました。これまで28年間活動しているなかで、経営状態としてきついときもありましたが、特に今年度は、当社が事業としてやっておりますエネルギー周りのところで、エネルギー価が高騰したり、足もとではロシアで戦争がというような、非常に経営としては不安定な状況に陥ってしまい、先行きの見通しが非常に立ちづらい環境もございまして、今回、苦渋の決断ではありますが、いったん、プロのカテゴリーでやっていくのはあきらめようという決断をした次第でございます」

 今年から始まったリーグワンに参加するにあたっては、上を目指していた。いつまでしかやらない、という考えで臨んでいたわけではない。活動を続けるかどうかの検討は、経営環境が突如、大きく変化したことがきっかけだが、しかし、リーグワンでは3部構成のいちばん下にあたるディビジョン3に入ったこととの関連性は、まったくないわけではないと曽我氏は言う。
「チームを持つ以上、ディビジョン2、ディビジョン1を狙っていかなければならないが、どこまでチームに投資ができるのかというのは議論の中心にありました。すでに上のディビジョン1にいるとかであれば、違った考え方もあったかもしれませんが……」

ロッカールームにかけられた宗像サニックスブルースのジャージー(撮影:Hiroaki.UENO)

 今回、「廃部」ではなく「活動休止」と発表した。それは、いつの日か形を変えて、またラグビーに携わることができればという思いがあるからだ。地元の人々や多くのファンに愛されたチームであることは会社側もわかっている。そして、ラグビーを愛する会社であることはみんな知っている。国内だけでなく海外の強豪校も招待して4月下旬から5月上旬の大型連休中に開催する『サニックス ワールドラグビーユース交流大会』は2000年から始まっていまも続いており、サニックスのラグビー界への貢献は大きい。
 曽我氏は、現状のような、トップカテゴリーを前提としたようなチームの活動をすることは当面考えていないとしたうえで、こう言った。
「ただ、当社として、今後もユース大会の開催だったり、ラグビーのブランドを活用したアカデミーの実施など、何かしらの形でラグビーを通じた地域貢献活動を継続させていただくつもりです。いつどのような形で、というのはまったく想定しておりませんが、そういった活動のなかで、いつの日か形を変えて、またラグビーに携わることができたら、携わる可能性があれば、ということで、『活動休止』という文言を使わせていただきました」

 今後は、所属選手のキャリアを最優先に考え、会社として、移籍または再就職の支援をおこなっていく。そして、チーム譲渡についても可能な限り継続して検討していくという。「話を聞かせてほしい」と興味を持ってくれるところもいくつかあり、「譲渡は無理だが何かしらサポートはできないか」という言葉も受けたそうだが、現時点では、本格的な交渉まで至っているところはない。選手にも、チーム譲渡の目途は立っていないと伝えている。

 宗像サニックスブルースは現在、ディビジョン3で奮闘中。全6チームが参加する同グループで2回戦総当たりのリーグ戦はあと2節だが、その後、上位3チームと下位3チームに分かれておこなわれる順位決定戦にもブルースは参戦する。上位3チームはディビジョン2との入替戦もあるが、ブルースが3位以上になった場合は、譲渡に係る状況などを踏まえ、一般社団法人ジャパンラグビーリーグワンが4月中旬をめどに決定し発表する。仮に譲渡先が見つからなかった場合は、入替戦には参加しないことを想定しているとのこと。

 曽我氏とともにオンライン会見に臨んだブルースの渡邊部長は最後にこう言った。
「リーグワンが開幕してこれからというときに、活動休止という決定になりまして、ファンの方々、ならびに関係者の皆さま、リーグワンの皆さまに対しまして、本当に申し訳なく思っております。そして、残念に思っております。ファンの方々に喜んでいただけるラグビーをしようと準備しているところで、このようなことになって本当に残念に思っております。残りの試合は少ないですが、選手は必ず全力で戦ってくれると信じております。我々スタッフも、会社側も、全力で選手のサポートをしてまいります。残り少ない活動になりますけども、引き続き、会場に足を運んでいただいて、選手の活躍を見ていただければと思います。そして、選手・スタッフはファンの皆さんに恩返しするつもりで全力で戦っていきたいと思っております」

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