【ラグリパWest】ギターから楕円球へ。亀沖泰輝 [天理大/FWバックファイブ]
亀沖泰輝(かめおき・たいき)は天理に通う大学4年生だ。
高校時代、ギターの道に進むことを考えながら、楕円球界に戻って来た。
チームでのポジションはFWのバックファイブである。
「僕は突出して強いところがありません。だから4番から8番までどこに入っても、何でもできる人を目指しています」
サイズは184センチ、100キロ。学生レベルでは申し分ない。
11月20日の京産戦はリザーブスタートもそれまで関西リーグの5試合に先発した。右ロック、右フランカーが2ずつ。ナンバーエイトが1。チームにとって不可欠なスーパーサブと言える選手だ。
格闘的な競技をしていた亀沖が、真逆の音楽を始めたのは中3だった。
「ラグビーだけの人生はどうかと思いました。ちゃうことをしたい、離れようと」
夢見たのはバンドを組んで学園祭に出ること。テレビアニメ『けいおん!』などの影響もあった。エレキギターを専門家について習った。本格的だった。
「痛くない、怖くない、格好いい、楽しそう、そんな感じでした」
幼なじみの小笠原寛人の影響で小4から尼崎ラグビースクールに通っていた。誘われたラグビー強豪校は断った。
一般受験で尼崎市立尼崎高校、通称「イチアマ」の普通科に合格する。さっそく軽音楽部の創部に向けて動き出した。ギター、ベース、ドラムやシンセサイザー、そしてボーカル志望の20人ほどが集まった。
顧問を引き受けてくれそうな先生も見つけた。しかし、学校側の回答は、「使える教室がない」。創部は認められなかった。
「自分たちでやれ、ということだったのでしょう。市尼は吹奏楽が強かったですし」
関西でも屈指の演奏力を持つクラブとかぶる部分もあった。
入学2か月ほどで大きな目標がなくなった。そのため、ラグビースクールを手伝ったりもした。夏のある日、練習後に高校の試合があった。イチアマが来る。人数が少なかったこともあって出場を誘われた。
「久しぶりにやってみたら、楽しかったんです。思いっきり走れる。経験者やったから、みんなもちやほやしてくれました」
同級生から問われた。
「なんでできんのに、やれへんの?」
監督の吉識伸(よしき・しん)はギター教室との両立を認める。プロップとして報徳学園で主将をつとめ、大体大に進んだが、教員として適切に対応した。かくして幼なじみの小笠原とまた同じチームになった。
「週に1回、練習を30分ほど早くあがらせてもらって教室に行きました」
その秋、全国大会の兵庫県予選は4強戦で関西学院に7−40で敗れる。
「3年生が抜け、中途半端でやっていては、という気持ちが起こり、一本に絞りました」