田村優、「一番素晴らしいチーム」の日本代表への参加に「気持ちの整理がついてきた」。
ラグビー日本代表が5月27日、大分は別府でのキャンプを本格始動させた。
「初日は難しいことがたくさんあると思ったんですけど、ちょっとでもいい練習になるように皆が協力してできている」
チームの雰囲気を好意的に捉えたのは田村優。2012年に初選出され、ワールドカップに2大会連続で出場してきた32歳だ。
「チームとして一体感を持ってやるのが一番、大事だと思います。あとはコーチからフィードバックをもらいながら、自分のレベルをちょっとでも上げられるようにしたいです」
直近の国内トップリーグでは、加入4季目のキヤノンで主将を務めた。移籍加入からずっと2ケタ台だった順位を、8強以内に引き上げた。
「僕じゃなくて、キヤノンの他の選手がいい方向に向かってくれたところが大きいと思います」
チームメイトでSHの荒井康植が初めて代表入りしたのは、その成果の表れか。
「皆、いままで(昨季までの取り組み)が足りていなくて、もっとやらなきゃいけないと理解して、一生懸命頑張って…。(荒井)康植みたいにそこで気付いて頑張って日本代表になった選手もいますので、実際にチームがいい方向へ行ったと思います」
話題に挙がった荒井は、かねて「(田村は)声、チームで引っ張っていくのは昔から。今年は、あの人がもっと活躍できるラグビースタイルに変わった」。沢木敬介新監督が多彩な攻撃オプションを用いるなか、視野の広いSOのモチベーションに変化があったのではと見る。
当の田村は、「心が充実した状態で(2021年の)トップリーグに臨めたのが大きかったかなと」。今度の代表入りの背景にも、クラブでの充実ぶりがあったと示す。
2019年には日本代表の正司令塔として、ワールドカップの日本大会に挑んだ。
有形無形の圧力と向き合いながら史上初の8強入りを果たし、南アフリカとの準々決勝を終えれば「僕が代表に入った時よりもいい状態で終われたと言ったらおかしいですが…次へのバトン渡しは、完了しました」。自らの代表活動に、ひと区切りをつけたかのような言葉を残した。
しかし、2020年1月からのトップリーグがシーズン途中で不成立となったこと、直近のキヤノンが活気づいていることを受け、田村の心境は当時と異なっているようだ。
新型コロナウイルスの影響による昨春の長い自粛期間を、田村は「僕(にとって)はポジティブ」と捉える。「僕が思っている気持ちは、大変な思いをしている人とはちょっと違うかもしれないです」と国民に配慮しながら、こう言葉を選んだ。
「ラグビーから離れる機会も多かったので、そういう(日本代表への)思いも湧いてきて、(2021年に)またジェイミー(・ジョセフ ヘッドコーチ)からチャンスをもらえた。大変な状況ではありましたけど、うまく自分の気持ちの整理がついてきたかなと思います」
現日本代表の最大のターゲットは、2023年のワールドカップ・フランス大会だ。ファンに3度目の挑戦を期待される田村だが、「そんなに先のことは見られない」「(大会のメンバーを)選ぶのは僕じゃない」と強調する。
「でも、この(7月までの)ツアーを頑張るという気持ちはあります。日本代表は日本で一番、素晴らしいチームだと僕は思う。(今回は)それをいままで見られなかった人たちに見せるチャンスだと思います」
6月26日には、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズとぶつかる。4年に一度しか編まれぬ特別なチームと、スコットランドのマレーフィールドで競演する。
「ライオンズと試合をするのは、ワールドカップで試合をするのと同じくらいの夢というか、光栄なこと。そこは楽しみですね」
まずは、目の前の大一番に集中する。