【サクラフィフティーン PICK UP PLAYERS】「あなたには時間がある」で奮起。畑田桜子[CTB/日体大女子]
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畑田桜子は2024年シーズン、初戦のホンコン・チャイナ戦から5試合連続で先発した。
悲劇が起きたのは、8月のアメリカ戦第1戦。開始数分で右膝の前十字靭帯を断裂した。
「初のW杯出場に向けて順調に使ってもらえていたので、結構苦しかったです」
立ち直るには時間を要したが、レスリー・マッケンジーHCから「あなたには時間がある」と声をかけられ奮起した。
先輩CTBの古田真菜や弘津悠も、「私の復帰をずっと願ってくれています」。
「練習に入れなくても、わからないことがあれば教えてくれます。すごく優しいですし、かっこいいです」
リハビリ期間中は週に4回、上半身のウエートに励み、「みんなから(身体が)硬くなったねと言われるようになりました」と表情を崩す。
福岡県出身。2人の兄の影響で、7歳から太宰府少年ラグビークラブに入団した。次男の康太朗は日野レッドドルフィンズのSHだ。
「兄たちとは小さい頃からよく追いかけっこをしていました。そこでスピードはついたかもしれません」
中学時代は多忙を極めた。平日は陸上部(100メートル走と砲丸投げ)で活動しながら、土日は太宰府と福岡レディースの両方のクラブに通った。
送迎など献身的に尽くしてくれた両親の支えもあって続けられた。
「日曜は午前中に太宰府の練習や試合をして、午後1時からのレディースの練習に速攻で移動しました。車の中でご飯を食べていましたね」
筑紫高校では男子部員とともにトレーニングをこなし、コンタクトに磨きがかかる。練習試合にも一緒に出られた。
3年時には高校生で唯一、日本代表の欧州ツアーに参加。15人制のいろはを理解するのに苦労し、涙した日もあったが、当時は同じバックローで筑紫、日体大の先輩でもあった伊藤優希らが気にかけてくれた。
待望のデビューはそれから3年。2022年5月のオーストラリア戦で初のメンバー入りも出番はなく、翌年7月のスペインとの第2戦でも、80分間ベンチを温め続けた。9月のフィジーとの第1戦でようやく初キャップを獲得できた。
地元・福岡(JAPAN BASE)でのゲーム。強烈なタックルと力強いランで魅せた。試合後、母が嬉し涙を流していたことを覚えている。
「バックローにはレジェンドの方々がたくさんいます。でも、なかなか出られない期間が長くて、きつかった。やっと自分のプレーを評価してくれたなと。母が喜んでくれたこともあって、すごく嬉しかったです」
代表ではFL、日体大ではCTBで過ごしていたが、国内でのパフォーマンスを評価され、昨年から代表でも「一番楽しい」CTBに。「より自分の強みを生かせる」という。
「FLは外から2番目にいることが多いけど、13番ではボールを早めにもらえる。自分で仕掛けたり、動かすことができます」
日体大の同級生である向來桜子、峰愛美の2人も最終候補に名を連ねている。「同期の3人で試合に必ず出たいねと言い合っています」。
コンディションを万全にして、熾烈なCTB争いに挑む。
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン9月号(7月25日発売)の「女子日本代表特集」を再編集し掲載。掲載情報は7月15日時点。