日本代表 2025.07.28

独特ランでサクラフィフティーンに変化。松村美咲を支える名手の言葉。

[ 向 風見也 ]
独特ランでサクラフィフティーンに変化。松村美咲を支える名手の言葉。
W杯前最後の国内テストマッチに出場した松村美咲(撮影:福島宏治)

 相手は止めづらいだろう。松村美咲。女子15人制ラグビー日本代表のフィニッシャー候補だ。

 身長169センチ、体重68キロと縦に長くシャープなシルエットで大胆な急加速、ゆったりとしたフットワークを緻密に絡める。タックラーの意表を突く。

 7月26日、東京・秩父宮ラグビー場。対スペイン代表2連戦の最終戦へWTBで先発した。自身にとって2戦連続となる出場だ。

 後半20分には持ち場の右端で鮮やかにフィニッシュ。中盤のカウンターアタックでも、タックルをひらりとかわして目立った。

「カウンターアタックでは間合いがある中での勝負になり、自分の強みであるステップを活かせる」

 30-19で勝った。しかし、反省する。

 前半8分頃、ゴールライン上でのグラウンディング時に球を地面に弾いてしまった。続く後半37分頃には、フリーで回ってきたパスを捕れなかった。計2度の得点機を失った。

 だから「個人的には課題の多く残る試合でした」と悔やみつつ、切り替え、先を見据える。

 8月下旬からイングランドで、原則4年に1度のワールドカップへ出る。

 初めて大会登録メンバーに名を連ねるのに先立ち、こう展望した。

「単純なハンドリングエラー以外で言えば、自分が余裕のある状態でボールをもらえるように(早い声掛けを意識)。本番(ワールドカップ)ではトライを獲り切れるようにしていきたいです」

 普段は早大の3年生だ。在籍するのは東京山九フェニックス。15人制で国内3連覇中の強豪だ。男子のリーグワンに挑む、清水建設江東ブルーシャークスの施設を使う。

 ブルーシャークスには、リマ・ソポアンガが在籍していた。

 ニュージーランド代表、サモア代表で選出歴のあるSOで、フェニックスのメンバーにはゴールキック、陣地獲得の足技を指導していたようだ。松村はその技術に触れながら、朗らかなソポアンガのメンタリティにも感銘を受けた。

「自分のパフォーマンスがよくなくて、少し相談に乗ってもらったら、『どんなトップ選手でも常に完璧なわけではない。最高の準備をして、試合ではプレッシャーを力に変えて楽しんで』と」

 己に過度な重圧をかけず、置かれた状況で最善を尽くす。その心がけは、故障との向き合い方にも表れる。

 最近、グロインペイン症候群という股関節周辺の痛みに悩まされていた。

 リハビリの方向性を模索するさなか、代表スタッフの紹介でカナダへ渡った。その道の名手に3日間、調整方法を伝授され、カムバックのきっかけを掴んだ。

「先が見えないなか、これからどうすれば怪我がよくなるかを教わりました」

 トレーニングやゲームの前後に、現地で学んだケアメニューを繰り返してきた。地道な積み重ねの末、7月のシリーズでは昨年10月以来となるテストマッチ復帰を果たした。

 その流れで27日、イングランド行きの切符を掴み、「支えてくれた方に恩返しを」。20歳での選出は最年少となる。

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