スクラム文化のあるチームで、最前列の深みを学び中。山下憲太[静岡ブルーレヴズ]は大学までFL
後半2分には7-21とされたけれど、最後は31-31と引き分けた。
4月19日(金)に秩父宮ラグビー場でおこなわれた東京サントリーサンゴリアス×静岡ブルーレブズは、レブズの勢いと若手の成長が印象深い試合だった。
PRショーン・ヴェーテー、FLヴェティ・トゥポウのアーリーエントリー組や、移籍で今季加わったシオネ・ブナらの活躍が目立っている。
若手とベテランのバランスのいいメンバーの中、その試合で今季2度目の先発を果たしたのがPR山下憲太だった。
2021年にレヴズに加入し、今季が3シーズン目の25歳。
ルーキーイヤー、2試合に途中出場を果たしたが、昨季はケガで試合出場がなかった。
今季もプレシーズンやクロスボーダーラグビー期間中にケガや脳震盪でコンディションが整わず、第8節に初登場となった。
1番で先発した埼玉パナソニックワイルドナイツとの試合が復帰戦となった。
それ以降はベンチスタートで4戦に出場。そしてサンゴリアス戦で2度目の先発起用となる。
4月27日(土)のコベルコ神戸スティーラーズ戦は背番号17でベンチスタートとなった。
先発したサンゴリアス戦では、後半9分までプレーした。トイメンは日本代表の垣永真之介だった。
スクラムでは前半、不安定な面があった。「自分のところだけ凹んで組んでいました」と分析する。
後半はそこを修正し、最前列の3人が同時にヒットするようにした。いいスクラムが組めた。
長崎出身。友人に誘われ小学校4年時、ばってんヤングラガーズでラグビーをはじめた。
パスよりタックルが得意なCTBだった。中2のときにLOにポジションチェンジし、海星高校入学時からFLになった。
高校2年時に県選抜入り。3年時に高校日本代表候補になるも花園出場は叶わず、高校の監督の勧めで法大に進学、FLとして活躍した。
卒業後、レヴズに入った。
FLとして活躍していた男が、レヴズでは最初からフロントローへ転向した。チームから「HOで採りたい」と提案があったからだ。
大学3年時にレヴズ(当時ジュビロ)の練習に参加。トライアウトを受けた結果、経験したことのないポジションでの可能性を評価してくれた。
177センチだ。本人も、国内最高峰リーグでバックローとしてやっていけるのか不安はあった。
そんな時の転向の提案だったから、「そこで成長できるなら」と信じ、飛び込んだ。
HOとして静岡でのキャリアを始めるも、次の転機が2季目に訪れた。
昨シーズンの最終戦となった未来マッチ(トレーニングマッチ)のトヨタヴェルブリッツ戦で、ケガ人の影響もあって1番を任された。
「楽しかったんですよね」
HOの仕事の中でスローイングが苦手だった。そこで失敗すると、ストレスをフィールドプレーに引きずる自分がいた。強みのタックルを出せず、負のサイクルが生まれた。
「なので(その試合後)、1番をやらせてください、とお願いしました。スクラムに集中し、フィールドで頑張る。それが楽しかった」
ルースヘッドPRとしては、まだ1年目。経験が少ないと自覚する。
ただ、「試合に出ていろんなタイプの相手と組むことがすごく勉強になる。引き出しを増やしたい」と話す。
深みが分かっていく中で、スクラムについて「別競技感がある」と表現する。
特にレヴズにおいてスクラムは神聖なもの。「FWは遅くまでスクラム練習に時間を費やす。僕らは命を懸けてスクラムを組んでいます。熱いし、楽しいし、しんどい。ラグビーをしている、っていう感じがします」。
このチームに入って良かった。
スクラムを大事にするカルチャーが昔からある。それは先輩たちから新しく入った選手たちに引き継がれ、歴史が重なる。
「スクラムを軽んじる人が一人もいません。バックスの人たちからも、スクラムいこう、スクラム大事だよ、と声が出るチームです」
もっとも手強い相手として、チームメートであり先輩の、伊藤平一郎の名を挙げる。
「へいいちさんは、僕がどうしようと関係なく、とにかく強い」
まだまだ、だ。自分がいま置かれている立場について、「ケガをしている方々もいるので」と理解する。
「来シーズンは、競争の中で一番手として使ってもらえるようになりたいですね」と志を高く持つ。
そのためにも、今季最後まで結果を残し続ける。