国内 2024.03.03

ニュージーランド留学で進歩。サンゴリアス尾崎泰雅がラグビー辞めかけていた過去。

[ 向 風見也 ]
ニュージーランド留学で進歩。サンゴリアス尾崎泰雅がラグビー辞めかけていた過去。
3月2日のブラックラムズ戦で躍動したサンゴリアスの尾崎泰雅(撮影:高塩 隆)


 自分の道を見つけた。

 東京サントリーサンゴリアスの尾崎泰雅は、3月2日、東京・秩父宮ラグビー場で国内リーグワン1部の第8節に先発。端側のWTBに入り、6分にはこのゲームにおける最初のトライをマーク。以後も深いポジショニングからの走り、キック、ロングパスで魅した。

 球を大きく動かしながら適宜エリアを取るという、「チームのシナリオ」に沿って才能を活かした。対するリコーブラックラムズ東京を62-0で下した。

「チャンスがあれば、常にボールへ絡もうとは思っています」

 身長184センチ、体重93キロの25歳。今季ここまでのレギュラーシーズンでは、計6試合でアウトサイドCTBとしてプレーしてきた。端側のWTBよりやや中央寄りのアウトサイドCTBは、「自分からチャンスを作れる、身体を張ってチームに貢献できる」ところが好きだ。

「あと、ボールタッチも多いので。ただ、どのポジションでもできると証明したいとも思っています」

 2月の中断期間中は、「クロスボーダーラグビー2024」に参戦。2月3日、秩父宮でニュージーランドはオークランドのブルーズに7-43と敗れた。向こうの強さ、速さに「全員が塊となって来るな…。誰も力を緩めていない」と舌を巻きながら、懐かしさも覚えた。

「その試合に出ていないメンバーも含め、ほぼ(全員が知り合い)。一緒に練習させてもらい、仲良くさせてもらいました」

 昨季終了後から約3カ月強、オークランドへ留学していたのだ。

 平日は週に2日は地元のワイテマタというチームで、残る3日は地域代表選手権へ出るオークランド代表でトレーニング。週末はクラブの試合に出た。ブルーズ入りする猛者も多いオークランド代表への本格参戦は叶わなかったものの、クラブ側では主軸級の信頼を得た。

 言葉の壁に苦労した日常を、かように振り返る。

「『こうしたい』『こうして欲しい』というものを、伝えたいけど、伝えられないという状態でした。自分のプレーに集中して、チームに頼られる存在になるにはどうしたらいいかを考えてきました」

 楕円球と出会ったのは3歳の頃。南京都ラグビースクール、伏見工高を経て、2017年度に入ったのは帝京大だった。そのシーズンまでに大学選手権9連覇を達成の強豪にあって、当初は、迷いを抱えていた。

「僕、ラグビーをする気なくて。高校を卒業したら就職しようと思っていたので…」

 1年生の頃のある時期、部活も学校も休んで京都に帰った。仕事も見つけた。職種は「現場っす」。たしかに、サンゴリアスのホームページにある「特技・資格」の欄に「溶接が得意」とある。

 結局、大学へ戻ることにしたのは、家族に説得されたからだ。帝京大の先輩で現在サンゴリアスの同僚でもある兄の晟也はもちろん、両親にも背中を押された。

「家族、好きなので。やはり、親を悲しませてはいけないなというのを感じて、自分で、(東京に)戻りました」

 他者の思いをその場に踏みとどまった。かくして、自分の道を見つけた。ラグビー王国での経験も、国内有数の名門で躍動する日々も、その延長線上にある。

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