リーグワン初代新人賞のいま。スピアーズ根塚洸雅の新境地。
どんどんよい集団になっている。
根塚洸雅は、2021年に入ったクボタスピアーズ船橋・東京ベイをこう捉える。
身長173センチ、体重82キロの25歳は、実質1年目からWTBとして爆発。2022年にリーグワンの初代新人賞を手にしている。チームは旧トップリーグ時代から2年連続での4強入りを果たしていて、昨季は初の日本一に輝いた。
ステップアップのさなかに迎えたのが、7名のルーキーだ。
帝京大主将の江良颯、明大主将の廣瀬雄也といった学生シーン屈指の注目株のほか、拓大入り後に右PRへ転向した身長190センチ、体重120キロのイジー・ソードのような発掘された大器も並ぶ。
「ここ3年を振り返っても、いいチームになったな。次は、(自分が)いいチームにしていかなくてはいけないと感じています」
根塚が話したのは3月1日。全体練習の後にハイボールキャッチの個人練習を重ね、引き上げる折だ。
その日の午後には、新加入のメンバーが揃って記者会見を開く。OBで広報の岩爪航さんは、取材機会を設けることで各自が自分の言葉で思いを伝えるのに慣れて欲しいと願っている。
元法大主将の根塚は、登壇する新顔たちはナーバスになっているだろうと想像した。
「そういうインタビュー、自分も大学の時にはやっていなくて。(テレビの特集などで)初めてやる時は、緊張しました」
自身は調子を上げる。トライアル・アンド・エラーを活かす。
2023年12月からのシーズンの第3、4節はメンバー外だった。フラン・ルディケ ヘッドコーチからは他選手との「ローテーション」のためと告げられたが、悔しさは募る。
よかったのは、雌伏期間を正しく過ごしたことだ。週末の試合で出番がなさそうだとわかれば、プレシーズンさながらの筋力強化メニュー、走り込みでベースアップに努めた。
肥やしを作ったのはオン・ザ・ピッチでも然り。かねてスペースへ駆け込んでの突破を持ち味とするなか、今季は走りながらのプレー選択を磨こうとしている。田邉淳アシスタントコーチの助言を受けてのことだ。
「(防御を)抜ける時の相手の立ち位置を見て、どの辺にキックするか、もしくはそのままキャリーするか(の判断)…」
かような領域を意識するうち、最近では「(試行錯誤してきたことが)身体にしみついてきて、吹っ切れてできているかな」と笑う。
「そこが、動きの判断の速さとかにつながっていると思います。身体のきれもどんどん上がっています。まだまだ途中ですが、いい感じに成長しています」
2月10日には東京・秩父宮ラグビー場で、「クロスボーダーラグビー2024」のチーフス戦に先発。非公式戦とはいえニュージーランドの強豪と対戦できた。スタッフにコンディションを考慮されて29分のみの出場となったが、鮮烈な印象を残した。
25分にはトライを決めた。機敏さを活かし、複数名の防御をかわした。
空中戦で、環太平洋系の大型選手に競り勝つこともあった。
結局は30-35で惜敗も、明るいランナーは手応えをつかんだ。
「思い切りアタックできていれば、世界が相手でも通用するという自信を持てました」
2月24日、東大阪市花園ラグビー場。中断明け後初の第7節に出た。
未勝利の花園近鉄ライナーズを56-19と下すまでに、自らインゴールを割った。
前半18分だった。自陣中盤右のスクラムからの展開に参加。攻撃ラインの中央あたりで味方のパスが目の前を通ると、左タッチライン際にいるWTBの木田晴斗がブレイクするであろうと予測。反応。快走する木田の内側につき、ラストパスをもらってフィニッシュした。
「チャンスをトライにつなぎ切れるかを、チームで大事にしているので」
2022年夏に代表デビュー。しばらくナショナルチームから離れているが、いまも国際舞台で躍るのを目指す。
「日本代表に入りたい気持ちはいつでも抱いている。そこへ入れるレベルになるため、ちょっとでも…ちょっとでも…とトレーニングしています」
有望な後輩を迎えたクラブにあって、若手のリーダー格に遇される根塚。3月3日には東京・秩父宮ラグビー場で、第8節に臨む。昨季昇格の三菱重工相模原ダイナボアーズから、今年度5つめの白星を得たい。