スピアーズの木田晴斗は、調子がよすぎたと反省。国際試合へ自然体を意識。
早速、歓声を浴びた。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイの木田晴斗は1月27日、リコーブラックラムズ東京と対戦。国内リーグワン1部の第6節だ。場所は東京・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場だ。
オレンジの11番が中盤で球を持ったのは前半4分。左タッチライン際を突っ切る。大外へスワーブを切って防御をかわし、さらに追いかけてくるタックラーを引きずって進む。
身長176センチ、体重90キロの24歳は、実質的なルーキーイヤーとなる昨季にベストラインブレイカー賞を得ている。推進力は折り紙付きだ。
この日も「身体の調子はむちゃくちゃよかった」。しかし、「逆によすぎて、無駄な動きが多かったかなと。個人的な感覚ですけど」。結局、キックオフ早々にチャンスを作ったものの、自らのミスでふいにしてしまう。突破した後に中央へ楕円球をつなごうとするも、相手に渡してしまった。
それが落とし穴への入り口になったと、本人は言う。
「ラインブレイクの後にオプションがいろいろあったなか、視野が狭くなっていた。あまりよくないパフォーマンスをするときの自分になっていた。身体に力が入り過ぎていましたし」
約22分後にも、敵陣22メートル線付近左端を攻略しながら折り返しのパスを向こうに通した。
今季は開幕から状態を上げていて空中戦、身体衝突で持ち味を発揮も、本番でボールを持って長距離を走るのは久々だった。そのため「目のところも正直、あります」。スピードがついたなかで一定の視野を保つ感覚を取り戻すのに、やや時間がかかったと言いたげだ。
守っては再三、大きく駆け戻りながらのタックルで対面のシオペ・タヴォを白線の外へ押し出すが、12分、右から左へ回り込んだところで右に逃げられた。トライを許した。
これも、「身体に力が入り過ぎ」たがゆえのことだった。本来なら徐々に減速し、じっくりと間合いを詰めることができた。
総じて非凡さを示して勝負も18-17で制したが、不完全燃焼の感が残った。
「1回そうなって(エラーが起きて)しまったら、そこからミスとかが続いて、感覚がいつもと違うと思ったら、もう遅いというか…。本当に身体が硬くなるというか。たまになんですけど、1年に何回かある感じのやつが、この間の試合で出た。練習では力を抜いて思い切ってできていても…。あの日は、とにかく硬かったっすね」
小学4年で極真空手の世界ジュニア選手権を制覇。大阪の関西大倉中で自らラグビー部を作り、内部進学した同高を出ると立命館大で1年目から躍動した。2019年にジュニア・ジャパンとなる頃には、現リーグワンの複数のクラブに注目されていた。
国内トップの舞台で実力を発揮し、昨季オフには日本代表に入った。昨秋のワールドカップ・フランス大会に向けたチームからは、けがや感染症のために途中離脱。2027年のオーストラリア大会へ万能的かつランの際立つWTBとなるべく精進しつつ、何より、その時々における目の前のゲームへ意識を傾ける。足元を見つめる。
2月10日、東京・秩父宮ラグビー場でクロスボーダーラグビーの一戦に臨む。対するニュージーランドのギャラガー・チーフスは、国際リーグのスーパーラグビー・パシフィックで昨季準優勝。長らく海外のプレーを見てきた木田にとって、少年時代から好きなチームのひとつだ。高揚感を招く。
「落ち着いて、自分の持っている力を出してチャレンジしたいですね」
平常心で芝に立てば活躍できる。その自信はある。