日本代表 2023.07.11

約1年ぶりの日本代表復帰。堀江翔太の仕事ぶりに迫る。

[ 向 風見也 ]
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約1年ぶりの日本代表復帰。堀江翔太の仕事ぶりに迫る。
日本代表として68キャップを持つ経験豊富な堀江翔太(撮影:松本かおり)


 さすがの仕事ぶりだった。

 7月8日、東京・秩父宮ラグビー場。37歳の堀江翔太が魅した。

 ラグビー日本代表からなる「JAPAN XV」の16番をつけ、投入されたのは後半6分のことだ。対するオールブラックスXVに6-14と、僅差で追っていた頃だ。

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 登場して早々、丁寧な仕事を重ねた。

 自軍のWTBに入るセミシ・マシレワが、敵陣10メートル線付近右中間でハイボールを好捕し、前進する。ここで堀江は、次の攻撃陣形へポジショニング。ラックから球をもらい、すぐに左へさばく。

 受け手の後ろへ回る。SOの松田力也が直進するのを、堀江がサポートする。相手防御をはがす。

 この接点の後ろからは、LOのジェームス・ムーアが駆け込んでいた。ムーアが直進する。堀江はそちらへも援護に入り、ボールキープを助ける。

 ここから3つ先のフェーズでも、堀江が接点に身体を入れる。JAPAN XVの展開を円滑にする。組織図に沿ってハードワーク。チーム戦術の遂行に自身の感性と身体を還元するのが、この人のポリシーだ。

 マシレワの捕球から数えて7フェーズ目では、FBの松島幸太朗が走る。左中間でラインブレイク。10メートル線付近から22メートル線付近まで迫る。

 SHの齋藤直人が右へ折り返す。

 ここで、堀江が、仕掛ける。

 防御とやや間合いを取って楕円球を呼び込むと、迫るタックラーの芯を逃れる。いなし、進む。いつのまにかタックラーを自らの下敷きにする。

 ノット・ロールアウェー(タックルして倒れた選手がその場から離れず、妨害する反則)を誘う。

 妙技でペナルティキックを奪った。立ち位置と身体の使い方にこだわるこの人の真骨頂のような。

 もっとも本人は、この場面を淡々と振り返る。

「まぁまぁ、いつも通り」

 あまり満足しないのは、その後の流れが悔やまれたからか。

 ここで敵陣ゴール前左でのラインアウトを得て、その後の攻めでさらにオールブラックスXVの反則を引き出したJAPAN XVだが、続けてもらったラインアウトは失敗した。

 直後、向こうの落球によって拾ったチャンスもミスでふいにした。堀江は続けた。

「(点を)取れるところで取れなかったというのが…。もうちょっと精度上げなきゃあかんなと。」

 6-38で敗れた。

 終盤に総じてタックルミスが増えたうえ、堀江は「誰を見たかの声をかけないと(明確に)プレッシャーをかけることができない」。防御ラインに立った者同士の連携に、改善の余地があると見た。

 攻めては、接点で向こうのジャッカルに苦しむシーンが続いた。特に堀江が登場する前は、その傾向が顕著だったか。海外経験が豊富で日本代表としても過去3度のワールドカップに出ていた堀江は、問題点を抽出した。

「(ボール保持者が倒れる際に)いい寝方、いいファイトをせなあかんと思いますね」

 相手は来日1週間目とあり、暑熱対策に苦しんでいた。それに対し日本代表は、蓄積疲労が懸念されていた。6月中旬から、過酷なキャンプを実施していたからだ。その条件をも、堀江は言い訳にしない。

「そういうプレッシャーを、チーム的にわざと作り上げていると思う。それを乗り越えるのが、僕ら(選手)の仕事」

 身長180センチ、体重104キロの身体を日々、進化させる。

 2019年のワールドカップ日本大会で8強入り後、日本代表活動へは2022年夏の国内シリーズのみに参加。約3年間、師事している佐藤義人氏とのトレーニングに時間を割いた。

「代表から自分の時間をもらえたのが大きくて。自分のトレーニングをできて、パフォーマンスを出せている」

 その言葉通り、国内リーグワンでもコンタクト時のボディバランスで進歩を示した。

 今秋はワールドカップがフランスであり、堀江は4度目の出場が期待される。代表復帰したこの夏、国内戦でも出番を得る。喫緊の課題を簡潔にまとめる。

「チャンスどころでのミスは、チームに勢いをつけるかつけないか(に関わる)。ミスせずに相手にプレッシャーをかけるために、(スキルや判断の)精度を上げなあかんです。ディフェンスではコミュニケーションを取って、(互いの)役割を明確にし続けていけたら」

 個人の力を証明しながら、チームの力を引き上げる。

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