コラム 2026.03.23

【ラグリパWest】大阪で働く。松下忠樹 [クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/元チームマネージャー]

[ 鎮 勝也 ]
【ラグリパWest】大阪で働く。松下忠樹 [クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/元チームマネージャー]
松下忠樹さんがつとめるクボタは本社機能を今年5月、大阪駅直結で後方に映るグラングリーン大阪のパークタワーに移設する。松下さんは明治大ではラグビー部主務を2年間経験し、クボタに正社員として採用された。企業チームであるS東京ベイや日本代表のチームマネージャーを経験後、大阪に単身赴任でやって来る。

 まっちゃんはいい笑顔を浮かべていた。大仏さまが笑ったかのようだった。

 よかった。

 まっちゃんこと松下忠樹(ただき)はクボタスピアーズ船橋・東京ベイ、略称「S東京ベイ」のチームマネージャーだった。リーグワンのディビジョン1(一部)の強豪だ。

 如月の初日、まっちゃんは大阪へやってきた。チームを保有するクボタの正社員としての異動である。この世界的企業は関西が発祥の地だ。まっちゃんのとって生活するのは初めてだ。来月4月24日に28歳になる。

 この異動は願ったりかなったりだった。
「まず食べものが美味しいです」
 大阪は「食いだおれ」の異名をとる。お好み焼きやたこ焼き、串カツをすでに食した。

 まずはB級グルメからや。

 ほかにもある。
「通勤が混んでないのもいいですね」
 兵庫から大阪に阪神電車で通う。寮は尼崎。本社は「ミナミ」と呼ばれる難波にある。東京のラッシュに比べれば、身動きできる。

 人生の何分の一かは幸せでんな。

 新しい部署は<建設機械マーケティング第一部>。業務は海外営業。担当地域はアメリカ、カナダとオーストラリアだ。商材はユンボ(パワーショベル)などである。

 まっちゃんは現状を話す。
「今は毎日が新鮮です。前はよくも悪くもラグビーだけでした」
 明治を卒業して、新卒入社したのは2021年の4月。そこから今までチーム配属だった。同期はSH藤原忍やWTB根塚洸雅。日本代表キャップはそれぞれ19と3を持つ。

 入社時は副務やチームレフリーなどを兼務したが、チームマネージャーとして、新人採用を含め、より中枢に加わるようになった。2022-23シーズンにはオレンジのジャージーが初優勝する瞬間にも立ち会った。

 ヘッドコーチ(監督)として10シーズン目のフラン・ルディケには可愛がられた。
「誕生日が同じで、どちらが先におめでとうメールを送るかを競争しました」
 ルディケは未明の3時30分に送って来た。来月24日で58歳になる。

 あんたら、何にこだわって生きてまんの?

 まっちゃんは昨年6月、日本代表のチームマネージャーとして出向した。S東京ベイにはキャリアを積ませたい親心があった。
「僕にはまだ少し早かったように思います」
 年が明けて離任した。クボタはまっちゃんの希望を汲み、大阪への異動を決めた。
「この経験を次に生かします」

 ええぞ、まっちゃん、その意気や!

 有能さは大学時代から定説だった。明治の最後の2年間、主務をした。ともにOB監督の丹羽政彦とは1年、田中澄憲とは3年を過ごした。田中は就任初年、22年ぶりに大学選手権優勝に導く。現在、東京SGのGMだ。

「丹羽さんは八幡山のグラウンド界隈の一般の人たちに誘われて飲みに行ってました。その魅力たるやすごかった。澄憲さんには、人の道を教えられました。早起きをする、掃除をする、大学にきっちり行くなどです」

 おーおー明治、その名ぞわれらが母校♪

 4年時はコロナの影響を受け、大学選手権は4強敗退。57回大会(2020年度)は優勝する天理に15-41だった。同期主将はNO8の箸本龍雅。今は東京SGにいる。

 まっちゃんはレフリーとしてB級も持っている。明大中野からの入部時はレフリーとしてだった。OBでトップのA級に上がる川原佑(たすく)にすすめられた。

 笛を学ぶ中で生涯の伴侶を得る。昨年、池田韻(ひびき)と入籍した。ナショナル・レフリー・スコッド(NRS)のアカデミー生だ。
「今は単身赴任です」
 2週間に1回は新妻の待つ関東に帰る。

 家族のためにもきばっていこやー。

 仕事も結婚もラグビーが絡む。そもそも松下家は楕円球一族だった。祖父の忠男は神戸大の監督。父の武司は横河電機(現・横河武蔵野アトラスターズ)で選手だった。

 まっちゃんは小1で小金井ラグビースクールに入った。中学から明大中野に進む。高3時は控えのSHとして、27年ぶり3回目の冬の全国大会に出場する。96回大会(2016年度)は2回戦で新潟工に14-20で敗れた。

 そんなまっちゃんをクボタは正社員で採用した。他チームからの条件はチーム採用のような感じだった。コミュニケーションを含め、管理や運営ができる人間はそうはいない。

 さすが、「出たー。クボタ」。長澤まさみはん、べっぴんさんやなあ。

 クボタは本社を2か月後の5月に移転する。難波から大阪駅に直結するグラングリーン大阪の「パークタワー」にゆく。まっちゃんにとってはまさに心機一転だ。

 新しい部署では、成績優秀なら海外赴任をさせてもらえる。すでに990が満点のTOEICで800ほどのスコアを持っている。
「もしも、オーストラリアに行かせてもらえたら、ラグビーがありますね」
 建設機械を売ると同時に、選手の発掘もできる。会社とチームの両方の役に立てる。

 まっちゃんには社業と同時にラグビーを守る役目もある。出世しないと正論でも通らない。組織は力のある者の意見が先行される。クボタのラグビーが栄えるということは、また日本のラグビーの繁栄に直結する。それは出世主義ではなく、崇高な使命だ。

 まっちゃん、任したでー。気合と根性でたのんまーす。

 ヒロアキはん、大学と社会人の後輩やから、ウエルカムで一杯飲ませたってやー。

 あっ、まっちゃんは下戸やった…。

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