独自キックで驚き与える。イーグルスの新星・土永旭、名手の帰還に喜び。
サッカーでいうオーバーヘッドキックか。
ジャパンラグビーリーグワン1部の横浜キヤノンイーグルスに所属する土永旭は、時折、独特なフォームでボックスキックを蹴る。
ボックスキックとは、密集の後ろから放つ高い弾道だ。昨今のラグビー界にあっては、前衛の守りが高度化している。いったん全体を混とんとさせながら味方が再獲得から攻め直せるこの手のキックは、重宝される。
身長171センチ、体重76キロでレフティーの土永は、その足技の使い手だ。京産大時代から、球筋の正確さが買われていた。
さらに新天地では、蹴り方そのものをアップデートした。
蹴る方角を見定めて足を動かす通常の型に加え、進行方向と逆側を見て足を振るトリッキーな手法も用いる。楕円球を背中越しに通す。リコーブラックラムズ東京との第8節の前半36分頃に繰り出した。
チームメイトにはファフ・デクラークがいる。同じ左利きのSHで南アフリカ代表60キャップの34歳だ。
クラブ期待の23歳は、世界的な実力者の蹴り方を見て学ぶ。目の前にいる相手の重圧を受けないための体勢について試行錯誤するうち、独創的かもしれぬ型を独自に編み出した。
「ファフの蹴り方を見て、自分なりにどうやったら蹴りやすいかを試行錯誤。後ろに下がる分ほとんどプレッシャーを感じず、(一般的なターゲットとされる)ライン際5メートルに(ボールを)落とせます」
本人のなかでは理にかなっている。視線をボールの飛ぶ方向と合わせずして精度が保てるのは、球に足を当てる流れに再現性があるからだ。
「感覚です。ボールを(手元から足元へ)落とす位置と、足の振り上げの角度がうまくいけば、蹴りたい方向に蹴られる。ほぼミスることはなくという感じです」
京産大を経て実質1年目の今季は、第2節から直近の第8節まで続けて先発。現在チームは1勝と望む結果を残してはいないものの、さばくテンポといった、かねての持ち味を随所に披露している。
遡って昨秋、日本代表の欧州遠征に参加した。テストマッチデビューこそ叶わなかったものの、怪我人続出のチームにあってハードワーク。その蓄積を、いま活かしている。
「(故障者の穴埋めのため)自分のポジションで(トレーニングが)できない時もあったのですけど、それも活きていると勝手に思っています。『(SH以外の選手が)こういうタイミングで(パスが)欲しい』といったようなことが見えた。いざSHに戻ると『いい経験になった』と思えますね」
話をしたのは2月17日。活動していた都内の練習場に変化があった。怪我で一時帰国していたデクラークが、チームに再合流していた。
目下別メニュー調整中ながら、名手の存在に土永は頼もしさを覚えた。
実戦形式セッションのさなか、仲間のWTBと狭い区画をえぐるプレーをした。タッチラインの外でその様子を眺めていたデクラークから、もっと対面へ鋭くチャレンジするよう助言された。本当の熟練者の実地訓練を受けられるのは幸せだ。
「これからライバルにもなる。盗めるものを盗んで、真っ向勝負で戦いたいです。ただ、戻ってきたことで安心感もあります。こういう機会は当たり前のことじゃない。学んでどんどん成長したいです」
2日には今年の日本代表候補55名が発表された。このラインナップにも名を連ねた土永は、フランスを代表するアントワーヌ・デュポンのような「相手から嫌がられる、敵にいると面倒くさい選手」を理想像とする。訓練と実戦で進歩する。



