シャトルズで示す「天理イズム」。山口知貴が1部昇格へ説く「淡々」のススメ。
スクラムをよく押した。それでも最前列の左PRで組んだ山口知貴は、自分の手柄を誇らなかった。
同じ豊田自動織機シャトルズ愛知の右PRで今季初先発を果たした4学年下の後輩、高橋信之がよかったのだという。
「いい感じでした。高橋は練習中もよく頑張っていた。僕というより、前3人のヒットがよかったです。3人(の息)が、合っていたなと」
1月31日、東京・上柚木公園陸上競技場での国内リーグワン2部・第5節に先発した。後半22分までフィールドに立ち、日野レッドドルフィンズを62-12で下しチーム3勝目を挙げた。
実は週の前半は、体調不良で練習を休んでいた。本番2日前の戦列復帰ながら持ち場でアピールし、軽やかなフットワークも披露していた。
そのプロセスを振り返る際も、この日初先発したSOのノア・ロレシオに感謝した。
「体力的にどうかと思ったのですが、ノアのいいゲームコントロールでそこまで疲れる展開にならず、スクラム、ブレイクダウン(接点)、ボールキャリーで自分の仕事ができました」
身長174センチ、体重106キロの31歳。競技と出会ったのは近大附中2年時だ。もともと親しんでいたバスケットボールで相手とぶつかってはファウルをもらい、面白くないからと部活を辞めたら動かなくなり、「だらだら過ごして、あ、これはよくないな」と思案し、この競技と出会った。
このプロセスを話すうち、思い出したように笑う。
「常翔学園から大体大に行った中西映都というCTBが中学で同級生でした。そいつに誘われたことにしろと言われています! あいつのなかでは『自分が誘った』ということなので」
進んだ先は天理高。猛練習で鳴らした。体力強化のため、階段を走って登るトレーニングが課された。いまの所属先が強化合宿などで似たメニューを実施したら、「天理(出身)のメンバーが上位」とのことだ。
中学時代のポジションはプッター。ブラインドサイドWTBとFWの間を取ったような位置だ。高校では元ニュージーランド代表のマア・ノヌのような、破壊力のあるCTBになりたかった。つまり目指すは「天理のマア・ノヌ」。しかし…。
「天理高は小さい(小柄で細身の選手が多い)。身体のでかかった僕は、必然的にPRに回されました」
天理大に内部進学し、‛17年からの3シーズンは花園近鉄ライナーズ(現名称)でプレー。その後シャトルズに移ったのは、鍛錬で選手を磨く文化があると感じたからだ。
「ハードなところに身を置いて成長できないかなと考え、移籍しました。天理イズム、あるかもしれないですね。鍛えて、鍛えて、経験して強くなる場所が自分に合っているなと」
いまは1部昇格を目指す。2部の上位陣はそれぞれ強化を進める。古巣のライナーズは、南アフリカ代表SOのマニー・リボックを加入させたばかりだ。
このコンペティションを制して1部との入替戦へ進むには、「浮き沈みをしない安定力」が必要だと山口は考える。
ここまで4勝のライナーズは、自分たちが快勝したドルフィンズに47―34と勝利も接戦だった。かたやシャトルズも、前節では昨季8チーム中最下位の日本製鉄釜石シーウェイブスに52―54と惜敗している。
ここから見え隠れする好不調の波をなくせば、混戦を抜け出せるとベテランは読む。ここで鍵になるのは、精神的な落ち着きだと続ける。
「勝っても浮足立たない…。負けても変に落ちすぎない…。切り替えて、やらなあかんことを淡々とやっていくことが大事かなと」
地に足のついたグループを作れたら最高だ。



