接点での意識変わった。秋の代表戦全て先発の小林賢太、サンゴリアスでの起用法は?
戦いきった。小林賢太はこの秋、今年6月に初選出されたラグビー日本代表の国内外キャンペーンでテストマッチ(代表戦)全5戦に先発した。
オーストラリア代表、南アフリカ代表、アイルランド代表、ウェールズ代表、ジョージア代表と、戦前の世界ランクで上回っていた国々と激突した。身長181センチ、体重115キロの26歳は、最前列の左PRで感じた皮膚感覚を明かす。
「(当初は)この高いレベルでプレーすること自体が初めての経験で、実際にどうなるんだろうという思いもありながら、自信をつける可能性もあると感じていました。(振り返れば)スクラムでも、ブレイクダウンでも、リーグワンでは受けられないプレッシャーがありました」
話をしたのは12月4日。11月下旬に日本へ戻ってから約1週間のオフを経て、所属する東京サントリーサンゴリアスの活動へ合流して間もなかった。
13日に東京・秩父宮ラグビー場で初戦を迎える国内リーグワン1部においても学びを活かし、「パフォーマンスを落とさずプレーし続けられたら」。特に伸ばせたのは接点での動きだ。
8~9月のパシフィック・ネーションズカップで北米大陸勢、環太平洋諸国と対峙したが、秋にならば肉弾戦での重圧が段違いに感じた。向こうのスティールを引きはがす動きに、より磨きをかけるべきだとわかった。
「リーグワンでは相手がジャッカル(スティール)に入りそうなタイミングで(走者の援護に)入っても、ぎりぎりクリーンアウトしきれることが多かったです。ただ、(上位国には)少しでも隙を見せるとジャッカルされる。自分がボールキャリアではない時のブレイクダウンでのスピードは、意識的に変えました」
ナショナルチームは23年のフランス大会で8強入りを逃し、翌年からスタッフとスコッドを大きく入れ替えていまに至る。小林もその流れで選出されたひとりだ。
ターゲットは2027年のワールドカップオーストラリア大会。史上初の4強入りを目指す。大台達成へ、今回は強豪国とのバトルの合間に高強度のトレーニングを重ねていた。各自に負荷がかかり、コンディション都合による離脱者が相次いだ。
渦中、小林は、ずっと最前線に立った。
「先を見過ぎると目の前の仕事に集中できなくなって、隙みたいものができ、怪我をしてしまうのでは…という感覚がありました。まず1試合、1試合にフォーカスし、(ゲームごとの)振り返りはしながら身体は次に向けて準備しよう…と心がけました。リーグワンのシーズンに比べたら、ストレッチはプラスで(多めに)やっていた気がします」
タフなロードにあっては、周りの支援にも助けられたと強調する。
「ツアー途中(1勝4敗と)結果が伴わないこともあって精神的、身体的にきついところもありました。ただ、チームが(週の)中日に現地のセラピストの方々を呼んでいただいて、1人30分くらいマッサージを。サウナにも行くよう促してもらいました。また、練習がきついのは全員が理解していたので、各々、ケアグッズも持っていた」
帰国後は、自軍のS&Cコーチとの会話で次の国内ステージへ進みやすくなった。
「ツアーに行く前は、5連戦の後にリーグワンのシーズンに入ることに不安なところがありました。ただ、サンゴリアスのS&Cの方と相談したら『ひとりのラグビー選手として5週間のブロック(代表戦)、1週間のオフ、3週間(リーグワンの序盤戦)というブロックがあると捉え、コンディションを合わせていけば』と言われ、腑に落ちました。いま、新しいブロックが始まった感じです」
この午後は、サンゴリアスで就任2年目の小野晃征ヘッドコーチも応じた。
前年度は12チーム中6位に終わった。指揮官がプレーヤーだった旧トップリーグ時代の2017年度を最後に、日本一から遠ざかっている。「(初年度と)一緒のことは絶対に繰り返したくない」と攻撃戦術へ深く関わり、行動規範を再確認する。
最長で6月までのシーズンを戦ううえでは、戻ってきたばかりの小林ら代表勢のマネージメントも不可欠か。
小野はかつて、現日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ率いるジャパンにSOとして参加していた。
約9年ぶりに発足して2季目のジョーンズ体制で頑張る面々を、これからのレギュラーシーズンでどれくらい起用し、どれくらい休ませるか。小野は冗談を交えつつ見解を明かした。
「自分もエディーさんのヨーロッパ遠征も経験しているし、その後にほぼほぼフルシーズン(当時のトップリーグのゲームに)出たことがあるので…それをベースに!…でも、選手には怪我をさせたくない。グラウンドに立ったらパフォーマンスを出して欲しい。毎週どういう試合になるか、どういう疲労があるか、どんなコンディションになるかはわからないです。また周りの選手のパフォーマンス(との兼ね合い)もあると思う。日本代表だからというより、その1人の選手がその週にパフォーマンスを出せるか、出せないか、逆に違う選手のほうがいいかを含め(検討して)決めていきたいです」
13日はリコーブラックラムズ東京に挑み、20日には東京・味の素スタジアムで今年度最初のホストゲームをトヨタヴェルブリッツとおこなう。



