慶大の新人司令塔・小林祐貴 早慶戦で気づいた「細かいところ」の重要性
前半で28点ものビハインドを背負った。それでも勝機を見出す。
「ボールを持ったらいいことがあると、やられている時も皆で話していました。仕掛けよう、と」
11月23日、東京・秩父宮ラグビー場。慶大のルーキーである小林祐貴が「早慶戦」こと関東大学対抗戦Aの早大戦に先発。司令塔のSOを担った。
キックオフ早々のミスを皮切りに向こうの波状攻撃を食らう時間が増え、7-35とリードされてハーフタイムを迎えた。
「早慶戦に出ることは4年間の目標で、それが慶大に入った理由のひとつでもありました。ただ、始まれば他の対抗戦の試合と変わらない。自分のなかで、特別にし過ぎたところもあります」
もっともその間も、高い弾道の競り合いでは対抗していた。SHの橋本弾介による接点周りでの突破、ゴールラインドロップアウトからのカウンターでチャンスを作ってはいた。
後半は早大のエラーもあり複数のピンチをしのぐのに成功し、同20分には向こうの反則禍に乗じて14-35と差を詰めた。
続く20分以降は、ハーフ線付近で突破口を探る。球を左右に揺り動かし、前進してはやや後退。ここで機転を利かせたのが小林である。
右中間のラックからパスをもらい、左側へ展開すると見せかけて逆側の穴場へ蹴る。22メートル線を通過させ、タッチラインの外へ出す。起点と立ち位置が自陣にあったため、「50・22ルール」に伴い、好位置で自軍のラインアウトで再開できた。
準備の賜物だった。
もともと対面の服部亮太がそのように蹴ってくると分析。守る際はその対策を施したうえで、自分が攻める際に同じことをしようと考えたのだ。
結局このシーンでは得点できなかったが、27分には味方FBの田村優太郎のインターセプトなどで21-35とじりじりと接近。その後もノーサイドを迎えるまで、現状打破の糸口を探っていた。
自ら放ったショートパントを掴んだ相手へタックルしたり、捕球と同時にまっすぐ前にステップしながら放るパスで味方を走らせたり。
ノーサイド。21-49。向こうが対抗戦2連覇へ近づく一方、自軍は8チーム中5位となった。試合後の取材エリアでは、スポーツ推薦制度を持たない古豪が俊英揃いの上位校を倒すための要素について聞かれた。
小差が大差に繋がった印象からか、こう応じた。
「細かいところを突き詰めないと。きょうはラインブレイクがトライにならないことがありました。勝つ土俵までは来ているので、もっと(ディテールに)こだわらないと」
身長168センチ、体重75キロと小柄も、慶応高3年時には冬の全国大会に出られずとも高校日本代表となっている。戦力確保でディスアドバンテージがあるのだとしても、丁寧さを突き詰めればしぶとく白星を取れると誓う。




