【サクラセブンズ PICK UP PLAYERS】目の前の1試合を。堤ほの花[日体大女子]
セブンズ代表デビューは日体大2年時。まだ19歳だった。以来、35キャップを重ね、昨季のサクラセブンズでは最多キャッパーだった。
堤ほの花が、ワールドセブンズシリーズでの過去最高位を更新し続けた昨年を笑顔で振り返る。
「いままでの辛さが吹き飛ぶぐらい嬉しかったですし、今後の女子ラグビーに繋がる良いきっかけになったと思います」
選手の能力が飛躍的に向上したわけでも、戦い方や日々のトレーニングが大きく変わったわけでもない。
好調のわけを「いままでの積み重ね」と言った。これまでともに汗を流してきた仲間の顔も浮かんだ。
個人のパフォーマンスも「納得のいく年だった」という。
「もともとの強みであるディフェンスで力を発揮できたし、いままで不安を感じていたアタックでも良いチャレンジができました」
国内ではエッジで相手を置き去りにするランで魅了してきた。太陽生命セブンズシリーズではデビュー戦(高校3年時)で1試合5本を含む計13トライを記録。2年前には通算100トライの大台を史上初めて突破した。
しかし、海外選手を相手に抜き去るのは簡単ではなかった。
「世界には足の速い選手がたくさんいて、通用しない場面も多いです。昨年はそこに囚われず、自分のできる役割をまっとうしようと吹っ切れました」
本番では披露できなかったが、練習では裏へのキックにもトライしていた。28歳、まだまだ向上心に燃えている。
佐賀県出身。福大出身の父・明英さんが作った、嬉野ラグビースクールに双子の弟・英登(現狭山RG)と3歳から通った。
当時から俊足で鳴らした。中学では美術部志望も父に断られ、陸上部に入部。100メートル走と走り幅跳びを専門に、県大会で決勝に進むほど走力を磨いた。
高校は佐賀工に入学し、内田葵とともに同部初の女子部員となった(試合には福岡レディースで出場)。男子と同じメニューをこなし、タックルが強みになった。
「小学校高学年から、アタックよりもタックルの方が好きでした。身長(154センチ)は高くないので、大きい相手を倒せたらスカッとして」
オリンピックには東京から2大会出場した。東京五輪後は1年休養したが、パリ五輪を終えた翌年の昨季はサクラの輪に加わった。
「ワールドシリーズでも、世界と戦えるようになってきた手応えもあったし、面白いと思う気持ちも増していました。ここで辞めるのはもったいない。選んでいただけるのであれば、続けようと」
ただ4年間のサイクルを二度、体感しているからこそ、次の五輪を目指すと簡単には言わない。
「あのキツさ、辛さを知っていますし、年齢も重ねているので、やれるところまでやりたい。いま良い形でラグビーと向き合えているし、楽しめているので、目の前の1試合、1試合を最後だと思って頑張ります」
噛み締めながら進んだ先に、2028年がある。
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン12月号(10月25日発売)の「セブンズ女子日本代表特集」を再編集し掲載。掲載情報は10月15日時点。



