国内 2025.10.15

【ラグリパ×リーグワン共同企画】20歳で臨む新シーズンは“2刀流”で。2つのポジションでつかんだ二度のPOM。

【ラグリパ×リーグワン共同企画】20歳で臨む新シーズンは“2刀流”で。2つのポジションでつかんだ二度のPOM。
貴重な出場機会で強烈なアピールを見せた高島來亜(写真提供:豊田自動織機シャトルズ愛知)

「素直にうれしいですが、出番としては20分だけだったので、チームのメンバーみんなに感謝したいです」。晴れやかな表情でそう語ってくれたのは、豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)の高島來亜だ。

 今季から始まったリーグワンライジング。S愛知は10月11日、ディビジョン1に所属する三重ホンダヒートを相手に、35対29の逆転勝利を収めた。高島は後半24分からウイングで出場。同32分に貴重なトライを奪っただけでなく、逆転トライにつながるランでも貢献。9月27日に行われた静岡ブルーレヴズ(以下、静岡BR)戦に続き、2試合連続でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出された。

 東海大学付属大阪仰星高校から一昨季に加入した20歳。いきなり全国のラグビーファンにその名を轟かせたのは、その年の開幕戦だった。2023年12月10日、NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24ディビジョン2の日本製鉄釜石シーウェイブス戦で、ジャパンラグビー トップリーグ時代を含めた史上最年少出場記録を18歳8カ月と17日に更新。“高卒即出場”は日本ラグビー界に少なくないインパクトを与え、順調なスタートを切ったように思えた。

 ただ、2年目となった昨季の出場機会はなし。「思うように出場機会が得られなかった」と高島も回想する。U20日本代表の活動と並行しながら、自身の武器にさらなる磨きをかけるため、模索する日々が続いた。転機となったのは、昨季終了後のこと。首脳陣とのミーティングの場で、来季はウイングとしてもチャレンジしてほしい旨を伝えられた。

 S愛知ではスクラムハーフが主戦場だったが、U20日本代表では主にウイングでプレーをしていた。U20の試合ではウイングとしてトライを記録するなど、ポテンシャルはどちらのポジションでも高い。184cmとスクラムハーフとしては長身の部類で、フィットネスにも自信があった中で、高島は“二刀流”挑戦を決意した。今季から加わった三井大祐アシスタントコーチ兼通訳から「南アフリカのスクラムハーフはウイングもできるぞ」とアドバイスをもらい、両ポジションの名手を国内外問わず見て研究を続けたという。

「ウイングだとチームメートのチャンス・ペニの動きをよく見ています。ディフェンスの上げ方やランのコース取りは参考になります。スクラムハーフだと福田健太さん(東京サントリーサンゴリアス)ですね。アグレッシブなスタイルを取り入れたいです」

 高島が度々口にしたのは「試合に出る」という強い覚悟だ。「9番のジャージーを着たいのはもちろんですけど、ウイングもできたら試合に出場できるチャンスが広がりますし、どのポジションでプレーしてもチームのためにやり続けたいです」。練習では、スクラムハーフとしても、ウイングとしてもメニューをこなす。まったく毛色の違う2ポジションでも、自分らしく取り組んで見せる。実際、第1週の静岡BR戦では、前半はスクラムハーフ、後半はウイングとしてプレーした。

「静岡BR戦で自分たちの立ち位置がはっきり分かりました。チームとして、とにかくスタンダードを高めようという話し合いをして、基礎の部分から徹底してやることをこの数週間は意識して取り組みました」。その成果が表れたか、自身のトライシーンでは鋭い読みで相手のパスがこぼれたところを奪い、そのままトライにつなげた。

「どの試合でもスイッチが全開で入っているので、この大会に特別な思いで臨んでいるわけではないですけど、少ない機会をモノにするために、一瞬一瞬を大事にしてやっています」。今季の高島の目標はリーグ戦出場だ。チームを司るスクラムハーフでも、決定的な仕事を果たすウイングでもいい。チームの勝利に貢献するため、また自身の新境地を開拓するため、高島來亜は両刀を研ぎ澄ませていく。

(齋藤弦)

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