【ラグリパ×リーグワン共同企画】根っからの“花園っ子”。新たなキャプテンの挑戦。

今季から新たに背負う肩書きが花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)の上山黎哉の目つきを一際、鋭くしていた。
10月11日に行われたレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)とのジャパンラグビー リーグワン ライジング2025第3週は、上山にとって“共同キャプテン”の一人として初めてゲームキャプテンを務めた一戦だった。
8日に発表されたばかりの共同キャプテンは上山と新加入のピーター・ウマガ=ジェンセンが務める。太田春樹監督から打診を受けた際の心境を「ちょっと驚いた部分はありますね、正直」と上山は本音を明かす。
無理もない話である。大阪桐蔭高校時代には高校日本代表にも選出され、帝京大学ラグビー部では4年生の時に大学日本一も経験。高校時代に主将、大学時代には副将も務めるなど「小さいときからずっとリーダーグループにいました」と自身の気質を語る上山だが、2022年に入団した花園Lでは不動のレギュラーという立ち位置は確立し切れていない。
昨シーズンの出場数は5試合にとどまった上山に、太田監督が白羽の矢を立てたのには明確かつ、納得の理由が存在した。
ディビジョン2優勝を至上命令とする今季の花園Lが掲げるチームスローガンは『TNT』。『才能はいらない。必要なのは姿勢と努力』を意味する『Takes No Talent』と『Team No Tameni(チームのために)』を形容するが、そんなスローガンを体現しうる人材が上山だったと太田監督は明かす。
「上山もジェンセンも、取り組む姿勢やボールを持っていない動きを大事にしている選手なのでお手本になってくれます」(太田監督)
メンタル面ではすでに申し分のない上山とはいえ、プレーヤーとしては未だ成長過程の真っ只中に身を置いている。
フランカーからフッカーにコンバートを志願したのは一昨年のこと。「フッカーの専門的なスキルを自分の性格的にもコツコツと積み上げていける自信があったので、思い切った決断をしました。将来的にラグビー選手としてよりチームに貢献できることを考えたんです」。
61対26でRH大阪に快勝した一戦は前半のみの出場にとどまったが、「12対7に追い上げられたときに、昨季までならそこから崩れてしまうことが多かった。今日はそこで修正点として、具体的に言うと規律を明確にしました。そこで悪い流れを断ち切れたのはポジティブなところです」と胸を張った。
フッカーのポジションは松田一真や金子惠一、福井翔と争うことになる。その中で、上山にしかない強みは根っからの“花園愛”に満ちていることである。
東大阪市花園ラグビー場から最も近い小学校で学び、小学生時代には花園Lのジャージーを着て、エスコートキッズも務めたこともある上山。地域貢献の一環として小学生の登校を見守る『愛ガード運動』を務める選手たちも見続けてきた上山だけに、花園Lのジャージーを着る重みは誰よりも知っていると言えるだろう。
共同キャプテンの打診を受けた時、真っ先に浮かんだ思いを聞くと「会社とスポンサー様、地域の人に誇りに思ってもらえるような、強いチームにすることはもちろんですけど、プレー以外の部分でも誇りに思ってもらえるように思ってもらいたい。打診を受けたときにより一層、そう思いましたね」。
出番の有無にかかわらず、その背中でチームを引っ張る上山だが、共同キャプテンを託されたことであらためて決意したのは、選手としてのさらなる成長である。
一昨季までは野中翔平が、昨シーズンはパトリック・タファが主力とキャプテンという二足の草鞋を履き続けてきた。「僕自身、キャプテンはグラウンドに立たないといけないと思っていますが、キャプテンだから試合に出られるわけでもない。プレシーズンで信頼を勝ち取りたいと思っています」と上山は秘めた決意を口にした。
根っからの“花園っ子“でもある新キャプテンの挑戦は、始まったばかりだ。
(下薗昌記)