【ラグリパWest】関西大学ラグビー雑感。第3週第1日

関西の大学ラグビーが中盤に入ってきた。10月5日には2試合があった。関大×近大、天理大×同大である。この4チームはすべてリーグ3戦目になる。
関大は近大を30-27と3点差で降し、今季初勝利を挙げた。主将のFL奥平一磨呂と副将のSO﨑田士人(らいと)がそろって初先発した。その軸の2人がグラウンドにいる安心感があったのだろ。
「勝ててうれしいです」
奥平は記者会見で破顔した。
この試合では、ペナルティーのアドバンテージの使い方が気になった。それを得た関大はキックパスを放った。トライを狙いに行ったのではなく、反則を具現化させる蹴りに見えた。これは何も関大に限ったことではない。散見される行為である。
アドバンテージはトライを確定するものではない。ペナルティーを確定するものだ。川村幸治は話してくれたことがある。
「アドバンテージをもらっても粘り強く、トライを狙いにいくべきだ。ペナルティーをもらっても、次にトライを獲れる保証はない」
川村は高校日本代表の監督をつとめ、指導をした布施工(現布施工科・東大阪みらい工科)を公立ながら3回、全国大会に導いた。
川村は攻め続ける大切さを言葉にした。相手にペナルティーを犯させたのだから、勢いはこちらにある。その勢いを切らさないようにしたい。笛が吹かれた段階で試合は途切れる。いい流れは止まってしまう。
一方の近大は春季トーナメント3位決定戦で64-19と大勝した関大に敗れた。この試合、西柊太郎が欠場した。主にCTBをこなすチームの司令塔でもある。西は東福岡の高3時に高校日本代表に選ばれている。
近大の総監督、中島茂は理由を話す。
「8月の菅平合宿の試合で、タックルに行った時にあごを骨折しました」
今季のリーグ戦出場は0だ。
「西はリーグワンのチームからも、よく前が見えている、と誘ってもらっています」
大黒柱が抜けた影響は大きい。ここまで3戦で1勝2敗と負けが先行している。
前8人の戦いで軸になっていた両FLの卒業も痛い。主将の中村志(こころ)とFWリーダーの岩本圭伸。中村はJR西日本、岩本はマツダに進み、競技を続けている。
この2人がいた昨年、近大はリーグ戦3位に入った。3年ぶり11回目の大学選手権に出場する。61回大会は8強戦で準優勝する早大に10-53で敗れるも、3回戦では福岡工大に74-12と大勝した。
ラグビーに限らず、大学スポーツは難しい。4年生が抜け、1年生が入って来る。入れ替わる。中島は78歳。近大運営のトップにあたる理事を先ごろ退任した。監督就任は1971年(昭和46)。母校の指導歴は55年目に入るが、その中島でも道理には抗えない。
近大は関大にトライを獲られたあとのゴールキックで、3年生SHの渡邊晴斗がひとりでチャージに行った。相手が猛スピードで走ってくるのは嫌なもの。前半、3トライを失ったが、渡邊は2本のゴールキックを失敗させた形を作る。4点を防いだ。
このチャージがなければ点差は7に広がっていた。ペナルティーゴールでは追いつけない。この2点を失うか、得させるかは接戦では効いてくる。
もちろん、トライを獲られたあとで、円陣を組み、反省点を洗い出し、次につなげることも大切だ。しかし、焦眉の急は目先の2点を加えさせないことである。円陣ではリーダーが端的に話せばよい。
円陣ということで書けば、天理大のある失トライ後のそれは長かった。58-18と同大を大差で降した。暫定首位を守る。このスコアから見れば、円陣が長かろうが、短かろうが、大差はない、と考えるかもしれない。
ただ、同大は切れることなく、次のトライを狙っていた。主将の大島泰真(たいしん)はすぐにゴールキックを蹴り、チームはキックオフの陣形を作っていた。
ラグビーは勝敗に関係なく、相手を思いやるスポーツである。お互い、肉体をぶつけ合う。大けがもある。だからこそ、相手を尊重する。そこにノーサイドの精神が宿る。
ある一文がある。ドイツの哲学者であるカール・ダイムの詩の中に出てくる。
<堂々と勝ち、堂々と負けよ>
これは、関西学大のアメリカンフットボール部のモットーでもある。学生日本一を決める甲子園ボウルの優勝は34回、関西学生リーグでの頂点は61回。同大ラグビー部の関西制覇48回をしのぐ。
その同大は1勝2敗になった。2年前は最下位8位で入替戦出場、昨年は入替戦こそ回避したが、6位に終わった。
その復活を託され、今年から監督にOBの永山宜泉(ぎせん)が就任した。
「天理の接点がかなり強くやられました。それでも、真っ向勝負を貫いてくれました」
そして、続けた。
「ただ、相手には芯の強さがあり、すぐには追いつけません」
心構えはできている。あとは学生たち自らが自分たちを追い込み、鍛えることである。
この日、2試合のあった天理親里ラグビー場には大久保直弥と永山淳の姿があった。U20日本代表のヘッドコーチ(監督)とアシスタントコーチだ。目的は選手の視察である。2人は試合前、天理高を訪れている。東京を早朝に出発して、精力的に動いた。
試合は名のある人たちも見ている。勝敗にかかわらず、1試合1試合を悔いなきように大切にプレーしたい。19歳の1年、22歳の1年は人生一度きりである。