【女子W杯】フランスが準々決勝のメンバーを発表。果敢な仕掛けでアイルランド戦に挑む

ワールドカップ開幕2週間前のイングランドとの準備試合で大敗し(6-40)、不安を抱えたスタートだったが、女子フランス代表は第1戦でスクラムとディフェンスを立て直し、アタックのシステムはまだ機能しなかったものの、イタリアに24-0で完封勝ちを収めた。
2戦目は14トライを挙げブラジルに84-5で勝利。3戦目も9トライを決めて57-10で南アフリカを破り、徐々に自分たちのラグビーを取り戻しながら、プール戦を1位通過で準々決勝進出を決めた。
1戦目から何が変わったのか?
SHポリーヌ・ブルドン=サンシュス(29歳)が復帰したことで、レ・ブルーのアタックが息を吹き返したのだ。
やはり彼女が必要だった。ブルドン=サンシュスは、フランス国内女子リーグ「エリート1」の決勝戦に敗れた後、レフリングを批判する発言をし、2試合出場停止処分を受けていた。現代表の最多キャップ保持者で(68キャップ)、このチームを指揮する小さなボスだ(165cm、57kg)。
ブルドン=サンシュスがチームに進むべき道を示す。早い球出しでテンポを作る。自らラック際に切り込む。ペナルティからでもクイックで攻める。と思えば30mものロングパスを放る。敵も翻弄される。
彼女が入ると、ボールが動く、人も動く。187cm、98kgのLOマドゥッス・ファル=ラクロ(27歳)が敵のディフェンスに突撃。さらに前進し続け、LOマナエ・フェレウ(25歳)、NO8シャルロット・エスクデロと、パワフルなボールキャリアーに細かいパスを繋いで、どんどん前に出る。ディフェンスが中央に寄ってくる。外側にスペースが生まれる。
ブルドン=サンシュスが、先週に続いてこの試合でもPOMに選ばれた。チームメイトとも連携が取れていて、3ヶ月以上実戦から離れていたとは思えないパフォーマンスだった。
この試合でフランスは、19のオフロードパスを出している。捕まっても、ボールは止めない。生かし続ける。フランスらしいアタックが帰ってきた。
共同キャプテンのマナエ・フェレウは「こんなにプレーを楽しめたのは久しぶり」と試合後のインタビューに笑顔で応じた。
強いスクラムも健在だ。自分たちよりも重い南アフリカのパックからペナルティを奪った。ディフェンスも強固だった。NO8エスクデロは28のタックルを決めている。
今年4月のシックスネーションズ期間中、フランスがパリ郊外のマルクッシで合宿を行なっていた時に、ヨーロッパ遠征に来ていた南アフリカとゲーム形式の練習をした。南アフリカは3年前のW杯で対戦した時から(40-5でフランスの勝利)、フィジカルだけではなく、戦術的、そして技術的に大きく進化していた。事実、南アフリカはイタリアを破って初の準々決勝に進む。
ガエル・ミニョ共同HCは「選手たちに南アフリカが強くなっていることを見せておきたかった」と語っている。
準々決勝で対戦するアイルランドも南アフリカと同様に女子選手のプロ化に着手し、強化の成果が見られる。シックスネーションズで毎年対戦し、フランスが連勝しているが、2023年は53-3、2024年は38-7、今年は27-15と、年々点差が縮まっている。
ミニョ共同HCは、次戦に向けて「ディティールを修正しなければならない」と語り、ディフェンスの中に入っての短いパスのミスで、全てのチャンスを得点に繋げられていない点を指摘している。
アイルランド戦は雨が予想されており、ロングキックと正確なゴールキックが武器のFBモルガンヌ・ブルジョワ(22歳)がスターティングに入った。
左WTBにはイタリア戦のあと出場がなかったケリー・アルベー(20歳)が戻ってくる。アルベーはスプリントで31km/hを計測されている。右にはXファクターのグリゼが位置する。
先週はWTBに入っていた共同キャプテンのマリーヌ・メナジェ(29歳)がCTBにスライドし、初戦の配置に戻った。また、イタリア戦で負傷したNO8テアニ・フェレウ(22歳)がリザーブで戦列復帰する。
この試合のフランス代表の平均年齢は25.9歳、平均キャップ数は30。円陣での掛け声は「果敢に挑む者が勝つ!」。リスクを恐れず大胆に仕掛ける、彼女たちの攻撃的なラグビーやマインドをよく表している。
決勝トーナメントでそれを実現するためには、パスの精度、タイミング、瞬時の状況判断力をさらにあげる必要がある。そして全ての土台となっているのが強いセットピースとディフェンスだ。これらの完成度を上げていくことが、今後の鍵となるだろう。
フランス代表チーム準々決勝アイルランド戦メンバー