日本代表 2025.08.07

サクラフィフティーン松田凜日、怪我を治して打倒ニュージーランド代表へ。

[ 向 風見也 ]
サクラフィフティーン松田凜日、怪我を治して打倒ニュージーランド代表へ。
7月26日、スペイン戦に出場した松田凜日(撮影:福島宏治)

 松田凜日は、女子15人制ラグビー日本代表として自身2度目となるワールドカップスコッド入りを果たしている。ただ、試合に出られるかどうかは不透明だ。

 メンバー発表前日にあたる7月26日、東京・秩父宮ラグビー場での国内最後のテストマッチで故障。味方のチップキックを追いかけるさなかに対するスペイン代表の選手に背後からタックルされ、足首を痛めたという。前半19分に退いた。

 試合は30-19で制したが、屈指のランナーの離脱は痛手に映った。翌日の壮行会に先立ち、ヘッドコーチのレスリー・マッケンジーは言った。

「詳細はわかりません。怪我の程度には不明点が多い。時系列的にどうなるかについて、お答えできる材料はありません」

 まもなく松田本人も公の場に出たが、松葉杖をついていた。他の選手が立って集合写真を撮る際も、座っていた。

 その後の取材機会では、痛んだ瞬間を振り返りながらこの先を展望する。

「『続行できるかな』と思ったけど、(地面に)ついた時に結構、痛みがあったので、ここで無理して悪化するよりは…と判断して抜けました。1日、経ったいまも少し痛みはある。まだ病院には行っていませんが、今後はそれ(診断)次第です」

 状況によっては出場が危ぶまれそうななかでも、堂々としていた。
 
「もうやれることをやるしかない。やるだけのことをやって、だめだったら仕方がない。私以外にも本当に頼もしい仲間がいっぱいいて、私が出られなくても日本は強い。そんななか、できる限りのことはやり尽くしたい。もし出られたら、ラン、ボールキャリーのところを全面に出してチームに貢献したいです」
 
 通称サクラフィフティーンにとっての大会初戦は8月24日だ。

 予選プールではスペイン代表と再戦するが、それに先立って進境著しいアイルランド代表、優勝候補のニュージーランド代表と順にぶつかる。

 8強入りへはこのグループで2位以内に入るのが必須。今年はミッションクリアのために、複数回の長期合宿を実施した。

 対戦相手のスタイルはもちろん、出場しそうな選手の特徴まで子細にチェックした。分析内容と自分たちの強みとを照らし合わせ、勝ち筋を設定。その詳細を猛練習で落とし込んだ。 

 松田は「ワールドカップに向けてチームの連携、戦術を深められました。大会に向けて(詳細を)詰められている。アイルランド代表、ニュージーランド代表とも試合をするのが楽しみです」。試合で悔いを残さないために、準備に悔いを残したくない。

 特に強調するのは、「ニュージーランド代表に勝つためのトレーニング」への手応えだ。「戦術的なことは言えない」とするが、向こうの攻めやすい混沌状態を作らないための策を共有しているようだ。

「向こうのランにどう立ち向かって行けるかが肝になってくる。ディフェンスを個人としても、組織としてもブラッシュアップさせたいです」

 ニュージーランド代表と言えば、男子の日本代表だった父の努さんがワールドカップで対戦したことがある。1995年の南アフリカ大会で激突し、17-145と歴史的大敗を喫した。

 その折、松田は生まれおらず、家族からこの一戦について詳しく聞くことはない。ただ、史実としては知っていて、それに共感を覚える機会もあった。

 前回のニュージーランド大会前に同国とぶつかり、12-95で屈した。プレー中、あの日の努の心境が想像できたという。

「早く試合が終わってくれという気持ちでした。圧倒的実力差に絶望感すら感じてしまう気持ちだったので」

 その頃といまとで、自分は違う存在になれたと松田は言い切れる。

 ニュージーランドでのワールドカップ、7人制日本代表として挑んだ2024年のオリンピックパリ大会を経て、「(今回は)リラックスした状態で臨めそう。大舞台を経験した数もあり、プレッシャーを受けづらくなり、慣れてきた感じがします」。怪我を治して難敵に挑めたら最高だ。

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