国内 2025.07.07
【連載】プロクラブのすすめ㉖ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] ホストスタジアムがある場所を、クラブ名に入れるべき。

【連載】プロクラブのすすめ㉖ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] ホストスタジアムがある場所を、クラブ名に入れるべき。

[ 明石尚之 ]

――話は変わりますが、フィジー代表のスター、セミ・ラドラドラ(CTB)を獲得しました。

 来季に向けてはたくさん選手を入れ替える方向ではなく、ブルーレヴズの現状の編成にフィットする選手であったり、より強くなるために必要な選手を獲得しようという方針で編成を進めてきました。
 これでスコッドはほとんど固まったと思います。

――これでカテゴリCは4人が在籍。その一人でラドラドラと同じCTBのヴィリアミ・タヒトゥアがプレイングコーチになりました。

 11月にリーグに選手登録をする際に、選手のコンディションやスコッドの状況を見極めて、カテゴリCの登録上限数である3人を選ぶとしか現時点ではいえません。

 ただ、そうした中で仮にタヒトゥア選手がその3人に入れなかったとしても、プレイングコーチとして貢献してくれることになりました。
 彼は外国籍選手のリーダー的役割を担ってくれているので、われわれとしても選手、コーチ問わずチームに残ってほしいと思っていた中で、話し合いをして合意することができました。

――また話題を変えますが、浜松の新しい球技場の件がなかなか進みません。

 新スタジアム建設は県の事業で、いま県の財政がかなり厳しいという知事の発言もあり、トーンダウンしていると思います。
 できるにしても、もう少し先の話になると思います。

 ただ、他の案を考えることは辞めません。ジュビロ磐田さんの意向もあるのでわれわれが主体的に動ける状況ではないですが、ヤマハスタジアムの改修のような構想がないかアンテナを張っていく。

 こうあるべき、こうしたらいいということを投げかけていかないと何も始まりません。
 新たなスタジアムの確保については色々もがいていこうと思っています。

――スタジアムの話では、先日、SC相模原の海老名移転が話題に上がりました。

 スポーツビジネスの根本的な考え方として、一番大事なのは試合を開催する日に確保できるスタジアムがあるということです。
 交通の便が良い悪いなど考えなければいけないことは多々ありますが、自分たちがより稼げる、より自由度高く使えるスタジアムを確保することがこのビジネスの価値の源泉であり一丁目一番地です。

 SC相模原さんの件も、ホームタウンエリアの中にそうしたスタジアムがあるならばそこにコミットするべきでしょう。

 ホストエリアの中でできないのであれば、ホストエリアそのものを変えることを考えないといけない。
 三重ホンダヒートさんのような(2シーズン後に宇都宮に移転する)ケースが、今後も出てくるのではないかと思います。

 現状のホストエリアの中で試合ができるに越したことはないですし、リーグがライセンスを作れば自治体への交渉材料になりますが、ただリーグワンはライセンスの策定に消極的です。

 本来はクラブ名に入っている地域、すなわち自分たちがマーケティングしていくと定めた地域にホストスタジアムを持つべきなんです。
 ファンからすれば、そのクラブの試合を見るのはスタジアムなわけですから。

 ラグビーは企業スポーツだった頃の考え方がまだ残っているので、練習拠点や母体企業の工場や拠点のある場所=ホストエリアという認識ですよね。

 発想が逆なんです。
 例えば、(Jリーグの)サンフレッチェ広島の練習場はスタジアムのある広島市内ではなく、安芸高田市にあります。水戸ホーリーホックも、練習場は水戸市ではなく隣の城里町です。

 スタジアムやホームタウンとなる街から少し離れた場所であっても、練習場としてはグラウンドを何面も確保できる場所があればいいわけです。
 試合をするスタジアムがある場所が自分たちの本拠地であり、ホームタウンです。

 ラグビーがこの発想の転換ができていないのは、集客においては致命的だと思っています。

 そうした意味でヒートさんの移転は英断だと思っています。
 自分もかつて宇都宮で仕事をしていて土地勘があるからそう思うのかもしれませんが、ヒートさんは宇都宮市内に交通の便の良い球技専用のスタジアムを優先的に確保できるわけですから。どの地域のどの場所やスタジアムに軸足をおいてマーケティングや事業を行っていくのか、ということをまず中心に考えていかないといけないと思います。

 栃木でなくても、例えば札幌ドームとかD1チームが地方開催で使っているスタジアムなど、都心部よりも自由度高く使えるスタジアムはまだたくさんあるはずです。
 それに、積極的にプロラグビークラブを誘致したいという自治体もあると思います。

 私もBリーグ時代に茨城ロボッツの本拠地をつくば市から水戸市に移転しました。
 当時つくば市では住民投票でアリーナ建設が中止され、試合をするアリーナを確保できなかったからです。

 同じような話が浜松の隣の豊橋(愛知)でもあり、新しいアリーナを作るかどうかを今月に住民投票するそうです。
 豊橋に試合をする拠点を構えている三遠ネオフェニックスは今季ベスト4に入った強豪クラブです。このアリーナがができないとなると、Bプレミアのライセンスにも影響が出ると思います。

 移転となれば選手も引っ越しを余儀なくされますし、地域との関係性をまた1から作らないといけない。私も経験したのでその大変さはわかります。

 それでも、試合をする本拠地となるスタジアムの確保というのは、クラブ経営を考える上では最上位におかれる重点事項であり、そのためにはホストエリアの移転も時にはやむを得ないということになるわけです。


PROFILE
やまや・たかし1970年6月24日生まれ。東京都出身。日本選手権(ラグビー)で慶大がトヨタ自動車を破る試合を見て慶應高に進学も、アメフトを始める。慶大経済学部卒業後、リクルート入社(シーガルズ入部)。’07年にリンクスポーツエンターテイメント(宇都宮ブレックス運営会社)の代表取締役に就任。’13年にJBL専務理事を務め、’14年には経営難だった茨城ロボッツ・スポーツエンターテイメント(茨城ロボッツ運営会社)の代表取締役社長に就任。再建を託され、’21年にB1リーグ昇格を達成。同年7月、静岡ブルーレヴズ株式会社代表取締役社長に就任

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