NZでの活躍は、京都での挫折から。仁保顕隆[サウスランドボーイズ高/PR]
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ラグビー王国で活躍する日本人の高校生がいる。
仁保顕隆(にほ・けんた)。
ニュージーランド南島の強豪校、サウスランドボーイズハイスクール(以下、SBHS)に学ぶYear13(高校3年生)だ。
同校は2023年に全国大会初優勝。南島の高校が優勝するのも17年ぶりという快挙で、昨年はサニックスワールドユースにも参加した。
仁保は最終学年となった今季より1軍(1st XV)入り。
185センチ、111キロのタイトヘッドPRとして、昨年の高校NZ代表に選ばれたコーベン・キラと背番号3を争っている。
「パフォーマンスに手応えはあります。僕は動けるPRを目指していて、持ち味はボールキャリーです。当たり負けしているとは感じません。ただ、コーベンは体重が重くて(仁保より3センチ高く、10キロ重い)、スクラムがすごく強い。コーチたちは究極の選択ですよ(笑)」
京都府出身。下鴨中学校入学後に、ラグビーを始めた。
きっかけは2019年のW杯。日本代表の活躍で、ラグビーは小学校でも流行った。
「小学6年生のときでした。ある子がラグビーボールを持ってきてから、放課後に公園でずっと遊んでいました」
当時から体は大きかった。小学4年時に体重は80キロ超え。その後は、「太っているのが嫌で」一時減量するも、大柄な体躯はラグビーで生きた。
「身長184センチ、体重は100キロを超えていました。簡単に活躍できました」
部の同期は7人と少なかったが、報徳学園で活躍中のWTB村田一眞とともに、府大会で8強入りに導く。
しかし、府の中学校選抜に選ばれなかった。これが、ラグビー人生の分岐点となった。
「体づくりはお母さんと二人三脚で頑張ってきました。ご飯をいっぱい作ってくれて、僕は8時には寝て身長を伸ばして…。ラグビー人生最初の挫折で、すごく悔しかった。たくさん泣きました」
こんなもんじゃない。
そう思っていた矢先、海外を相手に仕事をする父に誘われ、ともにニュージーランドへと渡った。
1か月間の短期留学。オークランドのウエストレイクボーイズハイスクールに通った。
「めちゃくちゃ楽しかったです。初めてフィジカルレベルが自分に合いました。トンガ人の子にガチっと止められて…。でもそれが嬉しかったんです。自分の冒険心をくすぐられました」
京都成章、京都工学院と府内の2強から声がかかるも、高校ではもう一度、海を渡ると決めた。
「若いうちにたくさん厳しいことを経験しなさい」との母の助言を受け、NZ最南端のまち、インバーカーギルにあるSBHSに進んだ。
「田舎なので日本人はほとんどいません。最初は言葉の壁もありましたし、差別もありました。すごくきつかったですけど、体を大きくして、めちゃくちゃ英語を勉強して、自信がついたらそういうことは一切なくなりました」
あの日の落選を原動力に、「がむしゃらにできました」。
全体練習は週に3回、最長で2時間と短い。空いた時間を見つけ、個人練習にひたすら励んだ。
「自分に足りないものを補う時間がいっぱいありました。走って、スキルを磨いて、筋トレして…。ジムには毎日通いました。チーム内で一番行っていると思います。NZでは(急激に筋肉がつき皮膚に亀裂が入る)ストレッチマークは努力の証。それが入っていると、みんなから『お前、やるやん』と言われます」
持ち味のボールキャリーでは、トンガやサモアといったアイランダーの留学生の動きを参考にする。
日本と同様、NZにも海外出身選手枠があり、試合登録メンバー22人の中に2人しか入れることができない。自身のポジションだけでなく、彼らとの競争にも勝つ必要がある。
「ハンドオフで突き飛ばすプレーが一番好きです。初めてトンガ人とぶつかったときに、トンガ人のボールキャリーと日本人の器用さ、スキルが合わされば最強になれると思いました」
SBHSが所属するのは、6チームで争われる「オタゴ・コンペティション」。
第1ラウンドは6チーム総当たりで競い、最下位チームが脱落する。第2ラウンドでは5チーム総当たり戦でまた最下位チームが抜け、第3ラウンドで4チームによるトーナメント(準決勝、決勝)でハイランダーズ地域の覇者を決める。
その勝者が今度は、クライストチャーチボーイズハイスクールやネルソンカレッジなど強豪校がひしめくクルセイダーズ地域の優勝チームと対戦。一発勝負で南島の代表チームを決め、トップ4が集まる全国大会に進める。
現在はラウンド2の最中で、SBHSはラウンド1を全勝で通過している。
仁保は2年ぶりの全国優勝に貢献し、卒業後は日本の大学への進学を目指す。
「ジャパンに選ばれたいので、大学では日本に帰ろうと思っています。リーグワンではハイランダーズとの繋がりが深いトヨタヴェルブリッツに入りたいです。姫野(和樹)選手みたいにハイランダーズでもプレーしたいと思っています」
