【連載】プロクラブのすすめ㉕ 山谷拓志社長[静岡ブルーレヴズ] クラブに多少の犠牲があっても、全体が最適かどうかが大事。
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日本ラグビー界初のプロクラブとしてスタートを切った、静岡ブルーレヴズの運営面、経営面の仕掛け、ひいてはリーグワンについて、山谷拓志社長に解説してもらう連載企画。
25回目となる今回は、今季をさまざまな角度から振り返り、話題の「カテゴリ変更」などを語ってもらった(5月30日)。
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――4シーズン目が終わりました。
3年連続の8位からレギュラーシーズンで4位まで上がってきて、ここからという状況だったので、もちろん準々決勝で負けてしまったことは選手、チームスタッフをはじめ、事業スタッフも、ファンの皆さんもショックは大きかったと思います。
ただ、これは結果論なのですが、仮に勝ち進んで決勝や準決勝で負けていたら、おそらく『頑張ったね』『よくやったね』と言われていたと思うんです。
なので、そう思われて適度な満足感で終わるのではなく、自分たちの想定外のところで終わってしまったという大きな悔しさが残ったシーズンとなることのほうが、来季のエネルギーに絶対になります。
来シーズンは絶対に優勝する、という声は選手たちとスポンサー企業への挨拶回りを通して聞こえてきます。
われわれ事業サイドも、優勝した時には何をすべきかをいろいろと想定し計画することができたので、来季に向けた良い学習ができた、準備ができたとポジティブに捉えています。
先日の発表の通り、来季のスコッドは主力はほぼ変わりませんし、チームスタッフの体制もおおむね継続していきます。
今季つくった土台、ここまで伸びてきた実績、そして悔しさをもって、来季はプレーオフ出場が目標ではなく、日本一になることを明確な目標として掲げます。
――事業面も振り返ってください。
毎年発表している項目ではほぼすべて右肩上がりだったのですが、今季は平均観客数、チケット売り上げが前年比でそれぞれ99%、98%で横ばいとなってしまいました。
試合数が増えて総観客数は増えたけど平均数は伸び悩んでしまった。ただ、リーグワンD1全体では-11%と落ち込んでいるんです。ワールドカップイヤーも終わり、その反動がある中では、われわれは耐えたという見方もできます。
ホストゲーム9試合の内訳を見てもポジティブなことがあって、昨季は開幕戦と最終戦に1万人超えで、シーズン中盤は大きく落ち込んだ中での平均7600人でしたが、今年は中だるみがなく、押し並べて7000人前後の観客を入れることができました。
コンスタントに集客ができるようになってきたことは評価できます。
――リーグ全体の課題ではありますが、シーズン中盤に大きな山を持ってくるのが難しい印象です。
われわれもシーズン途中で1万人超の試合を一度は設けたかったのですが、なかなかうまくいきませんでした。
成績が低迷していた頃は、人気選手や代表選手がいる対戦カードを狙ったり、過去の対戦成績が良い相手との試合に集客を集中させるなど、いろいろと考えていたのですが、今季は成績が上がり、ホームでは8勝1敗でした。本来であれば、もっとその状況を生かして集客を増やさなければいけない状況だったと思います。
――チケットセールス担当とは、来季に向けた改善索を模索している。
いま議論しているのは、もう一度『集客』に会社のリソースを集中させていこうということです。
例えば地域貢献のイベントを、集客やチケットに結びつけるためにどうするか。いままではチームのPRもできればと考えていましたが、さらに集客まで繋げて考えていくということです。
地域連携を担っているメンバーをマーケティングやチケットセールスの方にも関わってもらうような組織体制に変えていこうと思っていますし、他の部署の人たちも集客をちゃんと意識していくような取り組みも考えています。
スポンサーを増やすだけでなく、スポンサーの社員の方にどれだけ多く試合に来てもらうか。ファンクラブの会員になってもらうだけでなく、会員になってからより多く足を運んでもらうにはどうするか。その先の目的まで考えようと。