【コメントで振り返るリーグワン決勝戦】東芝ブレイブルーパス東京(1)/「最後の最後までプレッシャーをかけられて本当にきつい試合でした」 リーチ マイケル

6月1日、リーグワンプレーオフ決勝戦が国立競技場でおこなわれ、レギュラーシーズン1位の東芝ブレイブルーパス東京が同3位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイとの接戦を18―13で制し、リーグワン史上初の連覇に輝いた。
ここでは、トッド・ブラックアダーHC、キャプテンのNO8リーチ マイケルの記者会見を紹介する。
■トッド・ブラックアダーHC
本当にチーム全員の今日までの頑張り、努力に対して誇りに思います。 今日に至るまでチームとしてやることに対する信念、向き合う姿勢というところも、本当に素晴らしい状態で1年間やってくることができたと思っています。
クボタさんもセットピースや、接点まわりをDNAとされているなか、予想通りフィジカルの試合になったのですが、特にセットピースに関して、選手、コーチともに1週間素晴らしい準備をしてくれて、素晴らしいパフォーマンスを出せたというところは、本当にうれしく思います。
決勝戦というプレッシャーがかかるなかで、細かいところで勝負が決まっていたかと思うのですが、そういう部分もできたということも非常にうれしく思います。
――試合の立ち上がりから、勝つためのいい要素を持てていたように思うがどう感じていたか。
そうですね。こういう試合にクボタさんがしてくるだろうということは分かっていて、最初のキックオフも、リーチ マイケルのところに蹴ってくるだろうなということもある程度予測ができていました。
今シーズンはベンチリザーブのFWを6人にしてくるチームもかなり多くて、なんとか東芝のFWを圧倒したいというチームが多かったです。その困難な状況に対して、僕らの選手たち、コーチも含めて、進んで立ち向かってくれたと思っています。
フィジカルのバトルという部分は東芝の昔からのDNAの一部でもあります。スクラムも、特に今週だけではなく、今シーズンを通して、コーチのジョシュア・シムズがリードして、選手もしっかりとついていってくれて、いい準備ができていたなと思います。
シーズンのなかで毎週、毎週、これだけ成長することができたからこそ、今日もここに座ることができていると思います。
今日の試合(決勝)に関しては、異なるラグビーのスタイルのぶつかり合いだったと思いますが、僕らはしっかりとボールを持ってアタックすることができました。
また、その影でディフェンスも本当に素晴らしかったと思います。プレーオフの2試合で被トライを1におさえることができました。
アタックのDNAを強く持っているチームではありますが、ディフェンスでどれだけ体を張るか、選手たちがそういうことができるということが、ひとつ見せることができた試合だったのかなと思っています。
■NO8リーチ マイケル キャプテン
今日、5万人のファンの前で、オレンジアーミーと、そして東芝ブレイブルーパスのファンの前でいいラグビーができたと思います。
クボタスピアーズは6連戦のなかでも、最後の最後まで自分たちにプレッシャーかけて、本当にきつい試合でした。 そのなかでも粘って粘って、東芝らしく戦って、最終的に勝ったこと、すごくうれしいです。 今シーズンずっとサポートしてくれたファンと、自分たちを支えてくれたノンメンバーの選手と、コーチ陣に本当に感謝しています。
連覇できたことはリーグワンの歴史のなかでも初めてで、新しい歴史できて本当にうれしいです。1回休んで、また来年に向けて準備したいと思います。
今シーズン、本当にありがとうございました。
――連覇というのは去年の初優勝とどんな違いがありますか。
シーズンスタートの時点でプレッシャーが違ったのは感じたし、キャプテンとして連覇するという経験もなかったので、その点では、リッチー・モウンガという7連覇した選手がいたので、彼の経験から何を大事にしないといけないか、ということを学ぶことができた1年だったと思います。
今シーズンはほぼ同じメンバーで戦ってきて、出場できていないメンバーも多く、東芝には素晴らしい選手がたくさんいて、なかなかチャンスを掴めなかった選手もいました。それでも、一生懸命自分たちの準備に100パーセント向き合ってくれて、そのおかげで連覇できたと思います。
――勝った瞬間、どういう感情が最初にわきあがってきましたか。
去年に続いて、「よっしゃっ」ていう感じはなくて、実感はまだ湧いてきていない感じです。でも、シーズンが始まってから20試合、1試合1試合を戦って、勝ったり、負けたり、同点だったりしました。最後の最後、優勝できてうれしいです。
連覇というプレッシャーもあったので、勝った瞬間ほっとしました。
――今日の勝因はどんなところにあると思いますか。
アタックし続けたことが勝因だと思います。 アタックする時間が多くて、ディフェンスしなければいけない時間があまりなかった。
でもディフェンスでもプレッシャーをかけたり、ファンブルをさせたり、ミドルエリアでもプレッシャーを結構かけたり、モールディフェンスもものすごく良かった。あとはスクラムです。クボタスピアーズのスクラムは今シーズン1番だったし、モールも1番でした。今週はそこに力を入れたので、それが要因だと思います。
――後半開始20分はほぼ敵陣で戦えていた。勝つためのいい感触がありましたか。
クボタスピアーズは6連戦をFWもほぼ同じチームで戦ってきて、疲れがあります。そこで、自分たちでもうとにかくアタックして、タックルさせて、モールを組んだりして、どんどんプレッシャーをかけるというマインドで後半からスタートしたので、その点ですごく良かったんじゃないかなと思います。
もう少し点数を取れたら、もう少し違う展開になっていたのですが、それはクボタスピアーズの強い粘りと、いいカバーがあったので。
――コリジョンやブレイクダウンのところでどのようなことを意識したのですか。
もうとにかくしつこく刺さる。そしてダブルタックルでやりましょうと話していました。特に両LOと、そしてNO8のファウルア・マキシ選手、FWの選手にとにかくプレッシャーをかけまくって、ミドルエリアでもどんどん前に出て止めるという話をしてきたので、よくできたと思います。
――胴上げのときに去年と同じ格好(マッチ棒のような直立不動の状態)で胴上げされていましたけど、あれは最初から決めていたのですか。
自分の中でも軽くすべったんじゃないかなと思っています。(同じにしようとは)考えていなくて。次は真面目にやりたいなと思います。
<リッチー・モウンガ選手について>
――リッチー・モウンガ選手の右手の状況と今日のプレーに対する評価を
■トッド・ブラックアダーHC
(状態は)良くはありませんでした。ただ、今日、このような試合に出てくれたということは、彼がどれだけタフな選手で、人間かというのがわかったかと思います。
手(右手の甲)は骨折しており、(決勝前の)1週間、練習もまったくしていない状態で、それでも、頭でイメージをしたりしながらしっかり準備をしてくれていました。前日のキャプテンズランでこの週初めてボールを触り、キャッチもできて、パスもできていました。今日、やはりパフォーマンスもすごく良かったですし、骨折をしているなんて感じさせないプレーをしてくれたと思います。
このような状態で、あのようなパフォーマンスをしてくれるというのは、彼の、このチームのメンバーに対するコミットメントの表れかなという風に思っています。
――1週間ボールを触っていなかったモウンガ選手とはどのようなコミュニケーションをとっていましたか。
■リーチ マイケル
あんまり手の状態どうか、という話はしていなくて、できるかできないかっていうのも彼に任せていました。あとは酸素カプセル治療を3日連続で一緒にしました。そのおかげでだいぶ腫れも引いて、リラックスというか、いい状態でもってくることができたのは本当に奇跡だと思います。
レントゲンを見たときには正直無理だと思ったのですが、彼はやっぱり勝ちたいという意欲が出ていて、本当に、あらためてすごい選手だなと思いました。
――リッチー・モウンガ選手が加入して2シーズンになるがフィールド内外で彼が及ぼしている影響について。
■リーチ マイケル
本当に素晴らしい選手であるというところは間違いなくて、クルセイダーズという素晴らしいチームで、7連覇という経験もしていて、オールブラックスの経験もあります。彼が、連覇ということ、勝ち続けるというメンタリティを、チームに浸透させてくれたと思います。
昨季の1回目の優勝のときには、プレーオフに入るタイミングで、「どうやってプレッシャーに打ち勝って自分たちのラグビーをするか」ということをチームに話してくれましたし、今年は連覇がかかっていましたが、チームの中では「連覇」という言葉は使わずに行こう、と、彼からも言ってもらった。やはり経験もありますし、勝ち方を知っているので、プレッシャーのかかる局面をどうやって抑えていくか、どのポイントに注力するかということや、プレッシャーのかかる試合に向けた1週間の進め方というところも、熟知している選手だなと思います。
今日も骨折した手でMVPのパフォーマンスをしたということで、彼がどれだけタフな選手かというところを表した試合でした。
あとは、府中という町で、東芝というクラブを彼が心から愛して、日々そこで過ごしながら、チーム、クラブにコミットしてくれているということも、もパフォーマンスに出ているのかなと思います。本当に、一緒にプレーしていてうれしく思える選手の1人です。
■トッド・ブラックアダーHC
基本的にはリーチがすべて言ってくれましたが、リッチー・モウンガは本当に究極のチームマンだなという風に表現したいと思います。
森田佳寿コーチ(コーチングコーディネーター)とチームの活動以外の時間に会ってミーティングをするなど、チームの練習以外のところで準備に彼がかけてくれる時間もありました。もちろんリーダーとしてもそうですし、ゲームドライバーとしてラグビーの試合を進める舵取りをする役割としても素晴らしい資質を持っています。
EQ(emotional intelligence quotient)が高い選手で、リーチと2人でリーダーとして、いいコンビネーションで違うエリアをそれぞれ補完し合って、リッチーは戦術で、リーチはチームのメンタリティーというところを、2人で素晴らしい調和でドライブしていってくれています。昔にさかのぼって、私がクルセーダーズのコーチだったときを振り返ると、彼を選手として選んだのですが、そのときの印象が、やはりタフな選手だなというところでした。その点は、リーチと共通するところでもあります。
チームのためを思う気持ちというところも本当に強い選手です。先週の試合(負傷した準決勝)が終わって、直後から今週の最初にかけては、チームの感覚的には7:3で出場できないだろう、決勝は難しいだろうという動きが強かったのですが、彼もやはり出場するということをあきらめずに、日にちが進むにつれて自信をつけてくれていました。
決勝前日のキャプテンズランでも、本当になんとしても出るっていう気持ちが伺えるような走り方、プレーでした。それが、彼のチームへのコミットメントというのを示していると思います。
<来季に向けて>
――試合前の会見で「来年も再来年も成長していけるチーム」という話をされていました。連覇をしたうえでのチームの伸びしろについて。
■トッド・ブラックアダーHC
どんな試合でも、自分たちについて新たに学ぶことが必ずあるというところ、その学びをしっかりと拾っていけるといいうところが、自分たちが今後伸びていけると言った理由です。
今シーズンの初めから見返してみても、今日ここに至るまでにも大きな成長が、特にマインドセットの部分で成長がありました。毎週の試合から改善点を見つけて、そこをつぶしてレベルを上げていける、全員が学ぶ意欲があるという部分、いい若手も育ってきているという部分が(来季に向けても)大きいのかなと思います。
■リーチ マイケル
東芝には若い選手もたくさんいて、ただ今季は出番が少なかったですね。今季のブレイブルーパスは、リーグワンの中でもおそらく95パーセントくらい同じメンバーでやってきていて、どうやって若い選手をもっと試合に出場させるかというところに少し問題があると思います。
たくさんいい選手がいて、なかなか出番がなくて、日本代表になるチャンスもなくなってしまう。来年はもっと若い選手が出場できるように頑張ってほしいなと思います。
<リーグワン全体について>
――連覇した立場から、リーグワンのレベルは上がっていると感じますか。
■トッド・ブラックアダーHC
非常に競争力の高いリーグになっていると思います。
シーズンを通して、どこが勝ってもおかしくない対戦ばかりで、実際にアップセットも起きていました。各チームが1週間の準備の質というのを、どれだけお互いに高められるかという点で、相互作用もあり、さらにレベルが上がっているのではないかと考えています。
また、忘れてはいけないのが、レフリーの皆さんの素晴らしい仕事です。プレッシャーのかかる大変な役回りではありますけど、皆さん勉強もされながら、素晴らしいレフリングを提供してくれたと思っています。
リーグのフォーマットが変わり、3位から6位までのプレーオフ進出をかけた非常にタイトな争いや、入れ替え戦も非常に緊迫した展開がありました。これは、リーグワン全体への興味をしっかりと引けるような大会になっているのではないかと思います。
本当にリーグ全体を通して各チームの差が縮まって、紙一重のところまできていて、そういう緊迫した試合を続けてみせることができているからこそ、ファンの皆様をしっかりと引きつけることができると思います。
今後の改善点を今考えてみたのですが、思い浮かべるのが難しいです。そのくらい、素晴らしいリーグに仕上がってきていると感じます。
■リーチ マイケル
勝つために100パーセントの準備をしないといけない。それは昨シーズンと変わらないです。(それに加えて)5パーセント、メンバーを落としたり、考えを落としたりしてしまうと負けてしまう。そういうリーグになってきました。
ただ、この厳しいリーグワンで戦って、将来的に日本代表になる、なりたいっていう選手をどれだけ増やせるかということも大事なので、そこをしっかりと取り組んで、どんどん増やしていけたらと思います。
リーグワンには、たくさんの素晴らしい外国人選手も出場しています。リッチー・モウンガやシャノン・フリゼル、マルコム・マークス⋯。その中で戦って、いい感触を持って、そのまま日本代表になりたいという選手を増やすことができれば、日本ラグビーはもっと良くなるのではないかと、僕は正直に思います。
