【サクラフィフティーン PICK UP PLAYERS】トライを取り切る、勝たせる。松村美咲[WTB・FB/東京山九フェニックス]
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松村美咲はサクラフィフティーンが誇る若きフィニッシャーだ。
高校3年時に「U18花園女子15人制」での活躍が認められ、翌2023年に代表デビュー。いきなり2トライを挙げ(フィジー戦)、3試合で5トライを重ねた。
その前年にはサクラセブンズの一員として国際舞台を経験していたが、手術を伴う右肩の負傷からの復帰後は、活躍の場を15人制に移した。
「正直、セブンズに戻るつもりだったのですが、先に声かかったのが、サクラフィフティーンのキャンプでした。元々、15人制はすごく好きでしたし、15人制の方が自分の強みを生かせるとも思っていました」
その強みとはキック。小3から小6までラグビーと並行したサッカーで培われる。当時は東京都のトレセンに選ばれるほどのゴールキーパーだった。
「その時は中学でサッカー一筋になってなでしこジャパンを目指す感じだったのですが…。なぜか小6でラグビーがすごく楽しくなり、気づいたら中学でもラグビーをやっていました(笑)」
杉並少年RSのOBで、昨季まで慶大のトレーナーだった中村彰伸さんに勧められた千歳中に進学。伊藤利江人や海老澤琥珀(ともに明大3年)らと同じメニューをこなし、いまに繋がるスキルを磨いた。
「部活なのでほぼ毎日、ボールに触れられました。砂利の校庭ではタッチフットがメインで、そこでハンドリングスキルは上達したと思います。SOだったので、ひたすらキックも蹴っていました」
関東学院六浦ではパリ五輪代表の西亜利沙と日々蹴り合い、早大入学と同時に加入した東京山九フェニックスでは清水建設江東ブルーシャークスの元NZ代表、リマ・ソポアンガに週に1度、キックのアドバイスをもらえた。
サクラセブンズでの活動などを通して徐々にランにも自信が持てるようになると、内から外へとポジションを移した。
自主練ではラダートレーニングや1v1を多めに採り入れ、ステップやアジリティを磨いた。
「いまは相手と間合いがある中で、ランで勝負するのが楽しいです」
しかし、華々しいデビューを飾った2023年とは一転、昨年は「悔しい気持ちになることが多かった」
という。
「強気や貪欲さがもう少し必要だったと思います。コンタクトが起こった後にドライブし続ける、ラインブレイクしてからトライまで取り切る…。そこに課題が残りました」
その後の国内大会で改善を図ったが、シーズン途中でグロインペイン症候群を患う。チームの全国大会3連覇に貢献できなかった。
「いまは自分の体と向き合いながら、やらなければいけないことを積み上げたいと思っています。でもW杯に向けては、メンバー入りするための準備よりもW杯で勝つための準備をしたいです。去年はどうしても勝ち切れない試合が多かったので、海外の相手に勝ちたい気持ちがさらに強くなりました」
目標は女子イングランド代表のFB、エリー・キルダン。彼女のようにランで防御網を切り裂き、チームを勝たせるランナーになりたい。
ハタチの挑戦が始まる。
(文/明石尚之)
※ラグビーマガジン6月号(4月23日発売)の「女子日本代表特集」を再編集し掲載。掲載情報は4月15日時点。