国内 2025.05.03

左足に苗字。マルジーン・イラウアが語るブルーレヴズの結束力。

[ 向 風見也 ]
左足に苗字。マルジーン・イラウアが語るブルーレヴズの結束力。
今季の13試合目に臨むマルジーン・イラウア[静岡BR]©︎JRLO

 左太ももに目を引くタトゥーがある。

 和風のフォントでカタカナの「イラウア」。

 マルジーン・イラウアその人が説く。

「4年前に彫りました。(出身の)ニュージーランドでは、意味がわからないながら漢字のタトゥーを入れる人がたくさんいます。私はカタカナ」
 
 両方のすねにはシャープな字体で「South」「Auckland」。自身が生まれ育った南オークランドを表す。

「色々と問題の起こるエリアです。その地域で苦戦しながら過ごし、世界に羽ばたいた人はたくさんいます。私がかつてここにいたこと、いま日本にいられることが素晴らしいことだということ。それらを忘れないために、刻んでいます」
 
 静岡ブルーレヴズ所属のアスリートだ。移籍4シーズン目にあたる今季は、加盟するジャパンラグビーリーグワン1部にあって第16節までに14度、NO8で先発した。身長187センチ、体重108キロのサイズで力強く突進を重ねた。

 発足2季目となる藤井雄一郎監督体制のもと、進歩を実感する。

「うまくプレーできていなければ、それをコーチがしっかり伝えてくれる。それでもスターティングで戦えているのは、いいサインです。自分は、自分の仕事をやることだけを考えています」

 2012年に来日し、大学選手権3連覇中だった帝京大へ入学した。在籍の4年間でV7を達成した。

 ’16年に現東芝ブレイブルーパス東京に加わってからは、ほとんどの時間を日本で過ごした。母国ニュージーランドのカウンティーズ・マヌカウに在籍した’19年以外を前後し、現清水建設江東ブルーシャークス、廃部したコカ・コーラレッドスパークスに在籍。ブルーレヴズに来たのは’21年である。

 長いキャリアのさなか、スーパーラグビーの日本チームだったサンウルブズ、日本代表にも選ばれたことのある31歳は、いまいる静岡のグループに「団結力」を覚える。

「個々(ばらばら)ではなく、ひとつになっています。だから他とは違って映ると思います。チームのスタイルにどうアダプトすべきなのか、それぞれがわかっている。オフ・ザ・フィールドでも皆が近い関係性で、それが兄弟愛、仲間意識のようなものを生んでいます」

 自身もよく、大学の後輩をはじめとした日本人選手を連れて食事に出かける。寮でバーベキューも開く。

 語り口は朗らか。ちょうど目の前に大柄な若手が通るのを見て、冗談を口にする。

「…彼はたくさん食べるので、連れていかないようにしています!」

 仲のよいブルーレヴズの凄みを示したのが、4月12日の第15節だ。

 1月18日の第5節で34-28と下した、昨季王者のブレイブルーパスと再戦した。自らトライを決め56-26で快勝。クラブにとってリーグワン発足後初となるプレーオフ行き(6傑による)を、12チーム中4番手で決めた。

 この午後、前所属先とぶつかる特別な感情はなかったという。ただ、会場の東京・秩父宮ラグビー場へ挑戦心を持参していた。

「スーパースターのたくさんいるチャンピオンを制したかった。1戦目(第5節)がまぐれではなく、自分たちがベストチームなのだと証明したかった。あの試合へは全員が同じマインドセットで臨めた。だから、全てのすることが楽におこなえました」

 話をしたのは5月1日。シーズン最後の本拠地試合を2日後に控えていた。

 第5節をしたのと同じヤマハスタジアムへ、現在12位の浦安D-Rocksを迎える。いつも練習見学に訪れるファンを思い、笑顔で展望した。

「ホームで勝ちたい。そして、これから全てのチームを倒していく。とにかく、ステップ・バイ・ステップです」

 フィールドにもスタンドにもよい仲間を揃えられるのが楽しい。

脚に刻まれたタトゥー(撮影:向 風見也)

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