各国代表 2025.04.30

6Nでイングランドと熱闘。女子フランス代表の課題と希望

[ 福本美由紀 ]
6Nでイングランドと熱闘。女子フランス代表の課題と希望
キレのある動きでチームを牽引したSHポリーヌ・ブルドン=サンシュス(Photo/Getty Images)



 女子シックスネーションズの最終戦は、イングランド対フランスは全勝対決の決勝戦となった。

 世界ランキング1位のイングランドはここまで、イタリアに38-5、ウエールズに67-12、アイルランドに49-5、スコットランドに59-7と圧倒的な強さを見せていた。一方、ランキング4位のフランスは、アイルランドに27-15、スコットランドに38-15、ウエールズに42-12で勝利し、イタリア戦ではペナルティを繰り返して終了3分前に1点差に詰め寄られながら、34-21で勝利。パフォーマンスに波があった。

 昨年9月から10月にかけて行われたWXV1では、フランスはアメリカに22-14で勝ったものの、カナダに24-46、NZに14-39で敗れ、6チーム中5位という結果に終わった。今年8月23日に開幕される女子ワールドカップ(以下、W杯)に向けて、この大会で自信を取り戻したいところだった。

 2年前、5万8千人の観客が詰めかけたトゥイッケナムでは、イングランドがハーフタイムで33-0と大きくリードしながらも、後半フランスの猛追を受け辛くも勝利(38-33)した。今回の観客は約3万7千人と当時には及ばなかったが、試合はそれを忘れさせるほどの、息を呑むような展開となった。

 開始3分、イングランドが先制トライを奪うも、フランスもすぐに反撃し5-7と逆転。しかしその後、フランスは痛恨の20分間を迎える。フランスのミスをイングランドがことごとく得点に繋げ、フランスは4トライを奪われ、7-31と大きくリードを許してしまう。さらに、PRアシア・カラファウイが危険なタックルでイエローカードを受け、フランスは14人で戦わなければならなくなった。

 しかし、ここでフランスが奮起する。SHポリーヌ・ブルドン=サンシュスが突破口を開き、敵ゴール前までチームを前進させる。ラックでターンオーバーされるが、ラックから出たボールをイングランドがトライゾーンでまさかの落球。そのボールをブルドン=サンシュスがすかさず押さえてトライ。31-14とし、さらにもう1本返して31-21で前半を折り返した。試合の流れが変わった。

 後半に入ると、イングランドがトライを奪えば、フランスもすぐにトライで応酬し、残り10分で43-35と8点差。ここまで追い詰められたことのないイングランドに動揺が見え始める。

 フランスは最後まで食い下がった。79分、WTBジョアンナ・グリゼが見事な個人技でトライを奪い、FBモルガンヌ・ブルジョアのコンバージョンも成功。ついに1点差まで迫った(43-42)。

 しかし、その後のイングランドのキックオフから、勝利を勝ち取るために最後の攻撃を仕掛けたかったフランスが、ボールを落としてしまう。レフリーの長い笛が響いた。

 立ち尽くすフランスの選手。ホッとした表情のイングランド。イングランドは1点差で勝利を掴み、対フランス15連勝、そして7大会連続のシックスネーションズ優勝を成し遂げた。

 試合後、CTBガブリエル・ヴェルニエは、「フラストレーション、苛立ち、怒りの感情でいっぱいだ」と語った。

「今日は並外れたマインドセットを示せたのに、またしても勝てなかった。追い上げ、追いつき、彼女たちを苦境に陥れることができた。何度もディフェンスを突破し、彼女たちを翻弄できているのがわかった。これほど自分たちに流れが傾いていたのに勝てないのは本当に腹立たしい。20分間の悪い時間帯があり、あまりにも簡単にトライを許してしまった」と苛立ちを隠さなかった。

 キャプテンのCTBマリンヌ・メナジェは、「自分たちの軸となるプレーを守り、パニックにならないようにしなければならなかった。このシックスネーションズで大きく進歩した点であり、冷静さを保ち、自分たちの試合を組み立て続けることができた」と敗れはしたがチームが成長したことを強調した。

 悪夢の20分間を受け入れ、パニックにならず、着実に点差を縮めていった。崖っぷちに立たされながらも、ハーフタイムに10点差まで追い上げ、希望を残した。選手たちが毎試合のように繰り返してきた「私たちは決して諦めないチームだ」という言葉が証明された。

 ただ、技術的にはまだ課題が残る。この試合、フランスはノックフォワードで始まり、ノックフォワードで終わった。ハンドリングエラーの数がウエールズ戦では27、イタリア戦で20、イングランド戦で15だった。敵陣深く攻め込みながら、何度もチャンスを逸した。「プレーしようとすればミスはつきもので、大胆なプレーには反則のリスクが伴う」と共同ヘッドコーチのダヴィッド・オルティスは弁護するが、そのプレーで勝つには精度を上げなくてはならない。

 ディフェンスでは、特にモールを改善する必要がある。今大会の最初の4試合でモールから7トライを奪われ、イングランドは前半、明らかにそれを狙ってきた。

「1点という差は小さくもあり、大きくもある」と、もう1人の共同HCのガエル・ミニョが言うように、精度の高い組織的なプレーで着実に得点を重ねていったイングランドと、常に追いかける展開で、WTBケリー・アルベやグリゼのトライのような個人技に救われたフランスとの差は確実にある。

 しかし、久しぶりにフランスらしさが見られた試合だった。前回のW杯の後、新体制になってから最高の出来だと言えるだろう。この大会で手応えを感じた。希望も見えた。修正点も明らかになった。W杯前の1か月半の準備期間に自信を持って臨むことができる。

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