「中長期の視点」から今を見る。金正奎[浦安D-Rocks/HO]
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厳しい状況でこそ、ベテランの言葉は一層の重みを持つ。
浦安D-Rocks、33歳のHO金正奎。
12位で迎えたディビジョン1第13節。ここ4試合はリザーブだったが、2位(9勝1分2敗)埼玉パナソニックワイルドナイツとのホストゲームで今季初先発を飾った。
前節からスタメン11人が替わったD-Rocksは、前半、先発7人変更のワイルドナイツと26-28で競った。しかし後半にグレイグ・ミラー、ヴァルアサエリ愛らを投入したリーグ初代チャンピオンに後半は0-26と完封され、最終スコアは26-54となった。
試合後、フランカーとして日本代表7キャップを重ねているHO金正奎は「もちろん今日の結果は悔しいです」と言った。ただ表情はすっきりとしており、言葉は淀みがなかった。
「今日はメンバーが先週からがらりと変わりましたが、一週間の準備期間で選手は一体となって濃厚な時間を過ごせました。それがパフォーマンスにも出たのかなと感じます。前半は特に取りきるところで取り切ることができました。そこは収穫です」
チームは11敗目を喫して最下位。過去のD1昇格チームと同様、最高峰ディビジョンの洗礼を受けている。
ただ金正奎は、今季の苦しいシーズンを経験することは「“絶対に”必要だと思います」と話した。
「自分たち(D-Rocks)は昨シーズンまでディビジョン2でもがいていましたが、そこでは正直、勝つことが当たり前のような感じでした。それがディビジョン1では当たり前じゃなくなりました。ディビジョン1を経験していない選手もいるなか、ここで歯を食いしばって闘い続けることは、どうしてもチームとして必要だと思います」
キャプテンも務めたNTTコミュニケーションズ(2022年6月で活動終了)は、2010年度に下部(トップイーストA)からトップリーグに初参戦した。その初年度からの順位は12、9、9、13、8、8。リーグワンのプレーオフ進出圏内に相当する5位(チーム最高位)に到達するまで、実に7シーズンを要した。
そんな苦闘の歴史を知っているからこそ、複数の物差しで現状をはかる余裕もある。
「勝ち負けの物差しでみてしまうと(2勝10敗は)沈みっぱなしということになってしまいます。でも『チームがちゃんと成長できているのか』という部分に目線を向けると、僕はちゃんと右肩上がりに上っていきていると思うので」
D-Rocksは2022年創設。その始動と共にフッカーとして歩み始めた金正奎は、チームや仲間の成長を楽しんでいるようにさえ見えた。
「今日はほとんどの選手が、前回の試合に出ていません。でもワイルドナイツ相手に、前半、あれだけできることを見せられた。それは組織としては良いこと。全体としてのレベルが上がってきていることの証拠にもなりました」
「もちろんこの結果は悔しいです。ただプロセスのなかで見ると、良いプロセスをどんどん踏めている。中長期的に見ると、3、5年後に『あの1年目があったからこのシーズンがあるね』と言えるようになります」