国内 2025.03.20

立川理道が語るスピアーズ充実の裏側。

[ 向 風見也 ]
立川理道が語るスピアーズ充実の裏側。
3月14日の立川理道[S東京ベイ]©︎JRLO

 天下一品の技術を披露も、手柄を誇らなかった。

 ラグビー日本代表62キャップの立川理道は、3月14日、昨季まで主将を務めたクボタスピアーズ船橋・東京ベイの一員として国内リーグワン第11節に途中出場していた。

 この日は昇格初年度の浦安D-Rocksに前半を0-15とされていたが、後半開始早々にマルコム・マークス、オペティ・ヘルといった最前列の核弾頭を投じて流れを変えた。

 いわば総合力でスピアーズが上回ろうとしたタイミングで、立川も投じられた。

 7-22で迎えた後半6分、その直前にトライをマークした廣瀬雄也に代わって登場。インサイドCTBを担う。すると要所で渋い防御、巧みなパスを重ね、再三のチャンスを作った。

 14-22とした直後の13分頃、スピアーズは相手ボールキックオフを捕るや自陣深い位置から攻め上がる。

 ひとつ、ふたつとオフロードパスを繋ぎ、みっつめを繰り出したのが立川だった。

 自陣10メートル線付近左中間の人と人の間を駆け込み、タックルを腰に受けながら後方のサポート役へ右手1本で放る。

 楕円球はテンポよく左側へ回り、俊足アウトサイドCTB のリカス・プレトリアスが敵陣22メートルエリアに侵入。スピアーズはしばらくそのエリアに居座り、21-22と迫った。

 続く19分頃、立川はスティールで向こうの反則を誘った。再びトライラインに近づくと、21分頃には自ら好突進。

スピアーズはその後の局面で攻守逆転を許すが、まもなくカウンターアタックにより陣地を挽回した。

 すると22分、敵陣中盤左中間で立川がパス。それを左隣で受けたFBの押川敦治が防御の裏へキックを転がす。ビデオ判定の末、プレトリアスのフィニッシュが認められた。26-22。

 だめを押したのは30分だ。

 敵陣ゴール前右で、立川がカウンターラックを決めてターンオーバー。起き上がり、早めに左側へ回り、ライン上のファーストレシーバーとなる。

 バトンを受け継ぐと防御に迫り、さらに左へ柔らかい弾道を投げる。

 最後はSOでゲーム主将のバーナード・フォーリーが、残ったタックラーを引き寄せた。近くにいたFLのトゥパ・フィナウに止めを刺させた。

 直後のゴール成功で33-22。そのまま今季8勝目を挙げた。

 プレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたマークスと並び、終盤の潮流を作ったひとりが立川だった。

 ただし当の本人は、自分のスキルそのものよりもそのスキルが発揮された要因について深掘りする。

「前半、出ていた選手にどこが空いているか…(スペースのありかを聞いた)。『FW周辺よりもミドル(右中間、左中間など)を狙った方がいいんじゃないですか』というアドバイスがあったので、ボールを動かすタイミングがあれば動かそうとしました。後半に出てきた大きなFWが勢いをつけてくれたのもあって、(狙い通りに)うまくできたのかなと」

 前半と比べて攻めが滑らかになったわけのひとつには、攻撃ラインを深めするというマイナーチェンジもあった。殊勲の35歳は続ける。

「前半、相手がブレイクダウンにプレッシャーをかけていた。(それを防ぐよう)少し(ラインを)ためて、勢いをつけてキャリーできればと。また、(自軍の走者が)タックルをされた後にボールをぽろぽろと落としていたのですが、ハーフタイムで『ベーシックなところを大事に』と修正できた」

 目下スピアーズは12チーム中3位。6位とやや苦しんだ前年と度比べ、好位置につける。

 D-Rocks戦はリザーブ組の奮闘が光ったと見られ、それに近い構図のゲームは他にもある。

 立川はそれを前提としながら、組織そのものの充実ぶりに話題を広げる。

「マルコム、オペティといったパンチのある選手が後半から出られるのは、チーム全体の層が厚くなった(証拠)。前半に出た若い選手たち(廣瀬、江良颯、為房慶次朗ら実質1年目の若手)の努力は素晴らしく、ワークレートも高く、ひとつひとつのプレーもいい。一方、タフな状況での選択については経験を積んでいる(途中)。そのため(序盤が)うまく進んでいないように見えるかもしれませんが、それを通して彼らは成長してゆくと思います。…そういったことを含め、80分を通してうまく(勝負を)コントロールできているのが、今年の強さ(の秘訣)かなと」

 22日は都内にあるスピアーズえどりくフィールドで第12節に臨む。現在6位の横浜キヤノンイーグルスを迎えるその一戦でも、立川はリザーブで待機する。先発組とも繋がりながら、妙技を繰り出す。

PICK UP