「クーちゃん」呼びOK クフチャ・ムチュヌがダイナボアーズの救世主に名乗り。

早速、切り札が期待に応えた。
国内リーグワンで1部昇格3季目の三菱重工相模原ダイナボアーズは、3月12日、右PRのクフチャ・ムチュヌを緊急補強したと伝えた。
故障者がかさむなどしていた最前列のてこ入れに、身長187センチ、体重120キロの27歳に白羽の矢が立った。
当の本人は、かねて活況のこの国に興味を持っていた。
「ここ数年間、日本のラグビーがどんどん成長していることを世界の誰もが知っている。(各国代表など)ベストな選手が集まっているこの場所で自分がどこまでできるのか、試したかった。(誘いの)電話があった時は、迷わずに『はい』と答えました」
母国である南アフリカのブルズからやってきた戦士は、たけびしスタジアム京都での第11節で来日初先発を果たした。公式発表から4日後の16日のことだ。
旧トップリーグ時代に5度優勝の東京サントリーサンゴリアスへ、粘り腰の突進、何よりスクラムワークで対抗した。
後半20分頃には鋭く差し込んで反則を奪い、その瞬間にうずくまりながらもテーピングを施しプレーを続けた。
「少し肘をひねりましたが、大きな問題はありません。スクラムに関していい土台があることを見せられた。今後さらに作り上げていきたいです」
終了の笛が鳴る約4分前までフィールドに立った。負荷のかかる位置にあっては珍しい。グレン・ディレーニーヘッドコーチの信頼の証か。指揮官は言う。
「合流してすぐにチームになじみ、エナジーを発揮してくれた。きょうは雨が降っていた。普通の日本ラグビーの展開とは違うゲームになった中、どれくらいは走っているのかを見ながら判断しました。通常の試合であれば(運動量が増すため)40~45分ほどで代えないといけなかったかもしれませんが」
ノーサイド。34-22。クラブにとり同カード初白星を掴んだ瞬間を、殊勲の3番はこう喜んだ。
「試合のスピードがとても速かったのが印象でした。いまはそこに合わせている最中です。ただ、初めてこの相手に勝ったという瞬間に、その一員として貢献できた。光栄なことです」
穏やかな顔つきもあってか、部内では早速「クーちゃん」の愛称で親しまれる。
「不満はありません! むしろ、他に好きな呼び方があればそれでも」
この午後4勝目のダイナボアーズは12チーム中10位につける。
22日には岐阜メモリアルセンター長良川で同11位のトヨタヴェルブリッツとぶつかる。入替戦のボーダーライン上にあって、契約期間が今季限りという驚異のニューカマーはこんな未来を見据える。
「先のことは何も決まっていません。ただ、いまを楽しんでいるので、日本でプレーし続けたい気持ちはあります。ダイナボアーズも、優勝する土台を持っている」