【リーグワン】ブラックラムズ、16連敗中のサンゴリアスから大金星。1点差を守り切る
その時、電光掲示板の時計は79分50秒を表示していた。
ブラックラムズがゴールラインを背にし、サンゴリアスボールのスクラム。得点は33-32でブラックラムズのリードはわずかに1点。
前節、ラスト1プレーで反則をおかしPGを決められ、ヒートに逆転負けを喫したブラックラムズ、その悪夢を思い出したファンも多くいただろう。
「またか…」
しかし、この日のブラックラムズのディフェンスは最後まで規律を守り、堅かった。
ラストワンプレーで逆転を狙うサンゴリアスは、このスクラムでプレッシャーをかけてきた。だが、崩れかけた瞬間にNO8タマティ・イオアネが左サイドにボールを持ち出した。
80分経過のホーンが鳴る中でサンゴリアスの猛攻が続く。途中出場の中村亮土、箸本龍雅、そしてこの日何度もゲインラインを突破したCTBイザヤ・ブニヴァイが、次々とトライラインを目指してタテを突く。そのたびに黒い塊が二人がかり、三人がかりで黄色いジャージーを押し戻した。
そして14フェイズめでSH流大からパスを受けたSO髙本幹也から、2人飛ばしで左タッチライン際で待ち受けるFB河瀬諒介にボールが渡る。
左コーナーを目掛けて疾走する河瀬に、SO中楠一期が必死のタックル。二人がもつれるようにタッチラインの外に飛び出すも、河瀬はインゴールにグラウンディング。
両者が自分のプレーに確信しガッツポーズをみせる紙一重のプレー。
タッチが先か、グラウンディングが先か。
TMOの結果、タックルを受けた河瀬の左足がタッチラインに触れるのが一瞬早かったという判定でノートライ。そしてノーサイドの笛。
抱き合って喜ぶブラックラムズの選手たち。
2分にも及んだサンゴリアスのアタックを、ノーペナルティーで守り抜いたブラックラムズの守り勝ちだった。
この日、立ち上がりからブラックラムズには勢いがあった。
サンゴリアスは2分に髙本のPGで先制するも、直後にブラックラムズはラインアウトから左に展開、サインプレーでWTBネタニ・ヴァカヤリアが左にトライ。
さらにジョシュ・グッドヒューのキックチャージから10分にブロディ・マクカランがトライラインを越える。そして14分にはFBアイザック・ルーカスのカウンターアタックから、サポートしたLOマイケル・ストーバーグがインゴールまで運び19-3と試合の主導権を握った。
サンゴリアスは河瀬、PR森川由起乙のトライで19-17と追い上げ、前半終了間際、スクラムで反則を得ると約40㍍のPGを髙本が決めてついに19-20と逆転した。
しかし、ブラックラムズは流れを渡さなかった。後半開始早々、ゴール前のアタックでSH・TJペレナラからパスを受けたルーカスがオフロードで中楠にボールを繋ぎ逆転、さらにNO8リアム・ギルが流のキックをチャージ、ターンオーバーからCTB池田悠希のトライにつなげ33-20と突き放した。
サンゴリアスも、速いパス回しから16分に河瀬が左隅にトライ、25-33と追い上げる。23分には自陣でブラックラムズボールラインアウトを206㌢のLOハリー・ホッキングスがスチールし、タマティの前進から素早く右に展開、パスをつないで河瀬の連続トライ(ゴール成功)でついに1点差と迫ったが、ブラックラムズが最後まで粘りのディフェンスを見せ、逆転を許さなかった。
「昨シーズや先週の試合もそうですけど、これまでタイトになったゲームを最後に落としてしまうことが多くて、そういう悔しい思いをしたくなかった。最後はみんなで規律を守り、守り切れたのは大きかったし、チームとして成長したなと感じました」と、最後にビッグタックルを決めた中楠は試合を振り返る。
この試合でPOTMに選出されたペレナラの加入も攻守でチームに大きな影響を及ぼしているが、それだけではない。ペレナラとともに今季加入した、元ワラビーズのリアム・ギルはメンタルの成長を挙げる。
「BL東京とのプレシーズンマッチで、ミスが起きたときのスクランブルディフェンスなどがうまくいき、それが形になってきている。ゴール前ディフェンスでも、ハードワークし続けるというメンタリティができてきた」と話す。
武井日向キャプテンは「昨年は一貫性がなかったが、今季はまだ2試合しかやってないが、先週と同じフィジカリティ、気持ち、ハードワーク、エフォートを今週もできたというのが、チームにとって昨シーズンよりレベルアップしている部分だと思う」と手ごたえを口にした。
一方、開幕連敗となったサンゴリアス・堀越康介キャプテンは「僕たちがラグビーをする中で一番大事にしているブレイクダウンで圧力をかけてきて、そこで受け身になったところでモーメンタムがあちらに傾いた」と悔しさをにじませた。
16連敗中だったサンゴリアスから挙げたこの勝利は、ブラックラムスにとっては自信をつける大きな1勝になった。
年明けには埼玉WK(1月4日)、トヨタV(1月11日)、S東京ベイ(1月18日)と強豪チームとの3連戦が待っている。
真価が問われる大事な戦いに向け、「またしっかりいい準備していきたい」という武井キャプテンの力強い言葉からは、チームの確かな成長の跡が感じられた。