イーグルスの新しい職人。ビリー・ハーモン常に相手を「警戒」。
かゆいところに手が届くような働きだった。
12月22日、神奈川・日産スタジアム。横浜キヤノンイーグルスに新加入のビリー・ハーモンが、国内リーグワン初戦で先発フル出場を果たした。
FLとして渋く光った。
自軍の防御ラインを破った相手を追いかけ、自陣22メートル線付近左でミスを誘ったのは前半36分頃のことだ。オフロードパスを試みるランナーに圧をかけ、手からボールが離れたと見れば受け手の進路へ回り込んだ。
後半6分には、ターンオーバーが交互に繰り返される中で堅陣を敷く。自陣10メートル線エリア右中間で向こうの攻めを待ち構え、隙を突こうとする走者を捕まえた。
続く18分頃になると、自陣中盤左でこぼれ球を確保した。信条は「予測不能な動き」。身体を回転させるランスキルでタックラーをかわし、自ら前方に蹴った楕円球をチェイス。先方の捕球役へタックルし、23分の得点まで仲間を敵陣に居座らせた。
「常に警戒しながら、(集中力を)切らさずにやっているのです」
昨季王者の東芝ブレイブルーパスに21-28と惜敗も、爪痕は残した。29日のノエビアスタジアム神戸での第2節においても、デビュー戦時と同じ6番をつける。
2季連続4強入りのクラブで日本一に輝くべく、かねてこう意気込む。
「ベストを尽くして、1位になることに貢献したいです」
身長187センチ、体重104キロの30歳。母国ニュージーランドでは2018年から7シーズン、クルセイダーズ、ハイランダーズのメンバーとして国際リーグのスーパーラグビーへ参戦した。ハイランダーズでは主将も託された。
来日したのは選手として、家庭人として新たな経験が積みたかったからだ。2023年にオールブラックスXVのメンバーとして来日した際、近い将来のリーグワン参戦に乗り出すことにした。
かたやイーグルスでは、長らくFLで主戦級だったコーバス・ファンダイクが24年6月までに引退。’24年にはマオリ・オールブラックスでも船頭役を担ったハーモンは、その穴を埋めるのを期待されているだろう。
本人はいま、就任5季目の沢木敬介監督が作った環境に感銘を受けている。
「ここには結束力がありますよね。1日が(短時間の練習に)凝縮されていて、そこに一点集中という感じもあります」
グラウンド外でも充実感を得る。オフには家族で鎌倉へ出かけた。刺身になじむのには時間がかかりそうだが、焼肉が楽しみだと笑う。
首都の東京を念頭に置いてか、「大都会であるにも関わらず治安がいい」ことにも驚く。長丁場のシーズンで各地を回り、務めを果たす流れで見聞を広める。