日本代表 2024.06.28

日本代表・原田衛、初キャップ獲得の裏側。JAPAN XVではゲーム主将も。

[ 向 風見也 ]
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日本代表・原田衛、初キャップ獲得の裏側。JAPAN XVではゲーム主将も。
イングランド戦で代表戦初出場を遂げた原田衛(撮影:高塩 隆)

 粋な計らいに感銘を受けた。

 ラグビー日本代表の原田衛は6月22日、東京・国立競技場でイングランド代表と激突。試合後のフィールドでは、イングランド代表で自身と同じ2番をつけたジェイミー・ジョージ主将にジャージィの交換を願い出た。

 25歳の原田にとって、この一戦は日本代表としての初陣だった。その旨を原田が9学年年上のジョージへ話したら、何と、このように返された。
「君のジャージィは、そのまま持っていていい」

原田は赤と白の2番をまとったまま、白の2番を受け取った。

「(自分のジャージィは)多分、親にあげると思います」

改めて、キャップ(テストマッチ=代表戦出場の証)を獲得した感想は。

「これを目標にずっとやってきたんですけど、何というか特別な感情はなかったです。まぁ、イングランド代表に勝とうとしていたので勝てなくて悔しいです」

 昨秋のワールドカップフランス大会で3位だった強豪国とは、交替するまでの49分間、ぶつかり合った。身長175センチ、体重101キロの新星は、体格で上回るライバルとのコンタクトで手応えがあったという。

 所属するリーグワン1部の東芝ブレイブルーパス東京では、ニュージーランド代表としてフランス大会準優勝のFL、シャノン・フリゼルらと身体を当てている。日頃の積み重ねで力をつけていたと、再確認できた。

「シャノンとはずっとタックル練習をしていた。『(イングランド代表も)こういうフィジカルなのかな』と思っていました。…シャノンのほうが、強かったです」

 先頭の中央で束ねたスクラムでも、好感触を掴めた。最初の1本目の段階で、さほど重圧を受けずに済んだ。
 6日に現体制が本格始動してから、新首脳陣のニール・ハットリー、オーウェン・フランクスがいつも組む前の予備動作を確認してくれていた。

「横との繋がり、後ろとの繋がり…。ずっとやって(チェックして)いました。それが結果に繋がったかなと」

 遠い間合いからヒットされた際、コラプシング(塊を故意に崩す反則)を取られることもあった。そのエラーについてはこうだ。

「僕らが前に出たと思っても、その崩れ方をしたら全部(ペナルティーを)取られる。そこは、僕らに経験値がなかった」

 今回、日本代表の最前列のスターターは、戦前の総キャップ数をわずか3としていた。原田と左PRの茂原隆由はノンキャップだった。
 裏を返せば、これからキャリアを重ねる若者が貴重な財産を得られたか。当初の日本代表は低さで対抗しようとしながら、途中でやや高さをつけるよう微修正。おかげで互角に渡り合えた。原田は続ける。

「次(の対戦時)は、全部、押したいなと」

 約9年ぶりに登板のエディー・ジョーンズヘッドコーチは、「超速ラグビー」を謳う。この日は、序盤の連続攻撃でその片鱗を示した。

 ただ、得点機を逃すうちに主導権を握られた。17-52と大敗。この事実を、原田はどう捉えるか。

「最初、僕らのアタックは通用していた。ただ(中盤以降は)『22』(敵陣22メートルエリア)に入った後に(点を)獲り切れず、相手を勢いづけてしまった。あとは、まだ、チームが(結成して日が)浅くて…。攻め過ぎたというか、もう少し、賢くやってもよかったかなと」

 スペースを見つければエリアを問わず果敢にラン、パスを繰り出すのが「超速ラグビー」の魅力に映るが、場合によっては攻める時間、いったんキックで球を手離す時間の配分も考慮すべきか。ジョーンズも、「超速ラグビーとは、決して(攻めるか、キックを蹴るかの)バランスを取らないでプレーするという意味ではない」と強調している。

 原田は言う。

「きょうは僕ら『超速ラグビー』を見せたかったのでアタックをしましたし、80分間アタックでプレッシャーをかけ続けようとしましたが、そこまで身体が追いついていないのが正直なところです。もうちょっと(スタイルに)慣れないといけない」

 これから上位国を倒すのに必要なことはと聞かれ、こう即答した。

「チームで、エディーさんと一緒に、(いまの戦法を)信じてやっていくしかない。やり続けることが大事です」

 日本代表はこの日で一時解散し、一部のメンバーを入れ替える形で「JAPAN XV」が再編成された。

 引き続きジョーンズが率いるこのグループで、原田は共同主将の1人となった。
 29日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれる対マオリ・オールブラックス2連戦のファーストゲームでは、ゲーム主将も担う。

 初キャップをもらって間もないなか、中心選手の扱いだ。「ゲームプランと、FWのやることを(自らが)理解する。プレーで引っ張っていかないといけない」と意気込む。

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