【トップ14】いよいよファイナル。23回目の優勝を狙うトゥールーズに、決勝初進出のボルドーが挑む。
昨年8月18日に開幕した今シーズンのトップ14が、いよいよ今週末(現地時間6月28日21時5分)に決勝戦を迎える。
準決勝でラ・ロシェルを破り、23回目の優勝を狙うトゥールーズと、同じくスタッド・フランセを破り、初の決勝進出を果たしたボルドーの対戦となった。
準決勝で勝利した後、円陣でトゥールーズのユーゴ・モラ ヘッドコーチ(以下、HC)が選手に話しているのが聞こえてくる。
「試合内容、良くなかったのはわかっているな。クソみたいな試合をした。でも決勝進出だ。さあ行くぞ。来週はこんな試合はするな。あり得ない!」
彼が言う通り、この日のトゥールーズはラ・ロシェルのFWに圧倒され、プレッシャーを受け、何度も密集でペナルティーを冒した。ハンドリングエラーもあった。
トゥールーズは5月25日のチャンピオンズカップ決勝戦でアイルランドのレンスターに延長の末、31-22で勝利し、3年ぶりに欧州チャンピオンに返り咲いた後、多くの主力を休ませていた。そのため、この日のメンバーでの試合はほぼ1か月ぶり。試合勘や選手同士の連携が十分でないのが感じられた。
「前半は自分たちのリズムを、自分たちのラグビーを探しているようだった」とモラHCも振り返る。
15-20でリードされて前半を終えた。しかし、後半、ラ・ロシェルは2枚のレッドカードを出され、13人で戦うことになる。トゥールーズが3トライを返して39-23で勝利した。
もう一方の決勝進出チームであるボルドーは、準決勝であえて相手の土俵で戦うことを選んだ。FWのフィジカルバトルだ。スタッド・フランセのFWを上回るパワーとエネルギーでボルドーは前半に相手ゴール前モールから2トライを取り、しかも自陣ゴール前でスタッド・フランセのモールを食い止め守り切り、前半を17-10でリードして終えた。
後半、スタッド・フランセのSHロリー・ココットが敵陣でボールを持ち、切り込んでいくが無謀だった。3人のディフェンスに囲まれてボールを手放し、ボルドーはそこからボールを繋いで70メートル駆け上がり5点を追加する(22-10)。
その後、ボルドーのFWに疲れが見えてきた。スタッド・フランセが得意のゴール前モールからトライを決めて22-15と7点差に詰め寄るが、そこからはボールを持ってもキックでボルドーに渡し、ボルドーもキックで返す蹴り合いが続く。この試合、スタッド・フランセは46回キックを使い、それ対してボルドーは47本のキックで応えた。両チーム合わせて93。ボールインプレーの時間が30〜35分と言われているから、1分に3本のキックを蹴り合っていたことになる。蹴り合いが続くことを、フランスの記者やラグビー通は『ピンポンラグビー』と呼んで、あまり好まない。
79分にようやくスタッド・フランセが敵陣深く入りスクラムを得る。ピンクのジャージーのスタッド・フランセが押す。ボルドーのFWは力を振り絞って抵抗する。スクラムが回って組み直す。今度はボルドーのコラプシング。アドバンテージでボールをスクラムから出してパスするが、ノックオンでペナルティーに戻る。タッチを選ぶ。点差は7点、トライ+コンバージョンで同点になり延長戦に持ち込むことができる。
スタッド・フランセはラインアウトからモールを組み、ゴールポスト側へ寄せようとする。ボルドーがモールを崩し、レフリーのアドバンテージの手が上がる。ピンクの戦士はゴールラインを目指して進もうとするが、到達できない。笛が吹かれる。ボルドーは1人シンビンになる。スタッド・フランセは再びラインアウトを選んだ。彼らのモールはゴールラインを越えた。しかし、コンバージョンを狙うには端すぎた。ボールは惜しくもポストから逸れ、22-20でフルタイムとなった。
ボルドーは2点差で逃げ切り、現在のクラブの形態『ユニオン・ボルドー・ベーグル』として初の準決勝進出に続き、初めての決勝への切符を手にした。この日の会場はボルドーのスタッド・マトムット・アトランティック。詰めかけた地元のサポーターと歓喜し合った。
「今年は自国開催のワールドカップ(以後、W杯)もあり、どのクラブにも例外的なシーズンだった。W杯後はどうなるのだろうという不安もあったが、シーズンは見事に成功し、魅力的なラグビーをするという評判の2チームの組み合わせの決勝戦になった。トゥールーズにはフランス代表の選手がたくさんいるし、ボルドーにはレ・ブルーのBKラインが揃っている。トップ14の素晴らしいショーケースとなる決勝戦のカードだ」と喜ぶのは、LNR(プロリーグ運営団体)のルネ・ブスカテル会長だ。
今季、トップ14でトゥールーズのトライ数は108で1位、ボルドーは86トライで2位につけている。どちらも華のあるアタッキングラグビーを見せてくれるが、ボルドーはWTB(ダミアン・プノー、ルイ・ビエル=ビアレ)がゾーンを外れて自由に動き回り一気に駆け上がって得点に繋げるのが特徴だ。そのため1フェーズでのトライが多い。対するトゥールーズはシステムが確立されており、フィールドにいる15人が一体となってフェーズを重ねてトライを創造する。
今年のトゥールーズは2冠を達成した2021年よりもさらに一体感が感じられる。現地の戦前予想はトゥールーズ優勢という声が多い。
ボルドーも初の決勝で、プレッシャーを感じず思いきりプレーできるかもしれないが、ここまでに蓄積した疲労が気になる。
しかも、良くない試合をした後のトゥールーズほど怖いものはない。次の試合では、必ず自分たちのベストなラグビーをしてくる。
一つ気になることと言えば、例年トップ14の決勝の会場であるスタッド・ド・フランスが、現在オリンピックの準備に入っているために使用できず、今年はマルセイユのスタッド・ヴェロドロームで行われる。このスタジアムとアントワンヌ・デュポンの相性があまりよくないのだ。ここで行われた2022年11月フランス代表の南アフリカ戦ではレッドカードで退場になった。そして昨年のW杯プール戦のナミビア戦では頬骨を骨折した。
ジンクスを払拭できるようにプラスの想念を送ろう。