【車いすラグビー日本代表/カナダカップ2024】日本は予選ラウンド全勝で決勝進出!
車いすラグビー界をリードする世界トップ6がしのぎを削る「Wheelchair Rugby CANADA CUP 2024」(以下、カナダカップ)は大会3日目の6月8日、予選ラウンド最終日を迎え、日本はカナダ、フランスとの接戦を制し予選ラウンド全勝で決勝進出を果たした。
東京パラリンピック以降、車いすラグビーは「世界ランキング」の数字だけでその国の強さを計れないほど、上位6か国の競技レベルが拮抗している。また、情報戦の様相も呈しており、相手チームを分析し対策を施すなかで、各国のプレースタイルも変化している。
2か月後にパリ・パラリンピック開幕を控え、今大会での対戦が、パリ2024大会での戦いにどう影響するのか、前哨戦として興味深い大会となっている。
6チーム総当たりの予選ラウンドで、日本はここまで3勝0敗と好調さをキープしている。
この日おこなわれたカナダとの対戦でも、ティップオフを制し、開始早々にターンオーバーを奪った日本が主導権を握った。
試合は比較的スローペースで進み、相手のトーンをうかがいながら得点を重ねていく。第1ピリオド残り14秒で9-7とした日本は、もう1トライをもぎ取ろうとギアを上げたカナダの攻撃を渾身のディフェンスで退けた。
大会ごとにブラッシュアップしたパフォーマンスを見せる橋本勝也は、カナダの絶対的エース、ザック・マデルをクイクイッとチェアワーク(車いす操作)でかわしトライを挙げる。
4月にウエールズで開催された「クアードネーションズ」後から、新しい競技用車いすに乗り始めたという橋本。体重が軽いのをカバーするため、少しでも車いすを重くして当たりを強くしたいというのが改良のポイントだと話す。
そのため、今大会に向けては練習で車いす操作を重点的におこない、豪州代表のライリー・バットやカナダ代表のマデルといった(自分と障がいのクラスが同じ)世界的プレーヤーに対して、自分の敏捷性がどこまで通用するのか挑むということを課題とし臨んでいる。
「車いす操作が重く感じている部分もある」と実戦での感触を語るが、実際のプレーにおいては、スピードも敏捷性も増した印象だ。
2つの違うラインアップで橋本が出場した第2ピリオドは一進一退の展開を見せ、20-20の同点で試合を折り返した。
数々のチャレンジの中では失敗も起きるが、日本はしぶとく、粘り強く後半を戦った。
ベテランと若手を交代させながら試合を進める。第4ピリオドでは、相手の車いすが浮くほどのタックルを浴びせ池崎大輔がターンオーバーを取り、この試合最大となる5点差にリードを広げ会場を沸かせた。
試合終了を告げるブザーが鳴るまでトライにこだわるカナダは、橋本がファウルによりペナルティーボックスに入っていた、試合時間残り1分からの3連続得点で1点差にまで詰め寄る。
ただ、日本もこのままでは終われないと、池 透暢のラストトライで1点を追加し、44-42で勝利を手にした。
続いておこなわれたフランスとの一戦。
自国開催となるパラリンピックに向けてメキメキと実力を上げているフランスは、ここまで3勝1敗。最近の大会では毎回のように、日本と接戦を繰り広げている。
スピードを誇るハイポインター(障がいの比較的軽い選手)2名を擁するフランスのファースト・ラインアップに日本も負けてはいない。試合が動いたのは11-11の同点で迎えた第2ピリオド。池―池崎―中町俊耶―倉橋香衣のラインアップがハマり、コートのセンター付近で中町が相手のパスをカットする形で3回のターンオーバーを奪い、一気にフランスを引き離して24-20で前半を終了した。
しかし、ここですごすごと引き下がらない熱量が、いまのフランスにはある。相手の強いプレッシャーが点差を縮めていく。日本がわずかにリードを保ったまま、試合は終盤へと差し掛かる。
時計が残り1分を表示した頃、長谷川勇基と小川仁士が、ボールをキャリーしていたフランスのスピードスター、セバスチャン・ベルダンをがっちりと挟み、そこからかろうじて出たショートパスを橋本がキャッチ。トライへとつなぎ勝利をたぐり寄せた。激闘の末、47-45でノーサイド。
日本は予選ラウンド5試合すべてで勝利を収め、1位通過で決勝進出を果たした。
池崎は「どのラインアップも全員がハードワークして、最後まであきらめなかったとことが結果につながった」とフランス戦の勝因を語った。
そして決勝に向け、「1試合目から学んだこと、5試合目まで成長したもの、それをコートで出せれば結果はついてくる。その力を出す、出さないは自分たち次第。日本はその力、勝つ力を出せるチームだ。それを明日しっかり見せたい」と意気込みを語った。
日本は大会2連覇をかけ、大会最終日の6月9日、オーストラリアとの決勝に臨む。