【サニックスワールドラグビーユース交流大会】初の日本チーム王者となったのは大阪桐蔭。桐蔭学園との熱戦に仲間、観客の視線は釘付け
先に戦いを終えた、世界のあちこちからやって来た高校生たちの目を釘付けにした。
5月5日は、サニックスワールドラグビーユース交流大会の最終日だった。
14時10分から始まったファイナルは17-15。大阪桐蔭が桐蔭学園に勝ち、頂点に立った。
25回の大会の歴史の中で、日本のチームが優勝したのは今回が初めて。各校が帰国した後、それぞれの国で話したくなるような熱戦だった。
雨がパラつく中でおこなわれた試合は、前半は7-3と、大阪桐蔭がリードした。
PGで先制を許すも、ハーフタイム直前にNO8大門一心が相手の防御をこじ開けてインゴールに入った。
自陣でこぼれ球を拾い、約2分攻め続けて奪ったトライだった。
後半4分、大阪桐蔭はラックからCTB近藤烈がボールを持ち出して前進。走り切ってトライラインを越え、14-3と差を広げた。
SO上田偉楓はキックを長短左右にうまく使い、パスを出すタイミングも絶妙。チームは、順調に勝利へ近づいているように見えた。
しかし桐蔭学園の強いコンタクトプレーとタックル、そして強い意志が、傾きかけていた勝負の天秤をもとに戻した。
可能な限り立ってつなぐ。高速で攻める。そんなスタイルを徹底した。後半21分、途中出場の坪井悠がスペースに蹴り込んだボールをWTB草薙拓海が受け、インゴールに抑えた。
14-8と差が詰まった後、大阪桐蔭はPGで17-8と引き離した。
しかし、桐蔭学園の驚異の粘りに最後の最後まで苦しむ。タックルしてもタックルしても、紺色のジャージーはアタッカーが湧き出てきた。
桐蔭学園のLO足立佳樹が左サイドの小さなスペースを駆け抜けてトライを奪ったのが後半28分。7点を追加し、スコアは17-15と縮まった。
そして、リードする側には残り2分が長かった。どれだけタックルしても攻撃を寸断できない。15フェーズを重ねられてPKを与えた。
タッチキックを蹴り出し、ゴールラインに近づいてモールを組まれる位置だった。しかし、PKはタッチインゴールラインを割った。
大阪桐蔭ボールのスクラム。SO上田が外にボールを蹴り出して激戦は終わった。全国選抜大会に続いて、またも頂点に立った。
▼こういう試合になるのは分かっていた。
宗像の山を切り拓いて作ったグラウンドで、国内最高レベルの高校ラグビーを目撃できた幸せを、そこにいた人たちが感じた。
桐蔭学園のFL申驥世主将は、「大阪桐蔭さんは、強くて、速くて、うまかった」と話し、勝者へのリスペクトの気持ちを示した。すべてを出し切った表情だった。
「60分間、最後まで攻め続けられた」と、自分たちのパフォーマンスを振り返って手応えも感じていた。
ラックを作らず立ってつなぎ、はやく順目に攻める。そのスタイルが相手を後退させた。
「(体が)小さい分、2対1、3対1でタックルした」防御も、相手を押し込んだ。
自分たちがどう生きるか、道が見える大会となった。
優勝した大阪桐蔭のCTB名取凛之輔主将はタックルをしまくって、白いジャージーを泥だらけにしていた。
「素直に嬉しい」と笑顔を見せた主将は、「いいところもありましたが、ディフェンスの規律など、反省もあります。課題がまた見つかった大会でした」と落ち着いていた。
「タフな試合になると分かっていました。あちらは選抜のリベンジの気持ちがある(準決勝で対戦し、13-7で大阪桐蔭の勝利)。それに対し、こちらもチャレンジャーの気持ちで戦おうと言いました」
それでも、「オフロード(パス)の精度も高く、何回も下げられ、ペナルティも取られ、トライに結びつけられた」と苦しんだ。
その圧力をはね返すことができたのは、「60分間、一丸となって戦ったからだと思います」。
激戦続きの5日間を振り返り、「海外のチームと戦って、一人ひとりがワークレートをもっと高め、走ることが大事とあらためて分かりました」という。
選抜大会に続いてまたも頂点に立ったけれど、「過信せず、チャレンジし続けます」と気を引き締めた。
綾部正史監督も「地道に自分たちらしく、日々上を目指します。自分たちのラグビーというものを持ち、こだわっていきたい」と話したが、チームの成長に手応えも感じている。
「残り10分で、ディフェンスのギアを上げられるようになってきています」と選手たちを愛でた。
▼みんな成長、楽しんだ。決して忘れない1週間
決勝戦の前には、『World XV Friendly Match』がおこなわれた。
各チームから推薦された2、3人ずつが集まってコンバインドチームを2つ作り、『SANIX BLUE』(プールA、B)×『SANIX WHITE』(プールC、D)が実施された。
大会中にプレータイムの少なかった選手やBチームの選手などで構成されたチームには、仲間から大きな声援が送られた。
観客も、躍動する選手たちの姿をあたたかく見守った。
15-5と『SANIX BLUE』が勝った試合を終えたあと、『BLUE』の一員として戦った竹内楓稀は、「楽しかった」と歯を見せた。
一昨日に初めて顔を合わせ、短い準備期間しかなかった。海外チームからの選手との間には言葉の壁もあったけれど、いつの間にか意思疎通できるようになったそうだ。
BKのプレーは、できるだけシンプルにして順目に攻めることを基本にした。
「サインプレーも、ジャパンやフィジー、ナミビアという簡単な呼び方にして、難しいことはしませんでした」
短い活動だったけれど、濃密で楽しい時間だった。
3位決定戦のセント オーガスティンズ カレッジ(豪州)×サウスランド ボーイズ ハイスクール(NZ)は、ライバル心剥き出しの熱い試合となった。
5トライを挙げたセント オーガスティンズ カレッジが33-21のスコアで勝者となった。
5位には、東福岡を33-7で下した御所実が入った。
中谷圭部長は、「FWが前に出られました。やりたかったモール勝負に持ち込むことができたので、得点できた」と話し、全国選抜大会後、スクラム強化と、モール、ラインアウトの整備をしてきたことが結果に結びついたとした。
敗れた東福岡のFL古田学央主将は、今大会中も見られた好不調の波について、「細かいミスが出ると自分たちのスタイルを出せなくなる」と反省した。
「これからも3・23(選抜で1回戦負けした日)のことを忘れることなく、自分たちに厳しく積み上げていきます」
参加した全16チームが同じように5試合戦い、最終日のこの日、宗像の地で得たものを披露した。
15位決定戦で韓国の忠北高校を76-5と圧倒した中華台北の建国中学高級学校も、12トライを挙げてベンチは終始大騒ぎだった。
自身もトライを決めたCTBウァン・ボーシュェン主将は、「強いチームと対戦する機会があり、辛抱してプレーできるようになりました。チームワークや、パスの意識が高くなったことが結果につながりました」と話し、今大会初勝利を喜んだ。
試合後、対戦相手と一緒に撮った写真はいつまでも色褪せない。
デジタルの世界だからではなく、濃い緑に囲まれた地での1週間の記憶は、ラグビーにおいても人生においても、いつまでも自分を支えてくれるものになる。