国内 2024.05.05

【サニックスワールドラグビーユース交流大会】初の日本チーム王者となったのは大阪桐蔭。桐蔭学園との熱戦に仲間、観客の視線は釘付け

[ 田村一博 ]
【サニックスワールドラグビーユース交流大会】初の日本チーム王者となったのは大阪桐蔭。桐蔭学園との熱戦に仲間、観客の視線は釘付け
全国高校選抜大会に続いて頂点に立った大阪桐蔭。(撮影/松本かおり)



 先に戦いを終えた、世界のあちこちからやって来た高校生たちの目を釘付けにした。
 5月5日は、サニックスワールドラグビーユース交流大会の最終日だった。

 14時10分から始まったファイナルは17-15。大阪桐蔭が桐蔭学園に勝ち、頂点に立った。
 25回の大会の歴史の中で、日本のチームが優勝したのは今回が初めて。各校が帰国した後、それぞれの国で話したくなるような熱戦だった。

 雨がパラつく中でおこなわれた試合は、前半は7-3と、大阪桐蔭がリードした。
 PGで先制を許すも、ハーフタイム直前にNO8大門一心が相手の防御をこじ開けてインゴールに入った。
 自陣でこぼれ球を拾い、約2分攻め続けて奪ったトライだった。

 後半4分、大阪桐蔭はラックからCTB近藤烈がボールを持ち出して前進。走り切ってトライラインを越え、14-3と差を広げた。
 SO上田偉楓はキックを長短左右にうまく使い、パスを出すタイミングも絶妙。チームは、順調に勝利へ近づいているように見えた。

両チームのスキルと魂がぶつかりあったファイナル。(撮影/松本かおり)

 しかし桐蔭学園の強いコンタクトプレーとタックル、そして強い意志が、傾きかけていた勝負の天秤をもとに戻した。
 可能な限り立ってつなぐ。高速で攻める。そんなスタイルを徹底した。後半21分、途中出場の坪井悠がスペースに蹴り込んだボールをWTB草薙拓海が受け、インゴールに抑えた。

 14-8と差が詰まった後、大阪桐蔭はPGで17-8と引き離した。
 しかし、桐蔭学園の驚異の粘りに最後の最後まで苦しむ。タックルしてもタックルしても、紺色のジャージーはアタッカーが湧き出てきた。

 桐蔭学園のLO足立佳樹が左サイドの小さなスペースを駆け抜けてトライを奪ったのが後半28分。7点を追加し、スコアは17-15と縮まった。
 そして、リードする側には残り2分が長かった。どれだけタックルしても攻撃を寸断できない。15フェーズを重ねられてPKを与えた。

 タッチキックを蹴り出し、ゴールラインに近づいてモールを組まれる位置だった。しかし、PKはタッチインゴールラインを割った。
 大阪桐蔭ボールのスクラム。SO上田が外にボールを蹴り出して激戦は終わった。全国選抜大会に続いて、またも頂点に立った。

▼こういう試合になるのは分かっていた。

 宗像の山を切り拓いて作ったグラウンドで、国内最高レベルの高校ラグビーを目撃できた幸せを、そこにいた人たちが感じた。
 桐蔭学園のFL申驥世主将は、「大阪桐蔭さんは、強くて、速くて、うまかった」と話し、勝者へのリスペクトの気持ちを示した。すべてを出し切った表情だった。

桐蔭学園のFL申驥世主将。(撮影/松本かおり)

「60分間、最後まで攻め続けられた」と、自分たちのパフォーマンスを振り返って手応えも感じていた。
 ラックを作らず立ってつなぎ、はやく順目に攻める。そのスタイルが相手を後退させた。
「(体が)小さい分、2対1、3対1でタックルした」防御も、相手を押し込んだ。
 自分たちがどう生きるか、道が見える大会となった。

 優勝した大阪桐蔭のCTB名取凛之輔主将はタックルをしまくって、白いジャージーを泥だらけにしていた。
「素直に嬉しい」と笑顔を見せた主将は、「いいところもありましたが、ディフェンスの規律など、反省もあります。課題がまた見つかった大会でした」と落ち着いていた。

「タフな試合になると分かっていました。あちらは選抜のリベンジの気持ちがある(準決勝で対戦し、13-7で大阪桐蔭の勝利)。それに対し、こちらもチャレンジャーの気持ちで戦おうと言いました」

 それでも、「オフロード(パス)の精度も高く、何回も下げられ、ペナルティも取られ、トライに結びつけられた」と苦しんだ。
 その圧力をはね返すことができたのは、「60分間、一丸となって戦ったからだと思います」。

 激戦続きの5日間を振り返り、「海外のチームと戦って、一人ひとりがワークレートをもっと高め、走ることが大事とあらためて分かりました」という。
 選抜大会に続いてまたも頂点に立ったけれど、「過信せず、チャレンジし続けます」と気を引き締めた。

 綾部正史監督も「地道に自分たちらしく、日々上を目指します。自分たちのラグビーというものを持ち、こだわっていきたい」と話したが、チームの成長に手応えも感じている。
「残り10分で、ディフェンスのギアを上げられるようになってきています」と選手たちを愛でた。

▼みんな成長、楽しんだ。決して忘れない1週間

 決勝戦の前には、『World XV Friendly Match』がおこなわれた。
 各チームから推薦された2、3人ずつが集まってコンバインドチームを2つ作り、『SANIX BLUE』(プールA、B)×『SANIX WHITE』(プールC、D)が実施された。

出場した全員が楽しんだ『World XV Friendly Match』。(撮影/松本かおり)

 大会中にプレータイムの少なかった選手やBチームの選手などで構成されたチームには、仲間から大きな声援が送られた。
 観客も、躍動する選手たちの姿をあたたかく見守った。

 15-5と『SANIX BLUE』が勝った試合を終えたあと、『BLUE』の一員として戦った竹内楓稀は、「楽しかった」と歯を見せた。
 一昨日に初めて顔を合わせ、短い準備期間しかなかった。海外チームからの選手との間には言葉の壁もあったけれど、いつの間にか意思疎通できるようになったそうだ。

 BKのプレーは、できるだけシンプルにして順目に攻めることを基本にした。
「サインプレーも、ジャパンやフィジー、ナミビアという簡単な呼び方にして、難しいことはしませんでした」
 短い活動だったけれど、濃密で楽しい時間だった。

 3位決定戦のセント オーガスティンズ カレッジ(豪州)×サウスランド ボーイズ ハイスクール(NZ)は、ライバル心剥き出しの熱い試合となった。
 5トライを挙げたセント オーガスティンズ カレッジが33-21のスコアで勝者となった。

両者のライバル心が伝わってきた3位決定戦、セント オーガスティンズ カレッジ(豪州)×サウスランド ボーイズ ハイスクール(NZ)。(撮影/松本かおり)

 5位には、東福岡を33-7で下した御所実が入った。
 中谷圭部長は、「FWが前に出られました。やりたかったモール勝負に持ち込むことができたので、得点できた」と話し、全国選抜大会後、スクラム強化と、モール、ラインアウトの整備をしてきたことが結果に結びついたとした。

 敗れた東福岡のFL古田学央主将は、今大会中も見られた好不調の波について、「細かいミスが出ると自分たちのスタイルを出せなくなる」と反省した。
「これからも3・23(選抜で1回戦負けした日)のことを忘れることなく、自分たちに厳しく積み上げていきます」

5位決定戦の御所実×東福岡。右から大会アンバサダーの新谷あやかさん、東福岡の古田学央主将、御所実の服部凰真ゲームキャプテン。(撮影/松本かおり)

 参加した全16チームが同じように5試合戦い、最終日のこの日、宗像の地で得たものを披露した。
 15位決定戦で韓国の忠北高校を76-5と圧倒した中華台北の建国中学高級学校も、12トライを挙げてベンチは終始大騒ぎだった。

 自身もトライを決めたCTBウァン・ボーシュェン主将は、「強いチームと対戦する機会があり、辛抱してプレーできるようになりました。チームワークや、パスの意識が高くなったことが結果につながりました」と話し、今大会初勝利を喜んだ。

 試合後、対戦相手と一緒に撮った写真はいつまでも色褪せない。
 デジタルの世界だからではなく、濃い緑に囲まれた地での1週間の記憶は、ラグビーにおいても人生においても、いつまでも自分を支えてくれるものになる。

12トライを挙げて今大会初勝利を挙げた建国中学高級学校(中華台北)。15位に。(撮影/松本かおり)
建国中学高級学校(中華台北)×忠北高校(韓国)を終え、両チームで写真撮影。(撮影/松本かおり)



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