昨季王者のスピアーズ、最終節勝利に「終わるのが寂しい」。来季展望は。
最後の目標を叶えた。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケヘッドコーチは、心で誓った。
「ストロングフィニッシュを」
2024年5月4日、東京・秩父宮ラグビー場。国内リーグワン1部のレギュラーシーズン最終節で、東京サントリーサンゴリアスと対峙した。
旧トップリーグ時代に5度優勝の相手を、45-26で下した。第14節から通算して3連勝を達成。通算8つめの白星を得て、勝ち越しで幕を閉じた。
3季連続でプレーオフ行きを決めているサンゴリアスが敗れた傍ら、この一戦がこのシーズンのラストゲームとなったスピアーズは力強く完走した。
2016年度に就任の指揮官は言った。
「今季、機能してきたことを集中して練習してきた。自分たちのDNAを80分間、示せた。今日のパフォーマンスには、いい感情を抱いています」
この午後は序盤こそ、向こうの足技とリサイクルの速さに手こずった。一時は14-26と12点差をつけられた。
しかし、時間を追うごとに戦い方をマイナーチェンジ。蹴り合いに付き合うのをやめ、中盤からのアタックでリザーブ勢を含むランナーの破壊力を最適化した。
その延長線上で奪ったのが、後半8、14分の連続トライだ。WTBの山崎洋之がフィニッシャーとなり、2本目の直後にスコアは26-26となった。
続く24分にも、スピアーズが勢いよく攻める。
自陣10メートル線付近、中央やや右寄りの位置でのスクラムからである。防御を引き寄せながらのパス、力強い突進の合わせ技を披露。左中間、右中間、右端を順に攻略し、あっという間に敵陣22メートルエリアに進んだ。
6フェーズ目で、SOのバーナード・フォーリーが飛び出す防御の裏側へ鋭いパスを放つ。受け手となったCTBのテアウパ・シオネがゴールラインを割るなどし、この午後初のリードを奪った。33-26。その後も流れを保った。
ルディケ体制発足時からずっと主将を務めるCTBの立川理道は、「こういう試合ができたのは自信になります」と述べる。
「ここでシーズンが終わってしまうのが寂しいと思えるような出来でした。これを最初からできるようなチーム作りを(したい)。今季の結果をしっかり受け止め、次に向かっていきたいです」
昨季、クラブ史上初の日本一を達成した。今年度は苦しんだ。
開幕前にはHOのマルコム・マークスが、南アフリカ代表として出た昨秋のワールドカップフランス大会で負傷。リーグワンでの選手登録を断念した。さらにフォーリーも第3節で脳震盪を患い、実戦復帰に約3か月を要した。
開幕からの4戦で3敗を喫し、中盤戦以降も接戦を落としたり、大量リードを奪ったゲームで同点に追いつかれたり。明大卒業前からプレーしたPRの為房慶次朗ら若手が台頭も、12チーム中6位に終わった。
立川はこうだ。
「プレッシャーがかかる時間帯に、軸となる部分を全面に出せるチームが勝てる。トップ4に行けるか、行けないかの差はそこにあると思います。(圧力下で)ひとりひとりで戦ってしまった部分を修正したい」
一枚岩でいられる時間帯を増やすため、翌シーズンから意識したいことはあるか。そう問われれば「いま終わったばかりなので…」としつつ、言葉を選んでゆく。
「振り返る時間は大事。(この日の翌日に組まれた)練習試合を終えてからの1週間で、個人個人で思っている『今季やってきて(今後も)続けていった方がいいもの、改善したほうがいいこと』を挙げて、まとめて、来季に活かしていくというミーティングを。これは毎年やっていることなのですが、そこから、スタートしていく」
ルディケは昨年、日本代表の新ヘッドコーチの候補に挙がっていた。晴れて就任するエディー・ジョーンズらとの最終選考は、当初11月の予定も12月上旬まで直前までずれ込んだ。それは第1節の直前だった。
準備への影響を懸念し、憤るチーム関係者も複数いた。もっとも現場の選手、何よりルディケ自身は、不振の理由に外的要因を挙げなかった。防御の精度をはじめとした、フィールド上でその時々にあった課題を改善しようとしてきた。
ルディケは「一貫性が(課題となった)。ベーシックなプランが遂行できないことが結果に繋がるところがあった。(来季は)ベーシックなことをどれだけできるかです」とも発した。