所属先廃部を経験の宮崎達也がサンゴリアスで初先発。「気持ちを切らさずにやってきた」
這い上がった。
東京サントリーサンゴリアスの宮崎達也が5月5日、東京・秩父宮ラグビー場でのリーグワン1部・最終節で2番をつける。
複数の代表選手を擁し旧トップリーグで5度優勝のクラブにあって、昨季、練習生として加入の28歳が移籍後初先発を果たすのだ。
持ち場のHOに故障者が出たことにも後押しされ、機会を掴めた。
「チャンスはいつ巡ってくるかわからない。気持ちを切らさずにやってきたのがよかった。『出られないから…』と(いう気持ちで)練習していたのでは、もしチャンスが来た時に 100パーセント出せない」
本人がこう話したのは、メンバーが決まる前の4月30日だ。
さかのぼって27日の第15節では、レギュラーシーズン3度目のベンチ入りにして後半20分に今季初登場を果たしていた。その手ごたえを語ったのだ。
「去年のシーズンはちょっと遠慮している部分もあったと思います。ただ今年はコミュニケーションを大事に。その部分は成長したかなと」
当日は東芝ブレイブルーパス東京に27-36と惜敗し、ラインアウトの失敗には「サインを明確に、『100点スローと100点ジャンプを』という基本をもう1回やろう」と反省。ただし、スクラム、タックルで存在感を示した。24分にはトライを決めた。
就任2年目の田中澄憲には、これまでの歩みを評価された。
「最初はトレーニングに全くついてこられなかった選手でした。ただ、ワンシーズンを経て、彼のなかでただいるだけではなくて、成長してゲームに出たいという思いが強くなって、アティチュード(態度)がいい意味で変化した。(ブレイブルーパス戦では)やれることを100パーセントやり切るマインドでやってくれました」
学生時代は京都で楕円球を追った。南京都ラグビースクール、伏見中、伏見工、京産大を経て、20年からは福岡の宗像サニックスブルースに所属した。試練を迎えたのは、リーグワン元年の2021年のことだ。
ブルースが活動を止めたのだ。時間が経っても「いまだにリーグワンにサニックスのチームがないのはショックです」と漏らすほどの悲しみを背負いながら、新天地を探した。選手とクラブを繋ぐエージェントを3度、交替させながら、サンゴリアスの練習生になれたのが2022年の8月だった。門を叩いてから約2か月後の11月、正規入団を発表した。
ここで待っていたのは、エリート同士のバトルだった。日々のセッションはおのずと強度が増し、それがこのチームの強さの秘訣と見られていた。
宮崎は、ハングリー精神の重要性を再確認したという。
「(周りは)有名な大学(の出身者)ばかりじゃないですか。そんななかでは、ハングリーさを出さないと生き残っていけない」
身長164センチ、体重95キロ。一線級にあっては小柄な体格を、強みと捉える。日本最高峰のステージにひしめく大型選手にも、臆せずに立ち向かえる。
「皆が苦労して低くならないといけないところを、僕は普通に(タックルに)入れる。相手は、高いので、姿勢が。僕からしたら、懐に入りやすいプレーヤーが多い」
今度のゲームでは、クボタスピアーズ船橋・東京ベイとぶつかる。身長205センチ、体重120キロのルアン・ボタら巨漢を揃える昨季王者へ、ストロングポイントの低さで対抗する。