海外 2024.05.03

【スーパーラグビー・パシフィック】クルセイダーズ連勝なるか。注目は司令塔のセレクション。FBにはハーフペニー

[ 松尾智規 ]
【スーパーラグビー・パシフィック】クルセイダーズ連勝なるか。注目は司令塔のセレクション。FBにはハーフペニー
レベルズ戦では途中出場だったデイヴィット・ハヴィリ。レッズ戦ではSOで先発。(Getty Images)



 スーパーラグビー・パシフィックのレギュラーシーズンも終盤に差し掛かってきた。
 ニュージーランド(以下、NZ)国内では、プレーオフの予想、そしてオールブラックスの選考の話題などで盛り上がってきている。

 前週の第10節(4月26,27日)は、話題が盛りだくさんだった。
 第9節の4月20日に7-46のスコアでブルーズに滅多打ちにあったブランビーズが、翌週に見事なバウンス・バック(立ち直り)を見せた。今季絶好調のハリケーンズに27-19のスコアで勝利し、初の黒星を付けた(4月26日)。
 ブランビーズらしさを十二分に発揮し、プレーオフに向けて良いリハーサルができたといえる。

 4月27日にブリスベンでおこなわれたレッズ×ブルーズは、最後までもつれる激戦だった。
 前週ハイランダーズに31-0で圧勝して勢いのあるレッズは、今季の新人、11番ティム・ライアンが初先発でハットトリックの大活躍で有利に戦った。

 しかし、一時は11点のビハインドを負ったブルーズは、ベンチからWTBケイレブ・クラークを投入してから勢いが出た。
 終了間際に同点に追いつき、ロスタイムに入って再びクラークのビックゲインからチャンスを掴む。SHサム・ノックがサヨナラトライを奪い、41-34で激戦を制した。
 1敗を守ったブルーズは、首位のハリケーンズにポイントの差でわずか1と迫っている。

 盛り上がった第10節の中で、NZのメディアをもっとも賑わせたのはクルセイダーズのパフォーマンスだった。
 オーストラリア遠征でワラターズ(4月12日)、フォース(4月20日)に2連敗してホームのクライストチャーチに戻ってきた。4月26日のレベルズ戦は、絶対に負けられない試合だった。

 序盤からレベルズ相手にスクラム、ラインアウトのセットピースで圧倒した。それにより攻撃力のあるレベルズにチャンスを与えず、39-0とシャットアウト。完璧な勝利だった。
 今季ここまで良くなかったセットピースを大幅に改善した。前日のキャプテンズランで入念に準備していた成果が出た。この勝利に地元クライストチャーチのファンの気分は最高潮。試合後の選手との触れ合いでは、サインや写真を求めるファンが選手を囲み、ピッチを埋め尽くした。

スクラムの安定とともにクルセイダーズは上昇できるか。(撮影/松尾智規)

◆第11節はハヴィリを10番に抜擢 & ウエールズのレジェンドが初登場

 今季9試合中まだ2勝しかしていない、昨年の覇者クルセイダーズ。第11節は、レッズとの対戦となる(5月4日)。
 5月1日にメンバーが発表された。

 その中には、35歳にしてスーパーラグビーデビュー戦となるリー・ハーフペニーの名前があった。ウエールズ代表キャップ101、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズでも4つのキャップを持っている。まさにレジェンドだ。
 ハーフペニーは、プレシーズンマッチで胸の筋肉を負傷。手術を受けて長期離脱していた。デビュー戦となるレッズ戦では、お馴染みの背番号15を付けて先発出場する。

 ウエールズから来たレジェンドに対して、指揮官のロブ・ペニーHCは、「彼はここ数週間、ずっとトレーニングを積んできた。彼は背番号15のジャージーに袖を通す権利がある」と語った。
 ハーフペニーの姿は、スタジアムでも時々見かけられていた。前節のキャプテンズラン(4月25日)でもピッチで元気な様子だった。
 予定よりも早く回復して今回のデビューになる。経験豊富なハーフペニーが最後尾にいるのは、チームにとって心強いだろう。

 ハーフペニー以上にNZメディアを賑わせたのは、司令塔のセレクションだった。ワールドクラスの司令塔、リッチー・モウンガが日本に移籍。モウンガの抜けたポジションに入る予定だったファーガス・バークは、アキレス腱のケガで出遅れた。
 数週間前に復帰が予定されていたが、今度はふくらはぎを痛めて復帰は遠のいた。番号10を固定できなかったことも、チームの不調の要因と言える。

 司令塔のセレクションで悩む中、先週ケガから復帰したばかりのユーティリティーBK、デイヴィット・ハヴィリを背番号10で先発に抜擢した。
 ペニーHCは、シーズン前に、「ハヴィリの10番起用は考えていない」、と発言していた。しかし、今回オールブラックスのHCであるスコット・ロバートソンからの提案があり、ハヴィリが背番号10を付ける事になった。

 オールブラックスの12番には、ジョーディー・バレットがいる。オールブラックスにおいても司令塔を誰に任せるのかは不透明だ。ハヴィリにとっては、生き残りをかけた良い機会になる。
 ハヴィリの10番での起用は、数年前にNPC(NZ国内選手権)で数試合あった。ただ、そつなくこなしていたものの、スーパーラグビーレベルでの司令塔経験は浅い。
 クルセイダーズがプレーオフに残るには、これ以上負けられない状況だ。勢いのあるレッズ相手にハヴィリの司令塔起用がどのようにチームに影響するのか興味深い。

 先週はキャプテンのLOスコット・バレットが復帰してチームが引き締まった。低迷しているとは思えないほど強いクルセイダーズを見せてくれた。
 セットピースだけでなく、FW全体の出来が素晴らしかった。圧倒したスクラムと同じように、FW第3列の奮闘がチームを勢いに乗せた。6番カレン・グレイス、7番イーサン・ブラッカダー、8番クリスチャン・リオウイリーの3人のバランスも良く、ボールキャリーで前に出ることができた。
 先週休養に充てられたFLトム・クリスティーをレッズ戦でメンバーに戻さず、FW第3列のメンバーを据え置いたのも興味深いセレクションだ。

 今週もホームのクライストチャーチでの試合になる。
 ブルーズを苦しめたレッズだけに勝つのは容易ではないだろう。3月29日のチーフス戦で初勝利した後は勢いに乗れなかった。今回ここで連勝すれば、いよいよエンジン全開となるかもしれない。
 今週もクライストチャーチのスタジアムは笑顔でいっぱいになるだろうか。


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