やるしかない。島田悠平[クボタスピアーズ船橋・東京ベイ/FB]
力があっても勝ち切れない。昨季王者がもどかしさを抱えている。
クボタスピアーズ船橋・東京ベイは4月7日の第12節で東芝ブレイブルーパス東京と対戦し、20-22と接戦を落とした。
ラストワンプレーでの逆転負けだった。
立川理道主将はいう。
「そこ(勝ち切れないの)には理由があると思います。学びを常に受け入れて、次に生かさなければ勝ち切れないリーグになってきた」
プレーオフ進出に向けてはもう一戦も落とせない。プレッシャーのかかる13日の静岡ブルーレヴズ戦には、島田悠平が背番号15で起用された。
2試合ぶりの出場だ。
FBで先発した埼玉ワイルドナイツとの第11節では、得意のロングキックとハイボールキャッチなどで安定感のあるプレーを見せていたが、チームは22-55で大敗を喫していた。
本人は、立川主将と同様のコメントを残す。
「チームとしても、個人としても、結果は受け入れるしかない。受け入れてから、どう進むのかを考えないと」
高校時代からエリート街道を歩んできた。
國學院久我山では2年時から2年連続で高校日本代表入り。筑波大では1年時から先発機会を得て、WTBにFB、時にSOまでこなした。
それまでのラグビー人生で、試合に出られないシーズンはなかった。クボタ入団後に、初めてその苦しみを味わう。加入3年目の昨季まで、公式戦出場はゼロだった。
WTBとして加入したが、バックスリーはリーグ屈指の激戦区。1年目は同期の金秀隆がFB、山﨑洋之がWTBでプレータイムを得た。金はそのまま新人賞を受賞する。翌シーズンは根塚洸雅が同じ賞とベスト15に、昨季は木田晴斗がベスト15に選ばれた。
「悔しかったけど、そんなに落ち込むのが長いタイプではなくて。自分が他の人と比べて劣っている、能力的にもメンタル的にもまだまだ足りていないと受け入れました。足力ではハルト、コウガ、ヤマ、スリュンにどうしても敵わない。自分はどこが強みで、それをどうチームに最大限フィットできるのかをすごく考えました」
答えを出した。田邉淳コーチとも相談し、3季目からFBを主戦場に決めた。
「いまチームに少し足りていないのは、ゲームコントロールやキッキングゲーム、コンバージョンの精度。そこであれば活路を見出せるかなと。ひたすら練習していたら、見てくれている人がいました」
昨季の開幕節。ようやく出番が訪れた。正FBはゲラード・ファンデンヒーファーだったが、愛称「G」のコンディション不良もあって、5試合に先発し、計8試合に出場できた。
「くすぶっていても、頑張れば試合に出られるチャンスはあると思えた。だから、メンバー外になってもやることを変えずに努力し続けることが大事で。ベストパートナーズ(ノンメンバー)は落ち込んだり、目標を見失うこともあるけど、しっかり毎週ベストファイターズ(出場メンバー)に対してプレッシャーをかけることをブレずにやっていこうとは話しています」
フラン・ルディケHCからはその姿勢を高く評価される。岸岡、根塚、紙森陽太、藤原忍、押川敦治、玉置将也と共に、若手リーダー陣に名を連ねている。
今季はさらに厳しい競争に身を投じた。同じポジションにウエールズ代表のリアム・ウィリアムズが加わったのだ。
「ついにカテCが来てしまったとは思いました。でも学べることも多いし、成長できる機会があると考えたらすごくプラス。形は違うけど、今年はチーム的にも個人的にも、やるしかない状況。思いっきりいくだけです」
ただやはり、今季の出場機会は限られている。ここまでの出場は第9節からの3試合。いずれもゲラードとリアムが揃ってコンディション不良だった。
「2人が戻ってきた時に、はいどうぞ、と易々と渡したくない。コーチたちが悩むくらいのパフォーマンスを残したいです」
再び巡ってきたチャンス。今度こそモノにして、苦しむチームを救いたい。