国内 2024.03.11

スティーラーズの攻めを動かす。ブリン・ガットランドの仕掛ける力。

[ 向 風見也 ]
スティーラーズの攻めを動かす。ブリン・ガットランドの仕掛ける力。
NZ出身のブリン・ガットランド。国代表未経験だが能力は高い(撮影:松本かおり)


 決定打を重ねた。

 コベルコ神戸スティーラーズのブリン・ガットランドがリーグワン1部で今季2度目のプレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたのは、3月10日の第9節のことだ。

 敵地の相模原ギオンスタジアムで三菱重工相模原ダイナボアーズを43-14で下すまでの間、立ち位置の妙、技巧で魅した。

 チームの反則数がダイナボアーズよりも17個も多い20個だったとあり、本人は「時間帯によっては相手に球を渡した。それは規律が要因です」とするも、デイブ・レニー ヘッドコーチにはかように評された。

「仕掛けるべき時は仕掛け、周りを正しい位置でプレーするためのコントロールをしてくれています」

 就任1年目のレニーには、前所属のチーフス時代に師事。厳格さのにじむボスを「コーチとしてはハードルの高い要求をするかたわら、オフフィールドでは優しい好人物」と見る司令塔がファーストパンチを促したのは、4分である。

 敵陣10メートル線付近右で球をもらうや、さらに左へ投げるそぶりを見せて縦に仕掛ける。2枚のタックラーを引き寄せ、せり上がる守備網の裏側でCTBの李承信につなぐ。右手一本で李を大きく走らせ、NO8のティエナン・コストリーのフィニッシュにつなげた。

 ウェールズ代表指揮官のウォーレンを父に持つ28歳は、その後もキックを強風に乗せたり、15分に自らトライを決めたりと、主導権を握る。

 12-7とリードしていた27分にも、先制時と似た威力を示す。

 自陣中盤右でスクラムから球を得て、相手に接近しながらそれを同僚につなぐ。味方WTBの山下楽平のラインブレイクで敵陣22メートル線付近右まで進むと、その左で再びパスをもらう。

 ここでも防御の間近まで切れ込み、後ろから駆けてくるLOのブロディ・レタリック共同主将に回した。

 勢いよくクラッシュさせる間、またも左へ動いた。

 レタリックのオフロードパスを受けて直進。飛び出すダイナボアーズのディフェンスラインをあざ笑うかのように、左隅のスペースへ放った。

 CTBのマイケル・リトルにインゴールエリアへ飛び込ませるなどし、19-7とした。圧力のかかる攻防の境界線あたりでスキルを発揮できるのは、実力者の証か。ガットランドその人は述べる。

「他の選手が速いテンポで球出しをしてくれるおかげで、自分が半身ほど抜け出して次の選手へつなげられる。いったんプレッシャーをかけると、相手はそれをリカバリーすべくプレッシャーをかけ返しにくる。それに対して再び自分たちが前に出られれば、よりプレッシャーを与えられる」

 続く34分には、自陣ゴール前中央から左端へキックパスを繰り出した。トライラインを背にチャレンジングなプレーを選んだことで、仲間の好走をおぜん立てした。

 その2分後には、敵陣22メートルエリア左でガットランドがバトンを受け継いだ。右大外の穴へ、再び足を振り抜いた。WTBの山下がタップし、FLの今村陽良が仕留めた。

 24-7と流れを傾けたこのシーンを、来日1年目の身長178センチ、体重88キロは「つかめるチャンスはつかまないと、それは2度と訪れない。キックの精度も強みです」。31-14としていた68分には、またも向こうの守りに働きかけて援護役にパス。中盤を攻略し、SHの中嶋大希のだめ押しをもたらした。

 敗軍のFBだった小泉怜史に、こう言わしめた。

「かなり厄介でした。自分たちの弱い部分を見逃さず、そこにプレッシャーをかけ続けてきた。試合を運ぶうまさがある」

 ここまで挙げた122得点はリーグ1位だ。攻めで成果を残すクラブにあって全試合に先発し、ゴールキッカーを担ったことでいまのランクを保つ。

「ここ数試合、自分たちのゲームが進化してでき上がりつつある。そのなかで選ぶべきプレーを選んだ結果です」

 かくして4連勝で6勝3敗。戦前からの12チーム中4位というポジションを維持し、現行リーグでは初のプレーオフ進出(4傑)へ近づく。16日には本拠地の神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で、目下無敗の埼玉パナソニックワイルドナイツを迎える。

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