昨季王者撃破を「信じていた」。ジャクソン・ヘモポ[相模原DB/NO8]
来日して5年目を迎える。
日本語で話すのは難しいけれど、相手が話しているニュアンスはだいたい分かるようになってきた。
三菱重工相模原ダイナボアーズで不動のNO8、ジャクソン・ヘモポは日本での生活を楽しんでいる。
練習場は相模原だが、生活の拠点はそこから南下した湘南に据えている。近くの海でサーフィンに興じるためだ。
「相模原は都心も近いし、(海のある)湘南も近い。良い場所にあります。オンとオフをしっかりできる。サーフィンはいまの時期はしないけど、夏の間はほぼ毎日しているよ」
ニュージーランド北島のパーマストンノース出身。FWのバックファイブ(主にLO)として2015年からハイランダーズでプレーし、2018年には黒衣軍の仲間入りを果たした。6月にフランス代表とのテストマッチでオールブラックスデビュー、翌年の夏までに5つのキャップを重ねた。
しかし、キャリアの絶頂とも言えるタイミングで日本行きを決める。まだ25歳だった。
「オールブラックスではケガ人が出たら入る、ということが多かったんです。相模原ではチームにコミットできます。自分のやりたいこと、何をしなければいけないかに集中できる。自分の教えられることは仲間に教えますし、学べることもすごくたくさんある。リーダーグループにもいるので、そこでも自分の成長を感じられます」
3月3日、試合後のミックスゾーンは慌ただしかった。ダイナボアーズが昨季王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベイを破ったからだ。
ダイナボアーズの勝利に貢献した、プレイヤー・オブ・ザ・マッチのWTBベン・ポルトリッジやLOウォルト・スティーンカンプ、CTBカーティス・ロナと、海外出身のメンバーが続々と報道陣に捕まる中、チームの通訳が足りなくなった。
この日、ヘモポの通訳を急遽務めたのはシンクル寛造だった。ヘモポとともに右PRで先発し、相手の看板FWをスクラムで押さえ込んだ。自身の取材対応を終え、今度は通訳に徹してくれた。
2019年の加入時はトップリーグ昇格1年目、当時は昨季のチャンピオンに勝てると想像できていましたか。
ヘモポは答える。
「確かに入った時はそんなに強いチームではなかったですけど、良いコーチや良い選手も入ってきて仲間たちも成長し、チームがどんどんレベルアップしているのを感じていました。勝てると信じていました」
自身も195センチ、112キロの長躯を活かしたビッグプレーを二つ見せた。
前半4分にはSOジェームス・グレイソンのキックパスをライン際でジャンピングキャッチ、着地してすぐに一人交わしてオフロード、FL鶴谷昌隆の先制トライに繋げた。
6点のリードを死守していた試合終了間際には192センチ、102キロのFB ゲラード・ファンデンヒーファーにチョークタックル。敵陣で攻守を逆転させ、勝利を大きく手繰り寄せた。
「(先制トライのアシストについて)あの動きは先週からずっと練習してきて、練習中は一度もキャッチできなかった(笑)でも今日は獲れて、トライもアシストできてよかった。最後のあのタックルは自分にとってもお気に入りのタックル」と笑顔で振り返った。
これでチームは2連勝。クロスボーダーラグビーの期間を明けてから好調を維持する。選手たちが声を揃えるのは、リーグ中断中の厳しいトレーニングが勝利に繋がっているということだ。
その過酷トレを課したグレン・ディレーニーHCとは、ハイランダーズ時代も選手、コーチ(ディフェンス)の関係だった。
「ハイランダーズでもプレシーズンはかなりキツいことをやっていて、そうしたことでメンタルを鍛えるニュージーランドのチームは多いです。そのノウハウをグラッグスは持ってきてるのだと思います。グラッグスはきつい練習をやらせる中でも細かいところまで教えてくれる。それがみんなの成長に繋がっています」
ヘモポが楽しむのは、オフ中のサーフィンだけではない。「仲間たちが毎年レベルアップしているのを見られるのもすごく楽しい」という。
最後はリーグ初先発を果たしたシンクルと握手を交わし、秩父宮をあとにした。