ヤマハとワイルドナイツの笑顔溢れるOB戦。最後は五郎丸がサヨナラゴール。
3月2日、静岡ブルーレヴズと埼玉ワイルドナイツの真剣勝負を前に、ヤマハスタジアムは温かい空気に包まれていた。
ヤマハ発動機ジュビロ、静岡ブルーレヴズのクラブ40周年を祝う記念イベントとして、ヤマハ発動機ジュビロとワイルドナイツ(三洋電機・パナソニック)によるOB戦が組まれたのだ。
豪華メンバーが集結した。
ヤマハOBはW杯3大会出場のSH村田亙をはじめ、CTB大西将太郎、SO大田尾竜彦、FL久保晃一、PR高木重保、WTB冨岡耕児と日本代表キャッパーがずらり。
ワイルドナイツOBもPR川俣直樹、LO谷田部洸太郎、FL西原忠佑、WTB三宅敬、CTB林泰基、WTB北川智規、FB笹倉康誉ら日本代表経験者を並べた。
企画を提案して実現まで漕ぎつけた五郎丸歩CROは「リーグワンが始まってから比較的新規層にアプローチしてきたが、今回は原点に戻り昔からラグビーを好きな方々が楽しめるような空間を半年かけて作ってきた」と話し、各方面への感謝を語った。
「(ワイルドナイツは)三宅さんを中心に全面的に協力してくれて、われわれのクラブ40周年を祝ってくれました。全国から多くのファンが来てくれました。この恩をどこかで返したいです」
本戦の2時間半前に15分ハーフでおこなわれた同試合は、懐かしのジャージー姿を一目見ようとスタジアムに駆けつけた約4000人のファンに見守られながら始まった。
立ち上がりはヤマハが敵陣で攻め立て、56歳のSH村田亙がラック脇を突くなど仕掛け続けたが、ワイルドナイツ伝統のディフェンスで得点を許さない。
先制トライはターンオーバーから攻撃に転じたワイルドナイツが、昨季まで現役だったFB笹倉康誉の突破を起点に奪った。
実況席にいたヤマハの清宮克幸監督、ワイルドナイツの宮本勝文監督、両指揮官の声がそのままスタジアムに流れる中、ワイルドナイツが直後にもトライを挙げて14-0と先行すると、試合を面白くしようと努めた清宮監督から「(ワイルドナイツの)オフサイドでいいんじゃないかな、福岡さん」とレフリーに圧力をかけ、会場の笑いを誘った。
ハーフウェーラインでペナルティを獲得するや、「ショット」の指示。五郎丸歩が「遠い」とジェスチャーすると、敵陣10㍍ラインまでポイントがずらされた。
そのPGこそ外れたが、キックの直前にはあの時のルーティンを披露、会場が沸いた。
5-14で迎えた後半は、ヤマハ発動機ジュビロからヤマハ発動機ラグビー部のジャージーに着替えてゲーム再開。五郎丸、大西将太郎のPGが連続で外れる中、9分にベンチから登場した大田尾竜彦のPGで8-14と1トライ1ゴールで逆転できる点差まで詰める。
試合終盤には、Jリーグのジュビロ磐田で社長を務めるHO浜浦幸光さんが満を持して登場。「20年ぶり」という試合機会でいきなり敵陣ゴール前のスローを担い、モールを押し、トライスコアラーとなった。
入ればサヨナラ逆転勝利となるキッカーを託されたのは、もちろん企画者の五郎丸。ゴールラインに並んだワイルドナイツOB全員が「五郎丸ポーズ」でプレッシャーをかける中、五郎丸が笑顔で放ったボールは見事にHポールに吸い込まれていった(15-14)。
五郎丸はワイルドナイツの思わぬプレッシャーに、「あまりにも決めないので願いも込めてやってくれたのでしょう」と振り返り、「3本外していたので最後決まってよかった。良い形でトップのチームにバトンを繋げられたかな」と表情を崩した。
「いろんな世代の方々と触れ合うこと、ラグビーの本来の楽しさを自分たちも体験できたし、ファンの方々も喜んでいただけるのであればこうした企画もまたやっていきたいです。次は50周年ですかね」と展望した。
試合後には両チーム混ざっての記念撮影がおこなわれ、ヤマハOBで今季限りでの現役引退を決めたNO8トーマス優デーリックデニー(ヤクルト)に花束が送られた。
選手たちも見ているファンも笑顔になった、心地よい時間が流れていた。