国内 2024.02.06

ワイルドナイツ、プライド示してチーフスに完勝。 SH小山大輝、チームのスタンダードを引き出す

[ 編集部 ]
ワイルドナイツ、プライド示してチーフスに完勝。 SH小山大輝、チームのスタンダードを引き出す
171センチ、74キロの29歳。北海道芦別高校→大東大。2017年からワイルドナイツ。U20代表、高校代表への選出経験もある。(撮影/松本かおり)



 いつも通りに、自分たちのスタンダードを見せよう。
 坂手淳史キャプテンは仲間たちにそう言って、チームの先頭に立った。

 冒頭の言葉は、ワイルドナイツにとって「勝つぞ」と同義語だ。
 2月4日、熊谷でチーフスと『クロスボーダーラグビー』を戦って同チームは38-14と完勝した。

 昨季スーパーラグビー・パシフィックのファイナリストとなった強豪と戦うにあたり、ワイルドナイツは、簡単ではない準備期間を過ごした。

 公式戦であるリーグワンの真最中に組まれた(実質)エキシビションマッチだ。主将も「メンタル的に難しかった」と試合後に話した。

 ロビー・ディーンズ監督も開催時期や、それぞれのチームにかかる負荷の違い、戦う舞台の価値の高め方やプロセスについて、意見を口にした。

 相手にとっては公式戦前のプレシーズンマッチ。
 それでも戦いに挑むリーグワンチーム選手たちは、日本ラグビーの誇りを背負って勝利をつかみ取ろうと体を張る。

 その姿勢に対し、リスペクトしなければならない。
 スーパーラグビーとリーグワンを勝ち抜いたチーム同士で戦う舞台を作ることを考え、実現に向けて進んでほしい。
 ワイルドナイツは、勝つことでその思いの強さをあらためて示した。

▼動き続け、圧力かける。トライも。

 前半に14-0とリードし、最終的に5トライを奪った。
 現役オールブラックスの姿がない布陣とはいえ、チーフスを2トライに抑える内容は完勝だった。
 選手たち一人ひとりが、いつも通りに自分の責任を果たした結果だった。

 後半22分にベンチに退くまで全力で動き続けたSH小山大輝も、高いパフォーマンスを見せて勝利に貢献した。

 青いジャージーの9番は、何度も弾丸となって飛び出し、相手キッカーにプレッシャーをかけた。
 7-0だった前半22分には自らインゴールのボールを押さえて5点を追加し、チームを勢いづけた。

 そのトライは冷静な判断から生まれた。
 自陣深い地域でターンオーバーからボールを奪い、攻撃に転じたワイルドナイツは、キックをチーフスのゴール前に蹴り込み、WTBマリカ・コロインベテが好チェイス。捕まえ、圧力をかけた。

 しばらく攻防が続いた後、トライライン付近でラックを作ったチーフスは、パスアウトするためにボールを足でかき出そうとした。
 そのボールがインゴール内に入った瞬間だった。小山が手を伸ばし、楕円球を上から押さえた。

 そのシーンを振り返り、小山は「(起こりがちなことなので)少し前にルールを勉強していたことが生きました」と振り返った。
「インゴールにボールが入ったらラックは終了してプレーできるので、押さえました」

▼モチベーション高く挑んだ。

 戦いを終えて小山は「勝ちにいった試合で勝ててよかった。最初の10分、相手がパワー全開で向かってくると分かっていました。それを止められた」と話した。

 監督や主将が言うように難しかった準備の中でも小山は、「個人としては、レベルの高い海外の選手と戦うのはプラスになると考え、チャレンジする思いを持っていました」とモチベーションを高く保って試合に臨んだ。

 今季のプレシーズンマッチ初戦ということもあり、チーフスに、組織的なうまさは特に感じなかったという。
 しかし、チーフスの選手たちのフィジカリティの強さはリーグワン以上の体感だった。

 相手布陣がどう戦うのか映像などの資料もないため、自分たちのスタイルに集中することがテーマだった。
 完勝の結果を考えれば、勝利へのプランを遂行できたと考えていいだろう。

 しかし小山は、自身のパフォーマンスを「70点」とした。
「ゲームコントロールやパス、キックの精度に関して、もっと安定させていきたいと思います」

▼実績を重ね続け、国際舞台にも。

 今季はリーグワンで開幕からの6戦に全試合出場。
 そのうち5試合で先発し、首位を走るチームをSO松田力也とともにコントロールしている。

 2027年のワールドカップに向け、新しい4年のサイクルに入るシーズン。さらにエディー・ジョーンズ新ヘッドコーチを迎え、日本代表の陣容にも変化が起こりそうだ。

 2018年、2019年とセブンズ日本代表に選出され、同代表キャップ3を持つ。
 15人制でも赤白ジャージーを着て世界と戦いたい意欲はある。

 過去に日本代表へ招集された実績を持つも、キャップ獲得はまだ。29歳になった。チャンスがいくらでもあるとは思っていない。
「まずはチームファーストで。目の前の試合を全力で戦っていくだけ」と話す。

 その先に国際舞台が待っているのが理想だ。リーグワンで結果を残し続ければ、エディーもこっちを向くだろう。
 チーフス撃破の事実が、存在をアピールする材料のひとつになったことは間違いない。

 先輩でワイルドナイツの9番を長く背負い、日本代表キャップ22を持つ内田啓介は、今季を最後に現役引退と表明した。
 小山の先発起用も自然と増えている。結果、ゲームをリードする力も高まる。
 目指すところへの距離は、確実に縮まる。

 持ち前のスピードあるプレーで、超速ラグビーの発信源となれるか。


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