女子 2024.02.03

秩父宮での記念すべき決勝を制したのはフェニックス! PEARLSとの熱闘制し全国女子選手権連覇達成。

[ 編集部 ]
秩父宮での記念すべき決勝を制したのはフェニックス! PEARLSとの熱闘制し全国女子選手権連覇達成。
追われるプレッシャーをはねのけ、連覇を達成した東京山九フェニックス。笑顔と涙が入り混じる万感の表彰式となった(撮影:松本かおり)

 日本の女子ラグビーは本当にすごく高いレベルにある。
 東京山九フェニックスのケン・ドブソン ヘッドコーチ(HC)は、試合後の記者会見で何度もそう繰り返した。多くの人がこの日、それを実感しただろう。

 2月3日、女子ラグビーの日本一を決める「第10回全国女子ラグビーフットボール選手権大会」の決勝が秩父宮で行われ、関東王者の東京山九フェニックスラグビークラブが関西大会優勝のPEARLSに40-24で勝利。2大会連続2回目の優勝(※単独チームとして。他に合同チームでの優勝が1回)を飾った。

 第10回の節目を迎えた今大会は、クロスボーダーラグビーの第1戦、東京サントリーサンゴリアス対チーフスに続いて行われ、大勢の観客が見つめる中で14時30分にキックオフを迎えた。
 序盤、ペースを握ったのはPEARLSだ。大型FWの推進力を生かして敵陣で優勢に試合を進め、開始7分にオーバーラップをきれいに仕留めてキャプテンのWTB三谷咲月が先制トライを挙げる。

 しかし14分にFWの核であるLOタフィト・ラファエレが肩を痛めて交替すると、流れは一変。フェニックスが早いテンポの連続攻撃で攻め込むシーンが増え始め、18分にSO大黒田裕芽の防御ライン裏へのキックをチェイスしたWTB野原みなみが間隙を突いて左中間に押さえる。コンバージョン成功で7-5と逆転すると、26分にはFB松村美咲のビッグゲインでゴール前へ攻め込み、今度は左オープンのスペースをSO大黒田のキックパスで攻略してWTB野原が2本目のトライをマークした。

 さらにフェニックスは32分にも相手ペナルティから敵陣深くでチャンスをつかみ、前に出るPEARLS防御の裏へSO大黒田が絶妙のゴロパントを転がす。FB松村が快足を飛ばしてデッドボールライン直前でグラウンディングし、21-5と一気にリードを広げた。

 大きく流れが傾くかに思われた場面だったが、PEARLSもここでよく踏ん張り、38分に相手陣22メートル線上のラインアウトから準備したプレーでPR永田虹歩がゴール前まで前進。ラックサイドをLOブリアナ・ホイがねじ込み、トライを返す。21-12と9点差にスコアを縮めてゲームを折り返した。

大一番で持ち前の勝負強さを発揮したWTB野原みなみ(旧姓・鹿尾)。3トライを挙げて優勝の原動力となった(撮影:松本かおり)

 迎えた後半、先にリズムをつかんだのはフェニックス。43分に相手のエスケープキックをFL高橋李実が鋭い出足でチャージし、詰めていたキャプテンのFL鈴木実沙紀がインゴールでボールを押さえる。51分にはラインアウトモールでじりじりとゴールラインに迫り、左ショートサイドを攻めてWTB野原がハットトリックを決めた。

 これ以上離されたくないPEARLSもここから猛反撃に転じ、56分に相手のキック処理ミスのこぼれ球をFL木下そよ香が逃さず拾って左中間へ。73分には連続攻撃でディフェンスを揺さぶり、WTB三谷がインゴールへ走り抜ける。24-35と11点差に詰め寄り、逆転へ望みをつないだ。

 しかしフェニックスはここで動じることなくディフェンスでひたむきに体を張り、相手陣でゲームを展開。じわじわと時計を進めてプレッシャーをかけると、終了間際の79分に途中出場のPR高木恵が勝利を決定づけるトライを奪取する。40-24としたところで、フルタイムのホイッスルが鳴らされた。

 女子15人制の頂点を争うにふさわしい熱闘を制し、見事に連覇を達成したフェニックス。全国のチームから目標にされるプレッシャーをはねのけ、大観衆が見守る聖地秩父宮で手にした2度目のタイトルは、昨季とは違う重みがあるだろう。「これだけのフィールドで、たくさんのお客さんの前でプレーできることは、緊張もするけど大きな力になると感じました。女子ラグビーにとって大きなことだと思います」とは、卓越したリーダーシップでチームを牽引したFL鈴木キャプテン。

 攻守にわたり八面六臂の活躍を見せ、MVPに選出されたSO大黒田は、「準決勝が終わってからの2週間で、(決勝が)どんな結果になっても後悔しないだけのいい準備ができた。準備してきたことを体現して、結果につながったことをうれしく思います」と優勝の喜びを語った。

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