海外 2024.01.25

FLジュロン、LOメアフーがケガ。フランス代表にとっても、トゥールーズにとっても厳しい冬になりそうだ

[ 福本美由紀 ]
FLジュロン、LOメアフーがケガ。フランス代表にとっても、トゥールーズにとっても厳しい冬になりそうだ
不運にも再受傷のFLアントニー・ジュロン。(Getty Images)



 欧州チャンピオンズカップのプール予選をトゥールーズが1位で通過、勝ち進めば準決勝までをホームで戦う権利を獲得した。

 今季開幕後は17人の選手がワールドカップ(以下、W杯)で不在、チーム作りに時間がかかった。
 そのためトップ14ではアウェーで勝つことができず、なかなか順位を上げることができなかったが、12月に始まったチャンピオンズカップでは、まるで全員が一つの意思で動いているかのようにノールックパス、オフロードパス、時にはキックも使い、次から次へとボールを繋ぐ、トゥールーズのラグビーが見られるようになった。

 ウエールズのカーディフに52-7(12月10日)、イングランドのハーレクインズには47-19(12月18日)、アイルランドのアルスターにも48-24(1月14日)といずれの試合も7トライを決め、すべてボーナスポイント付きで勝利した。

 最終戦はイングランドのプレミアシップで現在3位のバースをホームに迎え撃った(1月22日)。
 フェーズを重ねながら70メートルを前進し、最後はLOエマニュエル・メアフーが3人のディフェンスをなぎ倒してインゴールに押し入り、開始6分でトゥールーズが先制した。

 その3分後には敵陣でペナルティーを得たアントワンヌ・デュポンが素早くボールを持って駆け出し、キックで転がした。それに反応してボールに追いついたトマ・ラモスが足に引っ掛け敵をかわしてインゴールでボールを押さえ、12-0とリードした。

 しかし、その後バースも反撃する。
 トゥールーズのゴール前ラインアウトからモールを作り、PRベノ・オバノが素早く持ち出してトライ。オバノにはスクラムでも苦しめられる。
 24分にはもう1人のPRトーマス・デュトイにトライを許し、12-12と同点になった。

 28分にはトゥールーズが敵ゴール前ラインアウトからモールを押し込み、ペナルティトライを得るが、前半終了間際に、再びトゥールーズのゴール前ラインアウトからバースがボールを回し、CTBオリー・ローレンスがタックルを受けて倒れながらもインゴールに手を伸ばしてトライ。
 19-19と再び同点にして前半を終了した。

 後半はバースが攻める時間帯が続いた。
 バースが2度、トゥールーズのゴールラインを脅かす。しかし2度とも身体を滑り込ませてセーブした。

 トゥールーズにチャンスが訪れたのは67分だった。
 敵陣22メートルでのスクラムからFLフランソワ・クロスが持ち出しCTBピタ・アキにパス。アキがディフェンスに身体を当てポイントを作る。デュポンが素早くボールを出しCTBソフィアンヌ・ギトゥーンヌへ。ギトゥーンヌから内に返してラモスへ。
 最後は大外で待っていたWTBフアン=クルス・マリーアへロングパスで繋ぎ、そのままゴールへ一直線に走り、24-19とリードした。

 残り時間4分にも力を見せた。敵陣22メートルにできたラックから、デュポンがインゴールへボールをキックで転がし、いち早く反応。ラモスが追いかけて押さえ、31-19と突き放した。そのまま守りきり、勝利した。

 トゥールーズはこの試合でもボーナスポイント付きで勝利し、勝ち点20で参加している全24チームで1位を獲得した。アイルランドのレンスター(勝ち点19)、イングランドのノーサンプトン(18)、ボルドー(17)と続く。

 しかしこの試合でトゥールーズはFLアントニー・ジュロンを失った。
 ジュロンは56分に「膝が動いたような感じ」と訴え、大事をとって交代した。その後の検査で右膝前十字靭帯断裂と診断された。

 昨年2月末のシックスネーションズでジュロンは左膝で同じケガを負っている。それから奇跡的なスピードで回復し、昨年9月14日のW杯ウルグアイ戦で復活した。
 その後もナミビア戦、イタリア戦、そして準々決勝の南アフリカ戦とすべてスタメンで連戦し、またトゥールーズに戻ってからも10試合に出場し、調子も負傷する前のレベルに上がってきていたところだった。

 シックスネーションズに向けて今週から合宿を始めたフランス代表のスコッドにも選ばれていた。フランス代表にとっても大きな損失だ。
 そして誰よりも辛いのは本人だろう。1年も経たないうちに再受傷。再び手術を受けてリハビリに取り組まなければならない。今季の復帰は難しいだろう。

 また、この試合でプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたメアフーも膝の捻挫を負った。
 NZ生まれでオーストラリア育ちのメアフーは、2018年12月に渡仏しトゥールーズの養成センターに入り、翌年の1月にトゥールーズのエスポワールに入団した。
 その年の12月にトップ14デビューを果たし、翌年からはトゥールーズの主力メンバーの1人になっている。

膝を捻挫したLOエマニュエル・メアフー(右)。(Getty Images)

 203センチ、145キロという巨体。パワフルでありながら、運動量も豊富でパスを繋ぎ、味方を生かすこともできる。フランスには数少ないタイプのLOの選手だ。
 メアフーの渡仏が、代表資格取得に必要な居住期間が36か月から60か月に改定される前であったことから、フランス協会は昨年のW杯前に特例を認めてもらう申請をワールドラグビーにおこなったが認められなかった。
 昨年12月に居住期間の規定を満たし、今回のシックスネーションズでようやく代表チームに参加できるようになった。2月2日の初戦のアイルランド戦で初キャップも期待されていた。

 現時点ではアイルランド戦は欠場と発表されただけだが、復帰までに4〜6週間はかかるのではと言われている。こちらも代表スタッフにとって悩ましい。

 メアフーに代わって、急遽ポール・ヴィレムセが召集された。
 ヴィレムセは2020年から背番号5をつけていたが、2021年のシックスネーションズで全勝優勝メンバーとなった後、負傷が続いた。昨年のW杯前の準備期間中にも負傷し大会出場を逃していた。

 ジュロンの代わりには、同じトゥールーズのアレクサンドル・ルマットが呼ばれた。
 ジュロンとは異なるタイプで、スマートで、ラインアウトのジャンパーで相手ボールを奪うのが得意だ。前週のアルスター戦で膝を痛めたため、この週末のバース戦は出場していなかった。

 昨年のW杯で準々決勝敗退のトラウマを払拭し、次回大会の準備をするために、今大会で優勝し、自信を取り戻したいフランス代表。しかしデュポンがパリ五輪出場のため欠場し、ロマン・ンタマック(SO)もまだ復帰していない。LOチボー・フラマンも今大会前半戦は欠場とすでに発表されていたところに、ジュロンとメアフーの負傷が加わった。

 フランス代表にとっても、トゥールーズにとっても厳しい冬になりそうだ。


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