国内 2024.01.12

車いすラグビー日本選手権 1月12日開幕! ~出場チーム紹介(予選プールB)~

[ 張 理恵 ]
車いすラグビー日本選手権 1月12日開幕! ~出場チーム紹介(予選プールB)~
前回大会で自身初の大会MVPに輝いた池透暢(中央)。池がヘッドコーチを兼任するFreedomは連覇を狙う


 車いすラグビー国内最高峰の大会「第25回 車いすラグビー日本選手権大会」が、1月12月(金)~14(日)に千葉ポートアリーナ(千葉市)で開催される。
 今大会には、8月から10月にかけておこなわれた予選(東京、福岡、沖縄)と11月のプレーオフを勝ち抜いた全8チームが出場し、1年間のクラブチーム活動を締めくくる総力戦を繰り広げる。
 試合は、4チームずつ2つのプールに分かれて総当たり戦を実施したのち、各プールの上位2チームが準決勝、下位2チームが5-8位決定トーナメントへと進む方式でおこなわれる。
 観戦の参考になればと、ここでは予選ラウンド・プールBの4チームについて紹介したい。

 予選ラウンド・プールBでは、Freedom(高知)、Okinawa Hurricanes(沖縄)、Fukuoka DANDELION(福岡)、SILVERBACKS(北海道)が、準決勝進出をかけしのぎを削る。

 プールBでまず注目されるのが、ディフェンディング・チャンピオンとして大会に臨むFreedomだ。
 前回大会では全員ラグビーを貫いて初優勝に輝き、ヘッドコーチを兼任する池透暢(日本代表キャプテン)が自身初の大会MVPを獲得した。
 数名のメンバーが欠場するなかで戦った9月の予選大会では、思わぬ苦戦を強いられる場面もあったが、スペースを広く使うラグビーは健在で、よりダイナミックさを増した。それを可能としているのが、司令塔を務める池と白川楓也、両ハイポインター(障がいが比較的軽い選手)のスピードとロングパスだ。加えて、チーム全員が「ポジショニング」の意識を高め、機能的かつ効率的な動きと位置取りを考えながら、しぶとく練習を重ねたことが、スムーズな連係と対応力の早さにつながっている。
 Freedomが昨シーズンからの公式戦連勝記録をどこまで伸ばすのか。連覇を目指す戦いに期待が高まる。

 予選(沖縄大会)2位で本大会出場を決めたのは、Okinawa Hurricanesだ。
 今シーズンは、ボールを大きく動かさず短いパスやランを選択する、「つなぐラグビー」が特徴的だ。
 強化指定選手の壁谷知茂と元日本代表の仲里進が軸となりゲームを組み立て、代表歴の長いローポインター(障がいの重い選手)若山英史が積極的に攻撃にも絡んで自らトライを奪う。
 そして、チーム唯一のハイポインターである奥原悠介(高校3年生)の活躍も期待される。初出場となった前回の日本選手権から1年間、スタミナをつけたいと走力を鍛えた。予選大会では島川慎一や池崎大輔といった日本代表のハイポインターとのマッチアップも経験した。「味方をリードできるようなハイポインターになりたい」。コロナ禍によりデビュー戦までの道のりは長かったが、車いすラグビーへの思いは消えなかった。高校生活最後となる公式戦で、奥原は成長した姿を見せる。
 日本選手権5回の優勝を誇るHurricanes、思いとボールをつなぐパスワークに注目だ。

 予選(福岡大会)2位で本大会の出場権を獲得したのは、Fukuoka DANDELIONだ。
 日本代表としての経験も豊富な乗松聖矢をはじめハードワーカーが揃い、ディフェンスを強みとする。今シーズンは、相手に走り負けないランでも魅せ、チーム全体の走力は国内トップクラスだ。
 安藤夏輝と草場龍治が今年10月の「国際車いすラグビーカップ」(フランス・パリ)でフル代表デビューを飾ったことに象徴されるように、成長著しい若手が多く所属し、大きな可能性を秘めている。
 さらに、日本では車いすラグビー、母国・韓国では陸上(車いす)と、二刀流で活躍する朴承撤(バク・スンチョル)、朴雨撤(パク・ウチョル)兄弟の存在も大きい。日本と韓国を行き来しながらチーム合宿に参加し、「家族」のようだと語るメンバーたちと友情を深めた。車いすラグビー韓国代表としてプレーした経験を活かし、パッションと聡明さを併せ持つパフォーマンスでチームに勢いをもたらす。
 キャプテンの安藤が「日本一元気なチーム」だと語るDANDELION。6位に終わった前回大会を上回る、ベスト4以上を狙う。

 プレーオフで本大会への最後の切符をつかんだのは、SILVERBACKSだ。
 初出場となった前回大会に続いて2年連続の日本選手権出場を果たし、全チーム最年長、平均年齢45.7歳のメンバーで今大会に挑む。
 その中で活躍が期待されるのが、チーム最年少・中学3年生のハイポインター、横内太陽だろう。この1年でスピードとパワーが飛躍的にアップし、「心」も強くなって、試合にフル出場できるまでに成長した。チームメートとの年齢差は気にならない、と笑顔で語る。
 「ラグビーを楽しむ気持ち」、それが世代を超えたチームワークを生み出している。
 前回大会では全敗に終わったSILVERBACKS。その悔しさを晴らし、日本選手権で悲願の「1勝」をあげることができるのか。勝利を目指し全力で戦う姿に注目だ。

 カラーの異なる4チームが対戦するプールBは、細部まで見逃せない試合の連続になりそうだ。
 3日間で5試合を戦う過密スケジュールの中、それぞれの強みを生かしつつ、予選ラウンド後のトーナメント戦を見据えてどう戦うのかもカギとなる。

 大会初日(1月12日)の「Freedom 対 Fukuoka DANDELION」では、日本代表のハイポインター対ローポインターの勝負が注目される。高さのある司令塔・池透暢(Freedom)を、乗松聖矢と草場龍治、あるいは安藤夏輝(DANDELION)が連係してどう止めるのか。見逃せないシーンになりそうだ。
 同じく大会初日の「Okinawa Hurricanes 対 SILVERBACKS」戦では、10代のハイポインター対決が楽しみだ。
 さらに、予選大会で14トライ(4試合)を挙げた、全チーム最年長の和田将英(Freedom)や日本の車いすラグビー界を支えてきた福井正浩(SILVERBACKS)といった、シニア選手たちの渾身のプレーにも注目したい。

 そして、惜しくも本大会出場を逃したWAVES(大阪)。
 チーム結成2年目の今年、目を見張る成長を遂げ、プレーオフ大会でついに公式戦初勝利を収めた。次こそ日本選手権への切符を勝ち取ることができるのか、来シーズンの活躍に期待だ。

 一年の集大成となる、クラブチーム日本一決定戦。
 Freedomが連覇を果たすのか、それとも、それを阻むチームが現れるのか。
 体の芯にまで響くタックル音、スコアには表れない「1点」をめぐる攻防…ぜひとも会場で体感してほしい。

デザイン(チーム情報) / mine.design
素材提供・取材協力 / JWRF
文・撮影 / 張 理恵

【チーム資料 補足(クラスについて)】
・選手は障がいの程度や体幹等の機能により7つのクラス(0.5~3.5の0.5刻み)に分けられる。
・数字が小さいほど障がいが重いことを意味し、class0.5~1.5の選手はローポインター、2.0と2.5はミッドポインター、3.0と3.5はハイポインターと呼ばれる。
・コート上4選手の持ち点(クラスの数字)の合計は8.0以内と定められている。(なお、この4選手の組み合わせを「ラインアップ」と呼ぶ)
・チーム資料内class欄:数字の後ろの「F」は女性選手、「+」は45歳以上のオーバーエイジ(※)選手、「R」は新人選手等でクラスが未確定、を意味する。※国内ルール
・オーバーエイジ選手(※※)、女性選手がラインアップに入る場合、各1名につき、持ち点の合計に0.5の加算が許される。※※日本代表候補選手を除く。

【試合日程】(予選ラウンド・プールB)
◎1月12日(金)
10:30  Okinawa Hurricanes – Fukuoka DANDELION
12:30  Freedom – SILVERBACKS
15:00  Okinawa Hurricanes – SILVERBACKS
17:00  Freedom – Fukuoka DANDELION

◎1月13日(土)
10:30  Fukuoka DANDELION – SILVERBACKS
12:30  Freedom – Okinawa Hurricanes

▼大会情報(JWRF Webサイト)
https://jwrf.jp/news/25thjnc/

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